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真相
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その日から私は屋敷内でオリバーとエミリーが話しているタイミングを狙ってさりげなく部屋の前を通ったり、紅茶を持っていったりすることにした。
嫁いだ当初はオリバーとエミリーの関係は多少仲がいい兄妹程度だったのに、こうして様子を伺ってみると二人が話す頻度も長さもいつの間に随分増えていたと思う。
大部分はとるに足らない会話なのだが、会話の端々からもエミリーが何かを買ったり遊びに行ったりと贅沢をしている様子が窺える。
とはいえ、二人が話しているところを壁にべったり耳をつけて立ち聞きするということもなかなか出来ないので、なかなか核心的な情報を手に入れることは出来なかった。
そもそもオリバーが自分の領地から不正にお金を手に入れているのであれば、それをエミリーに話すかも分からない。
となるとこの盗み聞きでは情報が得られないのではないか、と思い始めたころ。
そしてそんな調査を始めてから数日後だろうか。
私がいつものように聞き耳を立てていたときだった。
いつものようにエミリーが新しく買ったものを自慢してオリバーがそれを褒めるという会話に辟易していると、ふとオリバーが少し真面目なテンションになって言う。
「なあエミリー、最近ちょっと金遣いが荒くなってないか?」
さすがのシスコンのオリバーでも最近のエミリーは目に余るのか、と私は少し感心する。
「そうかもしれません。でもどれもエミリーにとって必要なものなのです。……だめでしょうか?」
おそらく今頃かわい子ぶってオリバーに懇願しているのだろう。その情景が目に浮かぶ。
私はこの機にオリバーにはエミリーをきちんと教育して欲しい、と思いながら立ち聞きを続ける。
「いや、だめということはないが……あまりお金を使い過ぎてはさすがに怪しまれるだろ。最近は父上やレイラも少し不審に思い始めている節がある」
そういう方向か、と思ったがそれで贅沢を止めてくれるならそれでも構わない。
「そんな……そこは兄上からうまく言っておいてください」
「まあある程度は誤魔化せるが、さすがに別荘とか土地レベルはまずい。それにレイラだってあんなに使えばいつか気づくだろう」
え?
急に私の名前が出てきて私は困惑する。気づくとは一体何にだろうか。エミリーが贅沢していることにはすでに気づいているから、贅沢の原資となっているお金に何か後ろ暗いことがあるということだろう。
しかしオリバーの領地のことであれば気づくのは私ではなく公爵ではないか。
オリバーにとって後ろめたいことで私が気づくこととは何だろうか。
「でも、あれは全部嫁入りの際に兄上がもらったものですよね? だとしたら気づかれても構わないと思いますが」
「違う、確かに管理は任せてもらったが、別にもらった訳ではない」
「似たようなものですわ」
私はその会話を聞いて反射的にその場を離れた。
そして少し離れた部屋で呆然とする。
さすがに明言はされてないが、「レイラだっていつか気づく」「管理は任せてもらった」などの言葉が、エミリーが贅沢しているという事実に次々に繋がっていく。
「さすがに嘘……ですよね?」
確かに私はこの家に嫁いできたとき、私が相続していた家の財産の管理をオリバーに任せた。私が相続した財産は一部の金品を除けば土地や建物が多く管理が必要になるが、遠地のものもあり、それを全部自分でやると膨大な手間がかかる。
しかしすでに自分の家臣と領地を持っているオリバーであれば家臣に命令するだけで管理することが出来る。そのため私は嫁いだときに話しあってオリバーに財産の管理を任せていた。オリバーも言っていた通り、あくまで管理を任せただけで所有権を移した訳ではない。
しかし今の会話を聞く限り、オリバーはまるで私の財産を換金してエミリーに渡しているようではないか。
言われてみれば私がオリバーにエミリーの贅沢について聞いたとき、反応がおかしかったような気がする。後ろ暗いことがあるのかもとは思っていたがまさかここまでなんて。
私はしばらくの間その衝撃的な想像に呆然とし、何もすることが出来なかった。
が、やがて我に帰る。
そうだ、まずはオリバーに話して確かめないと。可能性は低いが私の聞き違いかもしれないし、売り払う約束をしただけでまだ手放してはいないかもしれない。
そう思いながら私は再びオリバーの元へ向かうのだった。
嫁いだ当初はオリバーとエミリーの関係は多少仲がいい兄妹程度だったのに、こうして様子を伺ってみると二人が話す頻度も長さもいつの間に随分増えていたと思う。
大部分はとるに足らない会話なのだが、会話の端々からもエミリーが何かを買ったり遊びに行ったりと贅沢をしている様子が窺える。
とはいえ、二人が話しているところを壁にべったり耳をつけて立ち聞きするということもなかなか出来ないので、なかなか核心的な情報を手に入れることは出来なかった。
そもそもオリバーが自分の領地から不正にお金を手に入れているのであれば、それをエミリーに話すかも分からない。
となるとこの盗み聞きでは情報が得られないのではないか、と思い始めたころ。
そしてそんな調査を始めてから数日後だろうか。
私がいつものように聞き耳を立てていたときだった。
いつものようにエミリーが新しく買ったものを自慢してオリバーがそれを褒めるという会話に辟易していると、ふとオリバーが少し真面目なテンションになって言う。
「なあエミリー、最近ちょっと金遣いが荒くなってないか?」
さすがのシスコンのオリバーでも最近のエミリーは目に余るのか、と私は少し感心する。
「そうかもしれません。でもどれもエミリーにとって必要なものなのです。……だめでしょうか?」
おそらく今頃かわい子ぶってオリバーに懇願しているのだろう。その情景が目に浮かぶ。
私はこの機にオリバーにはエミリーをきちんと教育して欲しい、と思いながら立ち聞きを続ける。
「いや、だめということはないが……あまりお金を使い過ぎてはさすがに怪しまれるだろ。最近は父上やレイラも少し不審に思い始めている節がある」
そういう方向か、と思ったがそれで贅沢を止めてくれるならそれでも構わない。
「そんな……そこは兄上からうまく言っておいてください」
「まあある程度は誤魔化せるが、さすがに別荘とか土地レベルはまずい。それにレイラだってあんなに使えばいつか気づくだろう」
え?
急に私の名前が出てきて私は困惑する。気づくとは一体何にだろうか。エミリーが贅沢していることにはすでに気づいているから、贅沢の原資となっているお金に何か後ろ暗いことがあるということだろう。
しかしオリバーの領地のことであれば気づくのは私ではなく公爵ではないか。
オリバーにとって後ろめたいことで私が気づくこととは何だろうか。
「でも、あれは全部嫁入りの際に兄上がもらったものですよね? だとしたら気づかれても構わないと思いますが」
「違う、確かに管理は任せてもらったが、別にもらった訳ではない」
「似たようなものですわ」
私はその会話を聞いて反射的にその場を離れた。
そして少し離れた部屋で呆然とする。
さすがに明言はされてないが、「レイラだっていつか気づく」「管理は任せてもらった」などの言葉が、エミリーが贅沢しているという事実に次々に繋がっていく。
「さすがに嘘……ですよね?」
確かに私はこの家に嫁いできたとき、私が相続していた家の財産の管理をオリバーに任せた。私が相続した財産は一部の金品を除けば土地や建物が多く管理が必要になるが、遠地のものもあり、それを全部自分でやると膨大な手間がかかる。
しかしすでに自分の家臣と領地を持っているオリバーであれば家臣に命令するだけで管理することが出来る。そのため私は嫁いだときに話しあってオリバーに財産の管理を任せていた。オリバーも言っていた通り、あくまで管理を任せただけで所有権を移した訳ではない。
しかし今の会話を聞く限り、オリバーはまるで私の財産を換金してエミリーに渡しているようではないか。
言われてみれば私がオリバーにエミリーの贅沢について聞いたとき、反応がおかしかったような気がする。後ろ暗いことがあるのかもとは思っていたがまさかここまでなんて。
私はしばらくの間その衝撃的な想像に呆然とし、何もすることが出来なかった。
が、やがて我に帰る。
そうだ、まずはオリバーに話して確かめないと。可能性は低いが私の聞き違いかもしれないし、売り払う約束をしただけでまだ手放してはいないかもしれない。
そう思いながら私は再びオリバーの元へ向かうのだった。
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