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エミリー視点 復讐
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少し前のこと。
「もううちは終わりだ……」
リビングに入ると今まで公爵として精力的に活動してきた父上は呆けたようにソファに腰かけている。
あれから屋敷にいる使用人はめっきり少なくなり、気のせいか部屋にあった高そうな調度品や絵画などがいくつかなくなっている。
聞いた話によると、我が家は複数の商人からツケで多額の買い物をしており、今までは支払いには融通を利かせてもらっていたが、今回の件で信用を失ったため「即座に支払わなければ今後はもう取引出来ない」と一斉に脅されたらしい。
そのためいずれ税収が入ったら支払う予定だったお金をすぐに払わなければならなくなり、生活は一気にわびしくなった。
少し前までは公爵家にふさわしい優雅な暮らしを送り、頼めば兄上が何でも買ってくれたというのに。一体何でこんなことになってしまったのだろう。
第一に思いつくのは兄上の妻、レイラだ。あの女は夫である兄上を貶めるために、こっそり自分の領地を関係ない他人に寄贈した。
確かに彼女の物を勝手に売り払ったのは悪いことだけど、あくまで顔なじみの商人だからそのうちお金を払えばまた返ってくるだろうし、そんなに怒ることだろうか。
もしかして兄上が自分にばかり優しいのに嫉妬したのだろうか。
とはいえさらに許せないのはクルス殿下だった。
王子というのはこういうことが起こった時、レイラを「そんなことを荒立てるようなことをせずに、穏やかに解決すべきだ」と諭すべきではないか。その役割を放棄して寄付された領地を自分の物にするために兄上を罠に嵌めるなんてどう考えても異常だ。
「父上、大丈夫でしょうか?」
「ああ、エミリーか」
私が声をかけても父上はそう言ってこちらをちらりと見るだけだ。
すっかり廃人になってしまったようで、ここ数日まともな会話もしていない。その間も、屋敷は使用人が減ったせいで汚れが目立つようになり、日々の食事も貧しくなっていく。庭師がいなくなっていった庭は荒れていくままだった。
それなら私が父上の分まで復讐もしなければ。
私はそう決意した。
幸いクルス殿下には多数の敵がいる。彼のせいで辛い思いをした者は数多くいるはずだ。
その中でも一番の大物はレイランド家だろう。
この家はそれまでの貴族が当然のようにやっていたことをそのまま踏襲したら不正だと言われて没落したらしい。
そんな訳で私は早速レイランド家を訪問した。
そこに現れたのは私と同じように、質素な服装に身を包んだご令嬢だった。家の中も今の我が家と同じようにどこかくすんで見える。年は私より上に見え、元々はきれいな方だったはずなのに、服装の質がそれについていけておらず、もったいなく思えた。
「初めまして。私はアンジェリカ。何の用でしょうか?」
「私はこの前クルス殿下によって没落させられたエミリー・ローザンです。この家も殿下のせいで酷い目に遭ったと聞いてやってきました」
「まあ、噂には聞いていたけど、あなたも私と同じということね!」
私の言葉を聞いてアンジェリカは嬉しそうな笑みを浮かべる。
「そうなんです! 実は……」
そう言って私はクルス殿下がいかに非道な人物であるかを並べ立てた。
同じことを思っていたのだろう、すぐにアンジェリカも意気投合し、レイランド家が没落した時のことを語り始める。
その時もクルス殿下の手法も今回に負けず劣らず汚くて執拗なものだった。
話が盛り上がってきたところで、私は満を持して提案する。
「でしたら手を組んで復讐しませんか?」
「もううちは終わりだ……」
リビングに入ると今まで公爵として精力的に活動してきた父上は呆けたようにソファに腰かけている。
あれから屋敷にいる使用人はめっきり少なくなり、気のせいか部屋にあった高そうな調度品や絵画などがいくつかなくなっている。
聞いた話によると、我が家は複数の商人からツケで多額の買い物をしており、今までは支払いには融通を利かせてもらっていたが、今回の件で信用を失ったため「即座に支払わなければ今後はもう取引出来ない」と一斉に脅されたらしい。
そのためいずれ税収が入ったら支払う予定だったお金をすぐに払わなければならなくなり、生活は一気にわびしくなった。
少し前までは公爵家にふさわしい優雅な暮らしを送り、頼めば兄上が何でも買ってくれたというのに。一体何でこんなことになってしまったのだろう。
第一に思いつくのは兄上の妻、レイラだ。あの女は夫である兄上を貶めるために、こっそり自分の領地を関係ない他人に寄贈した。
確かに彼女の物を勝手に売り払ったのは悪いことだけど、あくまで顔なじみの商人だからそのうちお金を払えばまた返ってくるだろうし、そんなに怒ることだろうか。
もしかして兄上が自分にばかり優しいのに嫉妬したのだろうか。
とはいえさらに許せないのはクルス殿下だった。
王子というのはこういうことが起こった時、レイラを「そんなことを荒立てるようなことをせずに、穏やかに解決すべきだ」と諭すべきではないか。その役割を放棄して寄付された領地を自分の物にするために兄上を罠に嵌めるなんてどう考えても異常だ。
「父上、大丈夫でしょうか?」
「ああ、エミリーか」
私が声をかけても父上はそう言ってこちらをちらりと見るだけだ。
すっかり廃人になってしまったようで、ここ数日まともな会話もしていない。その間も、屋敷は使用人が減ったせいで汚れが目立つようになり、日々の食事も貧しくなっていく。庭師がいなくなっていった庭は荒れていくままだった。
それなら私が父上の分まで復讐もしなければ。
私はそう決意した。
幸いクルス殿下には多数の敵がいる。彼のせいで辛い思いをした者は数多くいるはずだ。
その中でも一番の大物はレイランド家だろう。
この家はそれまでの貴族が当然のようにやっていたことをそのまま踏襲したら不正だと言われて没落したらしい。
そんな訳で私は早速レイランド家を訪問した。
そこに現れたのは私と同じように、質素な服装に身を包んだご令嬢だった。家の中も今の我が家と同じようにどこかくすんで見える。年は私より上に見え、元々はきれいな方だったはずなのに、服装の質がそれについていけておらず、もったいなく思えた。
「初めまして。私はアンジェリカ。何の用でしょうか?」
「私はこの前クルス殿下によって没落させられたエミリー・ローザンです。この家も殿下のせいで酷い目に遭ったと聞いてやってきました」
「まあ、噂には聞いていたけど、あなたも私と同じということね!」
私の言葉を聞いてアンジェリカは嬉しそうな笑みを浮かべる。
「そうなんです! 実は……」
そう言って私はクルス殿下がいかに非道な人物であるかを並べ立てた。
同じことを思っていたのだろう、すぐにアンジェリカも意気投合し、レイランド家が没落した時のことを語り始める。
その時もクルス殿下の手法も今回に負けず劣らず汚くて執拗なものだった。
話が盛り上がってきたところで、私は満を持して提案する。
「でしたら手を組んで復讐しませんか?」
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