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発表

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 それからその週は私たちはそれぞれ調べ物をしながら日々を過ごしました。
 マクシミリアンやアルバートは同じく調べ物を頑張っているのでしょう、図書館などでも時々会いましたが、セラフィナは全くそういう雰囲気はありませんでした。

 途中でそれとなくアルバートに「セラフィナの課題は大丈夫なのでしょうか」と訊いてみましたが、「もしだめそうだったら僕らでフォローしよう」などと言うばかりで、あまり意味のある解答は返ってきませんでした。

 どんどん不安は募っていきましたが、これまでの経験上私がセラフィナに「ちゃんとやっているのか」などと詰め寄るとまたアルバートに怒られてしまいます。

 それに他の授業でも宿題や小テストなどが重なって忙しかったこともあり、結局私はセラフィナの進捗を確認できないまま金曜日の放課後を迎えてしまいました。私たちは改めて教室に集合します。

「それではまずは皆がやってきた部分について軽く発表しようか。まずは僕から行こう」

 いつものようにアルバートが私たちを仕切り、発表を始めます。それ自体は異存はなかったので私はアルバートのに進行を任せました。

 そしてアルバートはドルク王の生涯について調べてきたことを可もなく不可もなく発表をします。
 基本的には教科書通りの内容ですが、いくつかのところで深く調べてきたと思われる内容が入っていました。

「どうかな?」
「出生や挙兵の動機についてはもう少し丁寧に調べてみてもいいかもしれないな」
「そうだね。じゃあ土日にもう少し調べてみるよ」

 マクシミリアンの指摘にアルバートはうんうんと頷きます。

「じゃあ次はマクシミリアン、頼む」
「はい」

 そしてマクシミリアンは建国初期のアレクシア王国の体制について発表を始めます。先ほどのアルバートの発表とは打って変わり、まるで研究者のような発表です。私たちは詳しい本を何冊か読んだだけですが、彼は専門的な論文や当時の資料にも目を通している様子です。
 一つの話をするのにもいくつかの資料を呼んでいるのが伝わってきます。

「どうだったかな?」

 そのため、マクシミリアンの発表が終わっても誰一人として質問や指摘などが出来ませんでした。

「じゃあソフィア、頼むよ」
「は、はい」

 今の発表の後にするのは少し嫌でしたが、私も自分の発表をします。マクシミリアンほどではありませんが、専門的な論文にも目を通し、ドルク王の後世での評価を時代別、身分別にまとめたものを紹介しました。

 発表が終わるとマクシミリアンが感心したように私を見ます。

「なかなかおもしろい発表だったね。ただ、王家や貴族視点が充実しているだけに平民視点での研究が少し不足しているように見えてしまう」
「確かにそうですよね。でしたら私も土日にその辺りをもう少し詰めてみます」
「じゃあセラフィナ、次に行こうか」
「え、ええ」

 そしていよいよセラフィナの番がやってきます。
 途中でいちいち指摘はしませんでしたが、どうもセラフィナは私たちが発表している間に自分の発表を作っていたようでした。

 もしかしたらアルバートもそのためにセラフィナの発表順を最後にしたのかもしれません。他人の発表を聞かずに自分の発表を作るというのは相当失礼ですが、私の中では多少失礼でも授業で恥ずかしくないぐらいの発表をして欲しいという気持ちの方が勝っていました。

「では始めます」

 そしていよいよセラフィナは発表を始めるのでした。
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