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10. 訪問
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「オリーフィア様にお会いしたい方がお越しです。お通ししてよろしいですか?」
次の日。
朝食が終わって、自室で窓辺のソファに座って本を読んでいると、オルガが私に言ってきた。
「え?お見舞い?どちら様?」
私に、誰が見舞いに来るって言うのかしら。
学院のお友達はまだ授業のはずですし。
「ライナス=ティモシエンコ様です。」
「えっ?」
何故かしら…。
確か、今はお兄様と同じくゲオルク様の側近をされてらっしゃったわよね。
昔は、同じ公爵家の者同士、兄が同じ年齢でもあったからよく行き来していたわ。それで、私も後を付いてよく遊ばせてもらっていたわね。
でも、大きくなってからはほとんど会ってなかったわ。なのに…?
まぁ、ここで考えていてもわからないわ。
「分かりました。お通しして。」
「はい。」
「やぁ、オリーフィア。久しいな。体調はどうだ?怪我をしたとか。」
「ライナス様、お久しぶりでございます。お見苦しい姿ですみません。えぇ、まぁ…。兄から何か聞いたのですか?」
「詳しくは聞いてない。だが今朝会ったらアーサーは頭を抱えていたぞ。」
「え?」
「なぁ、オリーフィアは、ゲオルクから婚約破棄を言い渡されたのか?」
「えぇ、そうですね。」
「それで、修道院に行くのか?俺との約束を差し置いて。」
「えと…?」
「なんだ。覚えてないのかつまらん奴だ。昔は、アーサーと俺の後を付いて回ってあんなに可愛いかったのに、いつの間にか生意気になってよ。」
「生意気ですか?そうかしら。」
「違うのか?ゲオルクにも意見を言っているらしいじゃないか。」
「当たり前です!ゲオルク様は王太子ですよ?いずれは国を纏める立場の方。でもなかなかご自分からやろうとなさらないのですもの。婚約者である私が言う他ないでしょう?誰もゲオルク様を戒めないのですから。あ、それが生意気ですか?でもそれはライナス様がおっしゃったじゃないですか。」
「俺が!?何を言った?」
「私がゲオルク様の婚約者と決まった時です。私がゲオルク様をお支えするのは無理だと言ったら、ライナス様が『公爵令嬢が人前で泣くな。公爵令嬢とはいついかなる時も毅然としていなければ模範とならない。ゲオルクもお前が支えてやるんだ。』って。」
「よく覚えていたな…。」
「それが私の礎ですから。…でもそれももうしなくて良くなりましたわ。ライナス様も、これまでお世話になりました。修道院へ行ったら会わなくなりますものね。」
ゲオルク様の婚約者になるのだと決められたのは七歳位の幼い時。
まだあの頃は感情のコントロールもしっかり出来ずに、何故怠け癖のあるゲオルク様なのかと嘆いていたのです。
秘かにライナス様に憧れの念を抱いていたのもあって、ライナス様のお屋敷の庭園の陰で泣いていたら、ライナス様が探しに来てくれて言ったのですよね。
その言葉を胸に、今まで公爵令嬢として恥ずかしくないように振る舞ってきたのですけれど…。
それは他の人からみたら嫌味にも聞こえ生意気にも見えたのでしょうね。
分かっているわ。自分でもそう思いながらやっていたもの。
でも誰かがやらなければ、言わなければいけない事を公爵令嬢である私がかってでていたわけで。
でもそれをもうやらなくてよくなった今、私は公爵令嬢という仮面を早く取り去って修道院で一人の人としてやっていきたいと思っていた。…のよ?でもライナス様の次の言葉で私は、どうすればいいのか分からなくなったわ。
「俺の言葉が礎とは嬉しいな…だが修道院になんて行かせない。オリーフィア、ゲオルクとの結婚が止めになったのはラッキーだった。俺の嫁になれ。」
えと…どんな言い草?あなたの方がよっぽど生意気ですよ?
って、本気ですか!?
次の日。
朝食が終わって、自室で窓辺のソファに座って本を読んでいると、オルガが私に言ってきた。
「え?お見舞い?どちら様?」
私に、誰が見舞いに来るって言うのかしら。
学院のお友達はまだ授業のはずですし。
「ライナス=ティモシエンコ様です。」
「えっ?」
何故かしら…。
確か、今はお兄様と同じくゲオルク様の側近をされてらっしゃったわよね。
昔は、同じ公爵家の者同士、兄が同じ年齢でもあったからよく行き来していたわ。それで、私も後を付いてよく遊ばせてもらっていたわね。
でも、大きくなってからはほとんど会ってなかったわ。なのに…?
まぁ、ここで考えていてもわからないわ。
「分かりました。お通しして。」
「はい。」
「やぁ、オリーフィア。久しいな。体調はどうだ?怪我をしたとか。」
「ライナス様、お久しぶりでございます。お見苦しい姿ですみません。えぇ、まぁ…。兄から何か聞いたのですか?」
「詳しくは聞いてない。だが今朝会ったらアーサーは頭を抱えていたぞ。」
「え?」
「なぁ、オリーフィアは、ゲオルクから婚約破棄を言い渡されたのか?」
「えぇ、そうですね。」
「それで、修道院に行くのか?俺との約束を差し置いて。」
「えと…?」
「なんだ。覚えてないのかつまらん奴だ。昔は、アーサーと俺の後を付いて回ってあんなに可愛いかったのに、いつの間にか生意気になってよ。」
「生意気ですか?そうかしら。」
「違うのか?ゲオルクにも意見を言っているらしいじゃないか。」
「当たり前です!ゲオルク様は王太子ですよ?いずれは国を纏める立場の方。でもなかなかご自分からやろうとなさらないのですもの。婚約者である私が言う他ないでしょう?誰もゲオルク様を戒めないのですから。あ、それが生意気ですか?でもそれはライナス様がおっしゃったじゃないですか。」
「俺が!?何を言った?」
「私がゲオルク様の婚約者と決まった時です。私がゲオルク様をお支えするのは無理だと言ったら、ライナス様が『公爵令嬢が人前で泣くな。公爵令嬢とはいついかなる時も毅然としていなければ模範とならない。ゲオルクもお前が支えてやるんだ。』って。」
「よく覚えていたな…。」
「それが私の礎ですから。…でもそれももうしなくて良くなりましたわ。ライナス様も、これまでお世話になりました。修道院へ行ったら会わなくなりますものね。」
ゲオルク様の婚約者になるのだと決められたのは七歳位の幼い時。
まだあの頃は感情のコントロールもしっかり出来ずに、何故怠け癖のあるゲオルク様なのかと嘆いていたのです。
秘かにライナス様に憧れの念を抱いていたのもあって、ライナス様のお屋敷の庭園の陰で泣いていたら、ライナス様が探しに来てくれて言ったのですよね。
その言葉を胸に、今まで公爵令嬢として恥ずかしくないように振る舞ってきたのですけれど…。
それは他の人からみたら嫌味にも聞こえ生意気にも見えたのでしょうね。
分かっているわ。自分でもそう思いながらやっていたもの。
でも誰かがやらなければ、言わなければいけない事を公爵令嬢である私がかってでていたわけで。
でもそれをもうやらなくてよくなった今、私は公爵令嬢という仮面を早く取り去って修道院で一人の人としてやっていきたいと思っていた。…のよ?でもライナス様の次の言葉で私は、どうすればいいのか分からなくなったわ。
「俺の言葉が礎とは嬉しいな…だが修道院になんて行かせない。オリーフィア、ゲオルクとの結婚が止めになったのはラッキーだった。俺の嫁になれ。」
えと…どんな言い草?あなたの方がよっぽど生意気ですよ?
って、本気ですか!?
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