【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。

まりぃべる

文字の大きさ
上 下
12 / 21

12. ゲオルク視点

しおりを挟む
 オレは、ゲオルク様だ。

 このサンダイス王国の、王太子だ!
ゆくゆくは、父上の跡を継いでこの国を治めるくらい偉いんだぞ!

 なのに、七歳の頃にもう婚約者を決めるなんて酷くないか!?
オレだって、多少は重役達の意見を聞く事は仕方ないとは思うがなんであの堅物が選ばれたんだ!?

 オレを冷めた目で見やがって!

 オレの美貌なんて、王太子だけあってなかなかに格好良いだろうに。
この光り輝く金髪!赤い瞳!
王族に相応しい、眩いほどの容姿なのになんだあの婚約者のオリーフィアは。
もっとこう、熱ーい視線でオレを見てくるんじゃないのか!!

 それに、一人で何でもできますって顔しやがって!
王妃教育もやってるらしいが、オレにまでもっとしっかり学べと言ってくる。

 あいつは阿呆だろ。

 オレは国王になるんだぞ!?
仕事なんて、下の者にやらせるだろうが。オレが勉強する必要なんてないのにあいつは…口うるさい!!


☆★

 オレが十三歳になって学院に通い出す事になり、オレの側近となるやつが決まった。

 あいつの兄のアーサーと、オレのじいさんの弟の孫のライナス。
三歳も年上だからってこいつらも口うるさい!だが、まぁ仕事をこなしてくれているからあまり文句も言えんが。


 だが、オレは学院に通い出して暫くするとジャネットに声を掛けられた。

 ジャネットは可愛い。
オレを頼ってくるのが、たまらないな。控えめな所がまた、そそられる。
さすがに手を出す事は躊躇われたが、あんなくりくりとした大きな目で強請ってくるからキスは何度もしてしまったな。そこまでで止めるのに苦労したが、さすがオレ。最後まではしなかったぜ。

 オリーフィアとは正反対だな。ジャネットは、オレが守ってやらないと壊れてしまうような奴だ。オリーフィアみたいに、一人で何でもこなしていけそうな奴とは大違いだ。

 そんなジャネットが、オリーフィアに虐められていると聞いた。
なんだ、オレに嫉妬か!?それにしては悪質だな。オレがオリーフィアを懲らしめてやらんと!




 勢い余って肩を押してしまった。
どうやら怪我をしたらしい。周りの奴らが騒いでいたが、感謝の会がすぐに始まったし、オリーフィアも出て行ったからその事は忘れていた。

 しかし、オリーフィアの両親が抗議してきてオレの父上達にもバレてしまった。悪いのはあいつなのに!

 それに、次の日学院へ行くとオリーフィアの友人達が、オレにわざわざ、オリーフィアがジャネットに対してなぜそうあたりが強いのかの理由を延々と話し出した。

△▲

『私も、初めはオリーフィア様が虐めているのだと思いましたけれど、お茶会の模擬体験の時間ではっきりと理由が分かりましたの。』

『本当ですわ。ジャネットさんはオリーフィア様のお屋敷で侍女見習いをされていると聞きましたから、さぞかしお上手なのかと思いましたら全くの…ねぇ。』

『えぇ、驚きました。入れて下さるお茶が薄かったり濃かったり。果ては注ぐ時に必ずこぼすのです。ジャネットさんの入れて下さるお茶、ゲオルク様はお飲みになりました?』

『それでオリーフィア様の言われている事は本当なのだと思いましたわ。言い方はきついかもしれませんが、全てジャネットさんの不出来さを嘆いての事で決して虐めているわけではないのです。』

『そうですわ。私も、刺繍の授業でジャネットさんとご一緒した時、名前を刺繍する事も最後まで出来なかったのですよ。それなのに、オリーフィア様は見本までわざわざお作りになってジャネットさんに教えようとされてましたわ。』

『なかなかに向上心が無いといいますか、成長しないといいますか…ねぇ。』

 だから、オリーフィアは悪くない、だと。

 そういえば、ジャネットに刺繍されたハンカチをもらったな。とても綺麗で丁寧な刺繍で惚れ惚れするようだった。それも実はオリーフィアが…?



☆★

「オリーフィアが変だ。お前のせいだぞ。なぜ、婚約破棄なんだ?手を出すなんて最低だぞ。頭を打ったんじゃないだろうか。」

 アーサーが、感謝の会があった次の日に言ってきた。
そ、そんな事はなかったはず。
なんだよ、責任を取れとか言うつもりか!?止めてくれ!

「…手を出したのは悪かった。」

「でも可愛いかったぞ?すっかりしおらしくなって。ゲオルクが破棄してくれたからな。オリーフィアは俺がもらうぜ。」

「はぁ!?ライナスまじかよ!?」

「アーサーだって、何か雰囲気が柔らかくなったと思っただろ?」

「どういう意味だ?」

 オレは、疑問に思って聞いた。

「んー、今までは王妃になるために性格だったんじゃないか?なんか、トゲトゲしさがなくなったというかさ。」

「まぁそれは僕も感じたが…。」

 何だと?ちょっと興味が湧いてしまったじゃないか!明日、じゃあ仕方ないからあいつに謝りに行くか。それでまぁ、あわよくば…!

 オリーフィアの顔は悪くないんだ。
オレが婚約破棄だと言ったショックで性格が改善されたのなら、やはりあいつを正妃に起用するか?正妃としての仕事は、オリーフィアにやらせればいいもんな。で、ジャネットは、側妃にすればいいよな。オレ、やっぱ頭良いな!!
しおりを挟む
感想 127

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

私と結婚したくないと言った貴方のために頑張りました! ~帝国一の頭脳を誇る姫君でも男心はわからない~

すだもみぢ
恋愛
リャルド王国の王女であるステラは、絶世の美女の姉妹に挟まれた中では残念な容姿の王女様と有名だった。 幼い頃に婚約した公爵家の息子であるスピネルにも「自分と婚約になったのは、その容姿だと貰い手がいないからだ」と初対面で言われてしまう。 「私なんかと結婚したくないのに、しなくちゃいけないなんて、この人は可哀想すぎる……!」 そう自分の婚約者を哀れんで、彼のためになんとかして婚約解消してあげようと決意をする。 苦労の末にその要件を整え、満を持して彼に婚約解消を申し込んだというのに、……なぜか婚約者は不満そうで……? 勘違いとすれ違いの恋模様のお話です。 ざまぁものではありません。 婚約破棄タグ入れてましたが、間違いです!! 申し訳ありません<(_ _)>

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです

珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。 令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。

父の大事な家族は、再婚相手と異母妹のみで、私は元より家族ではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
フィロマという国で、母の病を治そうとした1人の少女がいた。母のみならず、その病に苦しむ者は、年々増えていたが、治せる薬はなく、進行を遅らせる薬しかなかった。 その病を色んな本を読んで調べあげた彼女の名前は、ヴァリャ・チャンダ。だが、それで病に効く特効薬が出来上がることになったが、母を救うことは叶わなかった。 そんな彼女が、楽しみにしていたのは隣国のラジェスへの留学だったのだが、そのために必死に貯めていた資金も父に取り上げられ、義母と異母妹の散財のために金を稼げとまで言われてしまう。 そこにヴァリャにとって救世主のように現れた令嬢がいたことで、彼女の人生は一変していくのだが、彼女らしさが消えることはなかった。

代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです

天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。 その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。 元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。 代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

両親から謝ることもできない娘と思われ、妹の邪魔する存在と決めつけられて養子となりましたが、必要のないもの全てを捨てて幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたユルシュル・バシュラールは、妹の言うことばかりを信じる両親と妹のしていることで、最低最悪な婚約者と解消や破棄ができたと言われる日々を送っていた。 一見良いことのように思えることだが、実際は妹がしていることは褒められることではなかった。 更には自己中な幼なじみやその異母妹や王妃や側妃たちによって、ユルシュルは心労の尽きない日々を送っているというのにそれに気づいてくれる人は周りにいなかったことで、ユルシュルはいつ倒れてもおかしくない状態が続いていたのだが……。

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。 だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。 全2話。

処理中です...