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エミリー
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そして前日のこと。その日は元々の仕事に加えて公開弁論対決の準備もあり、すっかり遅くなってから王宮を出て屋敷に帰るところだった。
遅くなってしまったが、明日に備えて早く寝なければ、などと思いながら王宮からの帰路を歩いていると。
不意に目の前に人影が現れた。
「誰?」
「私のことなどお忘れですか、レイラさん?」
「エミリー……」
確かにその声はエミリーのものだった。
よく見てみると、前より体が細くなり、瞳から生気が消えたエミリーの姿があった。以前の、オリバーにたかって人生を謳歌していた彼女とは別人のようだった。
それを見てお供の方々の表情にもさっと警戒が走る。
彼女は私の顔を見ると妖しく笑った。
「私のお兄様を酷い目に遭わせ、自分は殿下と仲良くなって人生ご満悦のようですわね」
「そんなこと……元はと言えばあなたがオリバーに何でもかんでもたかったのが原因じゃない!」
私はエミリーの勝手な言い分に怒りを覚えた。
確かに一番悪いのはオリバーではあるが、そのオリバーにあんなことをしろと言ったのはエミリーである。
彼女さえ無茶なことを言わなければオリバーがあんなことをしなくても済んだのだ。
だが、今の彼女にそんな理屈は届いていないようだった。
「ふん、他人を陥れておいて自分だけ王子と仲良くしようだなんて許せないわ。今回の件もあなたが裏で糸を引いていたそうじゃない」
「今回の件って……もしかしてあなたこそアンジェリカを焚きつけてこんなことをしたんじゃないの!?」
エミリーとアンジェリカが協力しているという話を聞いたことはなかったが、そうでなければエミリーがこのタイミングで私に因縁をつけてくるとは思えない。今回の対決も言い方は悪いが私が殿下の裏で糸を引いていたと知っているということはやはり関係者なのだろう。
「とにかく、これ以上邪魔をすると言うのであれば私が直々にどうなるかを教えてあげますわ」
「……一体何をすると言うの?」
エミリーはやたら強気だが、これ以上何をすると言うのだろうか。
今の彼女には打つ手が残ってないからアンジェリカを頼ってこんなことを仕組んだのかと思っていたけど。
が、エミリーは私の言葉に病的な笑みを浮かべた。
彼女はオリバーを財布のように扱っていたように見えたが、実のところエミリーはエミリーでオリバーに依存していたのかもしれない。
「今のあなたを捕えて人質にすればさすがの殿下も言うことを聞かざるを得ないですわね?」
「そんな無茶な!」
王都でそんなことをしてもすぐにばれて捕まってしまうだろう。
そうなればかろうじて存続しているローザン家も今度こそ終わってしまう。
「無茶でも何でも構いませんわ。あなたのせいでお兄様は一生消えない汚名を背負うことになりましたの! そして今はお父様もお兄様も皆廃人のよう。こんなことになった責任はとってもらいますわ!」
「そんな、元はと言えば全部あなたの我がままが原因のせいじゃない!」
「そんなこと、部外者のあなたに言われる筋合いはないわ! あんたなんかに私とお兄様の絆が分かる訳がない!」
エミリーが叫んだ時だった。
不意に私の周囲にたくさんの人の気配が出現する。
「しまった、囲まれました」
私のお供の表情が急に暗くなる。
確かに夜遅いが、まさかエミリーがこんな直接的な行動に出るとは思えなかった。確かに一時的に私を攫うことは出来るだろうが、そんなことをしてもオリバーの名誉が返ってくる訳でもない。
「やめて! こんなことをして何になると言うの!?」
「別に何にもならなくていいわ! ただ私はお前と殿下に復讐がしたい!」
エミリーが叫んだ瞬間包囲の輪がじりじりと縮まるのだった。
遅くなってしまったが、明日に備えて早く寝なければ、などと思いながら王宮からの帰路を歩いていると。
不意に目の前に人影が現れた。
「誰?」
「私のことなどお忘れですか、レイラさん?」
「エミリー……」
確かにその声はエミリーのものだった。
よく見てみると、前より体が細くなり、瞳から生気が消えたエミリーの姿があった。以前の、オリバーにたかって人生を謳歌していた彼女とは別人のようだった。
それを見てお供の方々の表情にもさっと警戒が走る。
彼女は私の顔を見ると妖しく笑った。
「私のお兄様を酷い目に遭わせ、自分は殿下と仲良くなって人生ご満悦のようですわね」
「そんなこと……元はと言えばあなたがオリバーに何でもかんでもたかったのが原因じゃない!」
私はエミリーの勝手な言い分に怒りを覚えた。
確かに一番悪いのはオリバーではあるが、そのオリバーにあんなことをしろと言ったのはエミリーである。
彼女さえ無茶なことを言わなければオリバーがあんなことをしなくても済んだのだ。
だが、今の彼女にそんな理屈は届いていないようだった。
「ふん、他人を陥れておいて自分だけ王子と仲良くしようだなんて許せないわ。今回の件もあなたが裏で糸を引いていたそうじゃない」
「今回の件って……もしかしてあなたこそアンジェリカを焚きつけてこんなことをしたんじゃないの!?」
エミリーとアンジェリカが協力しているという話を聞いたことはなかったが、そうでなければエミリーがこのタイミングで私に因縁をつけてくるとは思えない。今回の対決も言い方は悪いが私が殿下の裏で糸を引いていたと知っているということはやはり関係者なのだろう。
「とにかく、これ以上邪魔をすると言うのであれば私が直々にどうなるかを教えてあげますわ」
「……一体何をすると言うの?」
エミリーはやたら強気だが、これ以上何をすると言うのだろうか。
今の彼女には打つ手が残ってないからアンジェリカを頼ってこんなことを仕組んだのかと思っていたけど。
が、エミリーは私の言葉に病的な笑みを浮かべた。
彼女はオリバーを財布のように扱っていたように見えたが、実のところエミリーはエミリーでオリバーに依存していたのかもしれない。
「今のあなたを捕えて人質にすればさすがの殿下も言うことを聞かざるを得ないですわね?」
「そんな無茶な!」
王都でそんなことをしてもすぐにばれて捕まってしまうだろう。
そうなればかろうじて存続しているローザン家も今度こそ終わってしまう。
「無茶でも何でも構いませんわ。あなたのせいでお兄様は一生消えない汚名を背負うことになりましたの! そして今はお父様もお兄様も皆廃人のよう。こんなことになった責任はとってもらいますわ!」
「そんな、元はと言えば全部あなたの我がままが原因のせいじゃない!」
「そんなこと、部外者のあなたに言われる筋合いはないわ! あんたなんかに私とお兄様の絆が分かる訳がない!」
エミリーが叫んだ時だった。
不意に私の周囲にたくさんの人の気配が出現する。
「しまった、囲まれました」
私のお供の表情が急に暗くなる。
確かに夜遅いが、まさかエミリーがこんな直接的な行動に出るとは思えなかった。確かに一時的に私を攫うことは出来るだろうが、そんなことをしてもオリバーの名誉が返ってくる訳でもない。
「やめて! こんなことをして何になると言うの!?」
「別に何にもならなくていいわ! ただ私はお前と殿下に復讐がしたい!」
エミリーが叫んだ瞬間包囲の輪がじりじりと縮まるのだった。
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