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ローザン公爵の後悔
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「何だと? オリバーがクルス殿下に捕まった!?」
その知らせを聞いたローザン公爵は愕然とした。
捕まったということ自体も衝撃だったが、今朝方オリバーはレイラから「勝手に財産を売り払ったのではないか」と疑いをかけられ、違うと言い切った。
さすがに公爵は自分の子供がそんな恐ろしいことをした訳がないと思い、行き違いがあったというオリバーの言葉をそのまま信じてしまった。
だが、その判断は完全に裏目に出たようである。
「一体何があったんだ!?」
一応公爵は知らせに来た家臣に尋ねる。
「実は、オリバー様は本当はレイラ様の財産を勝手に売り払っていたらしく、懇意にしている商人の元に走ったようでございます。しかしすでにそこにはクルス殿下の手が伸びており、彼は証拠隠滅しようとしたところを逆に押さえられたようです」
「何と言うことだ……」
それを聞いて公爵は天を仰ぐ。
家庭内のことであるためオリバーに刑が下されることはないだろうが、こんなことが広まればオリバー、そしてローザン家の評判は失墜するだろう。オリバーの評判が下がるだけならまだいいが、他人の財産を売り払うようないい加減な教育を行ったローザン公爵自身の評判も下がるし、さらには家全体がそのようなものだと思われてしまう。そうなればもうローザン家を信用する者はいなくなってしまうに違いない。
評判が貴族というのは人付き合いでなりたっているところがあるので、評判が下がるのは実はお金や土地を失うことよりも致命的になることがある。
レイラとクルスの手回しの良さにも驚いたが、オリバーがしていたことが本当だったと分かると、恨む気にもなれない。
公爵とて、例えば妻に自分の土地を勝手に売り払われるようなことがあれば死ぬ気で追及するだろう。
「せめて事前に正直に打ち明けてくれれば手を打つことも出来たものを」
レイラがこんなことをする前に大金を払って謝罪すればもみ消すことが出来たかもしれないし、クルスに寄付がいった後でも、先手を打って謝罪すれば事態が公になることぐらいは避けられたかもしれない。
「いや、そんなことはどうでもいい! オリバーのやつめ、よくもこんなことを! 大体奴はなぜそんなことをしたんだ!?」
「それが、どうもエミリー様にプレゼントを買うのにお金が入用になったらしく」
「そんなことのために!?」
再び公爵は天を仰ぐ。
言われてみればオリバーは何度かエミリーに買ってあげたいものがあるから金が欲しいと言ってきたが、当然全て断った。
しかしだからといってそんなことをしたとは。
とはいえ言われてみればオリバーには金を与えていなかったのに、最近のオリバーは妙に羽振りが良かった。てっきり、父に頼んで断られたから自分でお金を工夫して調達したのかと思ったが、残念ながらそういう訳ではなかったらしい。
「せめてわしがもう少しきちんと追及していれば」
本来オリバーの羽振りが急によくなった時点で何か良くないことをしていると考えるべきだったのだが、息子だからいい方に考えてしまった。
その結果がこれだ。
「そもそもオリバーがそんなことをするような歪んだ人物に育ってしまったことが原因だ。もう少しきちんと育てていれば……」
公爵は後悔のあまりその場に崩れ落ちるのだった。
その知らせを聞いたローザン公爵は愕然とした。
捕まったということ自体も衝撃だったが、今朝方オリバーはレイラから「勝手に財産を売り払ったのではないか」と疑いをかけられ、違うと言い切った。
さすがに公爵は自分の子供がそんな恐ろしいことをした訳がないと思い、行き違いがあったというオリバーの言葉をそのまま信じてしまった。
だが、その判断は完全に裏目に出たようである。
「一体何があったんだ!?」
一応公爵は知らせに来た家臣に尋ねる。
「実は、オリバー様は本当はレイラ様の財産を勝手に売り払っていたらしく、懇意にしている商人の元に走ったようでございます。しかしすでにそこにはクルス殿下の手が伸びており、彼は証拠隠滅しようとしたところを逆に押さえられたようです」
「何と言うことだ……」
それを聞いて公爵は天を仰ぐ。
家庭内のことであるためオリバーに刑が下されることはないだろうが、こんなことが広まればオリバー、そしてローザン家の評判は失墜するだろう。オリバーの評判が下がるだけならまだいいが、他人の財産を売り払うようないい加減な教育を行ったローザン公爵自身の評判も下がるし、さらには家全体がそのようなものだと思われてしまう。そうなればもうローザン家を信用する者はいなくなってしまうに違いない。
評判が貴族というのは人付き合いでなりたっているところがあるので、評判が下がるのは実はお金や土地を失うことよりも致命的になることがある。
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公爵とて、例えば妻に自分の土地を勝手に売り払われるようなことがあれば死ぬ気で追及するだろう。
「せめて事前に正直に打ち明けてくれれば手を打つことも出来たものを」
レイラがこんなことをする前に大金を払って謝罪すればもみ消すことが出来たかもしれないし、クルスに寄付がいった後でも、先手を打って謝罪すれば事態が公になることぐらいは避けられたかもしれない。
「いや、そんなことはどうでもいい! オリバーのやつめ、よくもこんなことを! 大体奴はなぜそんなことをしたんだ!?」
「それが、どうもエミリー様にプレゼントを買うのにお金が入用になったらしく」
「そんなことのために!?」
再び公爵は天を仰ぐ。
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しかしだからといってそんなことをしたとは。
とはいえ言われてみればオリバーには金を与えていなかったのに、最近のオリバーは妙に羽振りが良かった。てっきり、父に頼んで断られたから自分でお金を工夫して調達したのかと思ったが、残念ながらそういう訳ではなかったらしい。
「せめてわしがもう少しきちんと追及していれば」
本来オリバーの羽振りが急によくなった時点で何か良くないことをしていると考えるべきだったのだが、息子だからいい方に考えてしまった。
その結果がこれだ。
「そもそもオリバーがそんなことをするような歪んだ人物に育ってしまったことが原因だ。もう少しきちんと育てていれば……」
公爵は後悔のあまりその場に崩れ落ちるのだった。
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