16 / 41
クルスからの報告
しおりを挟む
殿下との会談を終えた私は屋敷に戻った。
殿下から寄付をしたという手紙は殿下側の用意が整うまで出すのは待って欲しいと言われたため、屋敷に戻った私はしばらくの間何もできずにじっと待っていた。
そして一夜明け、殿下の用意が整ってから私はオリバーに財産を殿下に寄付したという報告の手紙を書いた。
この手紙を出してしまえばもう後戻りすることは出来ないだろう。勝手に売り払われた証拠が出なければ絶縁ものだし、証拠が出れば大騒動になる。そしてどの道、寄付した財産はクルス殿下のものとなる。
そう思うと、もう何度も悩んで決めたことのはずなのにまた少し緊張した。
私が屋敷で緊張していると、心配そうなフィリップが声をかけてくれる。
「大丈夫か?」
「はい、私のせいで大変なことになるんじゃないかと心配になってしまって」
「大丈夫だ、これは僕も一緒に決めたことだ。もしも何かの見込み違いがあってうまくいかなかったら、その時は僕も矢面に立つよ」
「ありがとうございます」
父上が早くになくなってしまったこともあり、私たちはおそらく普通の兄妹以上に連帯を感じているのかもしれない。
だからフィリップの言葉はとても嬉しかった。
「王宮からの使者が来ました!」
しばらくして、慌てた様子で家の者が部屋に駆けこんでくる。
それを聞いて私とフィリップは顔を見合わせた。
そんな私たちに向かって彼は告げる。
「レイラ様、クルス殿下から例の件について結論が出たので王宮に来るように、と」
「ええ、もうですか?」
今朝手紙を出してその日のうちに決着がつくなどということがあるのだろうか。
私は事態の速さに半信半疑であった。
とはいえ、アルバートが何もしていなければこんな短期間で結論が出る訳もないから、決着がついたということはアルバートの不正が明らかになったということだろう。
それは嬉しかったが、本当にされていたのか、と思うと暗い気持ちにもなる。
確信があったこととはいえ、結婚相手に自分の財産を勝手に売られていたということが確定するということはいい気持ちは竹刀。
「良かったな、レイラ」
そんな私にフィリップが言葉をかけてくれる。
「ありがとうございます」
もしもフィリップが後押ししてくれなければ、私一人ではこの結論は出せなかっただろう。
そもそもこの案を提案してくれたのもフィリップだ。
もっとも、ここまで早急に決着がつくとは思わなかったが。
「では急いで王宮に行ってきます」
そう言って私は屋敷を出るのだった。
殿下から寄付をしたという手紙は殿下側の用意が整うまで出すのは待って欲しいと言われたため、屋敷に戻った私はしばらくの間何もできずにじっと待っていた。
そして一夜明け、殿下の用意が整ってから私はオリバーに財産を殿下に寄付したという報告の手紙を書いた。
この手紙を出してしまえばもう後戻りすることは出来ないだろう。勝手に売り払われた証拠が出なければ絶縁ものだし、証拠が出れば大騒動になる。そしてどの道、寄付した財産はクルス殿下のものとなる。
そう思うと、もう何度も悩んで決めたことのはずなのにまた少し緊張した。
私が屋敷で緊張していると、心配そうなフィリップが声をかけてくれる。
「大丈夫か?」
「はい、私のせいで大変なことになるんじゃないかと心配になってしまって」
「大丈夫だ、これは僕も一緒に決めたことだ。もしも何かの見込み違いがあってうまくいかなかったら、その時は僕も矢面に立つよ」
「ありがとうございます」
父上が早くになくなってしまったこともあり、私たちはおそらく普通の兄妹以上に連帯を感じているのかもしれない。
だからフィリップの言葉はとても嬉しかった。
「王宮からの使者が来ました!」
しばらくして、慌てた様子で家の者が部屋に駆けこんでくる。
それを聞いて私とフィリップは顔を見合わせた。
そんな私たちに向かって彼は告げる。
「レイラ様、クルス殿下から例の件について結論が出たので王宮に来るように、と」
「ええ、もうですか?」
今朝手紙を出してその日のうちに決着がつくなどということがあるのだろうか。
私は事態の速さに半信半疑であった。
とはいえ、アルバートが何もしていなければこんな短期間で結論が出る訳もないから、決着がついたということはアルバートの不正が明らかになったということだろう。
それは嬉しかったが、本当にされていたのか、と思うと暗い気持ちにもなる。
確信があったこととはいえ、結婚相手に自分の財産を勝手に売られていたということが確定するということはいい気持ちは竹刀。
「良かったな、レイラ」
そんな私にフィリップが言葉をかけてくれる。
「ありがとうございます」
もしもフィリップが後押ししてくれなければ、私一人ではこの結論は出せなかっただろう。
そもそもこの案を提案してくれたのもフィリップだ。
もっとも、ここまで早急に決着がつくとは思わなかったが。
「では急いで王宮に行ってきます」
そう言って私は屋敷を出るのだった。
37
お気に入りに追加
3,550
あなたにおすすめの小説
皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。
和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。
「次期当主はエリザベスにしようと思う」
父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。
リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。
「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」
破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?
婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。
平民の娘だから婚約者を譲れって? 別にいいですけど本当によろしいのですか?
和泉 凪紗
恋愛
「お父様。私、アルフレッド様と結婚したいです。お姉様より私の方がお似合いだと思いませんか?」
腹違いの妹のマリアは私の婚約者と結婚したいそうだ。私は平民の娘だから譲るのが当然らしい。
マリアと義母は私のことを『平民の娘』だといつも見下し、嫌がらせばかり。
婚約者には何の思い入れもないので別にいいですけど、本当によろしいのですか?
妹しか興味がない両親と欲しがりな妹は、我が家が没落することを知らないようです
香木あかり
恋愛
伯爵令嬢のサラは、妹ティナにしか興味がない両親と欲しがりな妹に嫌気がさしていた。
ある日、ティナがサラの婚約者を奪おうとしていることを知り、我慢の限界に達する。
ようやくこの家を出られると思っていましたのに……。またティナに奪われるのかしら?
……なんてね、奪われるのも計画通りなんですけれど。
財産も婚約者も全てティナに差し上げます。
もうすぐこの家は没落するのだから。
※複数サイトで掲載中です
虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~
***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」
妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。
「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」
元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。
両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません!
あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。
他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては!
「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか?
あなたにはもう関係のない話ですが?
妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!!
ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね?
私、いろいろ調べさせていただいたんですよ?
あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか?
・・・××しますよ?
婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。
そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。
シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。
ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。
それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。
それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。
なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた――
☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆
☆全文字はだいたい14万文字になっています☆
☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆
そう言うと思ってた
mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。
※いつものように視点がバラバラします。
天才手芸家としての功績を嘘吐きな公爵令嬢に奪われました
サイコちゃん
恋愛
ビルンナ小国には、幸運を運ぶ手芸品を作る<謎の天才手芸家>が存在する。公爵令嬢モニカは自分が天才手芸家だと嘘の申し出をして、ビルンナ国王に認められた。しかし天才手芸家の正体は伯爵ヴィオラだったのだ。
「嘘吐きモニカ様も、それを認める国王陛下も、大嫌いです。私は隣国へ渡り、今度は素性を隠さずに手芸家として活動します。さようなら」
やがてヴィオラは仕事で大成功する。美貌の王子エヴァンから愛され、自作の手芸品には小国が買えるほどの値段が付いた。それを知ったビルンナ国王とモニカは隣国を訪れ、ヴィオラに雑な謝罪と最低最悪なプレゼントをする。その行為が破滅を呼ぶとも知らずに――
幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。
ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる