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エミリー視点 対決
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それから私は精力的に活動した。
兄上の事件以来ローザン家一族の信用は失墜していたため、表で動くのはアンジェリカに任せていた。アンジェリカの事件はほとぼりが冷めていたのと、あまり認めたくないことではあるが兄上が起こしたことは世間でも非難を受けていたが、アンジェリカの実家であるレイランド家が殿下に陥れられたことは世間からもまあまあ同情されていた。
どちらも同じような被害者だというのにこんなに違いがあるのは少し納得がいかないが。
流れとしてはアンジェリカが殿下に恨みがある人を誰彼構わず連れてきて、私は彼ら彼女らの話を聞いた。そしてアンジェリカが噂を流し、私はエミリーとしてではなく王宮の使用人の振りをして噂を積極的に拡散した。
その結果、元からクルス殿下は嫌われていたこともあり、王宮は瞬く間に殿下を非難するような空気に包まれた。
もちろん中には突然広まった噂に眉をひそめたり、裏をかんぐるような者もいたが、噂を言い立てる者に比べて疑念を覚える者の声はいつだって小さい。
そんなある日のことである。
私がいつも通りアンジェリカの屋敷に向かうと、彼女は一通の封筒を開いて首をかしげている。
「どうしたのですか?」
「こんなものが来ていたの。向こうも相当焦っているようね」
そう言って彼女が封筒を投げてくる。送り主はクルス殿下になっていた。
中に入っていた手紙の宛名は実際にはメリアになっていたが、続く文章には「一方的な噂を流されるのは困る。白黒はっきりつけるために公開で討論対決を行いたい」と書かれていたので、アンジェリカを意識しているのだろう。
「どうされるのですか?」
「こんなの受ける訳ないわ。向こうはそういう屁理屈みたいなことは得意だもの。でも、人々の心を掴むような噂を流すことでなら私は勝てる。だからわざわざ相手の土俵に上がることはないわ」
「確かにそれはそうですね」
「それよりこんなことを言ってくるなんて向こうは焦っているに違いないわ」
そう言ってアンジェリカは手紙をびりびりと破り捨てる。彼女には動じる様子は全くなかった。
それを見て私は一安心するのだった。
が、その翌日のことである。
いつものように噂を流すため王宮を歩いていた私は絶句した。
王宮の廊下の至るところには「クルスVSメリア、討論対決!? 正しいのはどっちだ!?」などと二人の対決を煽るようなビラが盛んに撒かれていた。
それを見た王宮の人々は「へー、そんなことがあるのか」「週末だし暇だし見に行くか」などと興味津々である。本来であれば王子と一介の使用人の対決など人々にとってどうでもいいことであったが、こちらが盛んに噂を煽ったせいでこの件の注目度は爆上がりだった。
これではこちらから断ることなど出来ない。
いや、出来ると言えば出来るが「逃げた」と思われるだろう。そうなれば向こうは「アンジェリカは適当な噂を広めるだけ広めて逃げた」と喧伝するに違いない。
仮に出席しない理由をどれだけ真面目に考えて主張したとしても、そういう正論よりも「逃げた」という分かりやすい噂の方が人々には広まっていくというのは私にはよく分かっている。
こうなった以上は対決に出て、勝つか最低限引き分けぐらいに持ち込むしかない。しかしこのようなことをする以上に向こうには勝算があるのだろう。
「とりあえずアンジェリカさんにこのことを伝えないと」
私は動揺しながらアンジェリカの元に向かうのだった。
兄上の事件以来ローザン家一族の信用は失墜していたため、表で動くのはアンジェリカに任せていた。アンジェリカの事件はほとぼりが冷めていたのと、あまり認めたくないことではあるが兄上が起こしたことは世間でも非難を受けていたが、アンジェリカの実家であるレイランド家が殿下に陥れられたことは世間からもまあまあ同情されていた。
どちらも同じような被害者だというのにこんなに違いがあるのは少し納得がいかないが。
流れとしてはアンジェリカが殿下に恨みがある人を誰彼構わず連れてきて、私は彼ら彼女らの話を聞いた。そしてアンジェリカが噂を流し、私はエミリーとしてではなく王宮の使用人の振りをして噂を積極的に拡散した。
その結果、元からクルス殿下は嫌われていたこともあり、王宮は瞬く間に殿下を非難するような空気に包まれた。
もちろん中には突然広まった噂に眉をひそめたり、裏をかんぐるような者もいたが、噂を言い立てる者に比べて疑念を覚える者の声はいつだって小さい。
そんなある日のことである。
私がいつも通りアンジェリカの屋敷に向かうと、彼女は一通の封筒を開いて首をかしげている。
「どうしたのですか?」
「こんなものが来ていたの。向こうも相当焦っているようね」
そう言って彼女が封筒を投げてくる。送り主はクルス殿下になっていた。
中に入っていた手紙の宛名は実際にはメリアになっていたが、続く文章には「一方的な噂を流されるのは困る。白黒はっきりつけるために公開で討論対決を行いたい」と書かれていたので、アンジェリカを意識しているのだろう。
「どうされるのですか?」
「こんなの受ける訳ないわ。向こうはそういう屁理屈みたいなことは得意だもの。でも、人々の心を掴むような噂を流すことでなら私は勝てる。だからわざわざ相手の土俵に上がることはないわ」
「確かにそれはそうですね」
「それよりこんなことを言ってくるなんて向こうは焦っているに違いないわ」
そう言ってアンジェリカは手紙をびりびりと破り捨てる。彼女には動じる様子は全くなかった。
それを見て私は一安心するのだった。
が、その翌日のことである。
いつものように噂を流すため王宮を歩いていた私は絶句した。
王宮の廊下の至るところには「クルスVSメリア、討論対決!? 正しいのはどっちだ!?」などと二人の対決を煽るようなビラが盛んに撒かれていた。
それを見た王宮の人々は「へー、そんなことがあるのか」「週末だし暇だし見に行くか」などと興味津々である。本来であれば王子と一介の使用人の対決など人々にとってどうでもいいことであったが、こちらが盛んに噂を煽ったせいでこの件の注目度は爆上がりだった。
これではこちらから断ることなど出来ない。
いや、出来ると言えば出来るが「逃げた」と思われるだろう。そうなれば向こうは「アンジェリカは適当な噂を広めるだけ広めて逃げた」と喧伝するに違いない。
仮に出席しない理由をどれだけ真面目に考えて主張したとしても、そういう正論よりも「逃げた」という分かりやすい噂の方が人々には広まっていくというのは私にはよく分かっている。
こうなった以上は対決に出て、勝つか最低限引き分けぐらいに持ち込むしかない。しかしこのようなことをする以上に向こうには勝算があるのだろう。
「とりあえずアンジェリカさんにこのことを伝えないと」
私は動揺しながらアンジェリカの元に向かうのだった。
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