27 / 34
王子の絶望Ⅱ
しおりを挟む
「こ、これ以上お前の言うことなんか聞けるか!」
いきなり提案がある、と言われたがすでに僕の中で伯爵に対する評価は地に落ちていた。確かに僕のしたきたことも相当愚かなことであったが、だからといって彼の言うことをこれ以上聞く訳にはいかない。
だが、僕の言葉に伯爵はため息をつく。
「殿下はまだご自分の置かれた立場が分かっていないようですね。いいですか? まず殿下は殿下に対して実は忠誠を尽くしていた家臣を投獄し、殿下のためにあれこれ手を尽くしていた婚約者に婚約破棄を言い渡し、将軍や大臣の諫言を無視しました。それで今更ちょっと謝ったところで、全てなかったことにして“いい王子”に戻れるとでもお思いですか?」
「そ、それは……」
僕の脳裏に僕に対して、呆れ、絶望、怒りなど様々な感情を抱く彼らの表情がよぎる。僕がしたことを考えると
「全部伯爵にそそのかされただけで悪気はありませんでした」で許される訳がない。
「第一、ここで殿下が私を切り捨てればあれほど殿下を慕っていた健気なカミラはどうなるでしょうねぇ」
「お前、まさか……」
今更さらに絶望することがあるとは思っていなかったが、それは僕の思い違いだったようだ。伯爵はニヤリと笑って続ける。
「こんな殿下の悪行を裏で仕組んだとなれば私は重罪です。そうなった時にカミラだけ無事でいられるとでも?」
「お前、まさか……いや、カミラだけは、カミラだけは何としてでも僕が許してもらえるように訴える!」
「殿下、これだけのことをしでかしておいて、今更私を切り捨てて自分だけ罪を償って楽になろうなどと都合のいいことが出来る訳ありません」
「だが……」
僕は王子である以上、「全て伯爵に騙されていた」では通らないが、カミラは伯爵の娘だ。伯爵に騙されて全て僕のため、国のためと信じて行ったとすればまだ救う余地はあるはずだ。
「全く、物分かりが悪いですね、殿下。ではそんな殿下でも理解できるように言ってあげましょう。もし殿下が将軍や大臣たちに膝を屈して私を差し出そうとするのであればカミラの命はないものと思ってください」
「貴様! 実の娘をまるで道具のように!」
僕は怒りのあまり思わず拳を振り上げる。
が、次の瞬間どたばたという足音ともに、伯爵の護衛たちが部屋に入ってきて、僕と伯爵の間に割って入る。
そして護衛の向こうで伯爵はあざ笑うように言った。
「道具? そうだ、娘なんて元から道具のために生んだのだ! それの何が悪い!」
「貴様、僕を騙しただけでなく実の娘まで……」
が、次の瞬間僕の体は護衛たちによって取り押さえられていた。
「おい、何をする、離せ! お前たちはこいつの罪を知らないのか!?」
僕は絶叫するが、護衛たちは無表情で僕の体を取り押さえる。
そんな僕を見て伯爵は改めて悪魔のような笑みで語り掛けてくる。
「さて殿下、改めて話し合いをしましょう。これからのことを」
いきなり提案がある、と言われたがすでに僕の中で伯爵に対する評価は地に落ちていた。確かに僕のしたきたことも相当愚かなことであったが、だからといって彼の言うことをこれ以上聞く訳にはいかない。
だが、僕の言葉に伯爵はため息をつく。
「殿下はまだご自分の置かれた立場が分かっていないようですね。いいですか? まず殿下は殿下に対して実は忠誠を尽くしていた家臣を投獄し、殿下のためにあれこれ手を尽くしていた婚約者に婚約破棄を言い渡し、将軍や大臣の諫言を無視しました。それで今更ちょっと謝ったところで、全てなかったことにして“いい王子”に戻れるとでもお思いですか?」
「そ、それは……」
僕の脳裏に僕に対して、呆れ、絶望、怒りなど様々な感情を抱く彼らの表情がよぎる。僕がしたことを考えると
「全部伯爵にそそのかされただけで悪気はありませんでした」で許される訳がない。
「第一、ここで殿下が私を切り捨てればあれほど殿下を慕っていた健気なカミラはどうなるでしょうねぇ」
「お前、まさか……」
今更さらに絶望することがあるとは思っていなかったが、それは僕の思い違いだったようだ。伯爵はニヤリと笑って続ける。
「こんな殿下の悪行を裏で仕組んだとなれば私は重罪です。そうなった時にカミラだけ無事でいられるとでも?」
「お前、まさか……いや、カミラだけは、カミラだけは何としてでも僕が許してもらえるように訴える!」
「殿下、これだけのことをしでかしておいて、今更私を切り捨てて自分だけ罪を償って楽になろうなどと都合のいいことが出来る訳ありません」
「だが……」
僕は王子である以上、「全て伯爵に騙されていた」では通らないが、カミラは伯爵の娘だ。伯爵に騙されて全て僕のため、国のためと信じて行ったとすればまだ救う余地はあるはずだ。
「全く、物分かりが悪いですね、殿下。ではそんな殿下でも理解できるように言ってあげましょう。もし殿下が将軍や大臣たちに膝を屈して私を差し出そうとするのであればカミラの命はないものと思ってください」
「貴様! 実の娘をまるで道具のように!」
僕は怒りのあまり思わず拳を振り上げる。
が、次の瞬間どたばたという足音ともに、伯爵の護衛たちが部屋に入ってきて、僕と伯爵の間に割って入る。
そして護衛の向こうで伯爵はあざ笑うように言った。
「道具? そうだ、娘なんて元から道具のために生んだのだ! それの何が悪い!」
「貴様、僕を騙しただけでなく実の娘まで……」
が、次の瞬間僕の体は護衛たちによって取り押さえられていた。
「おい、何をする、離せ! お前たちはこいつの罪を知らないのか!?」
僕は絶叫するが、護衛たちは無表情で僕の体を取り押さえる。
そんな僕を見て伯爵は改めて悪魔のような笑みで語り掛けてくる。
「さて殿下、改めて話し合いをしましょう。これからのことを」
22
お気に入りに追加
2,135
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら人嫌いで有名な不老公爵に溺愛されました~元婚約者達は家から追放されたようです~
琴葉悠
恋愛
かつて、国を救った英雄の娘エミリアは、婚約者から無表情が不気味だからと婚約破棄されてしまう。
エミリアはそれを父に伝えると英雄だった父バージルは大激怒、婚約者の父でありエミリアの親友の父クリストファーは謝るがバージルの気が収まらない。
結果、バージルは国王にエミリアの婚約者と婚約者を寝取った女の処遇を決定するために国王陛下の元に行き――
その結果、エミリアは王族であり、人嫌いで有名でもう一人の英雄である不老公爵アベルと新しく婚約することになった――
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
こんなに馬鹿な王子って本当に居るんですね。 ~馬鹿な王子は、聖女の私と婚約破棄するようです~
狼狼3
恋愛
次期王様として、ちやほやされながら育ってきた婚約者であるロラン王子。そんなロラン王子は、聖女であり婚約者である私を「顔がタイプじゃないから」と言って、私との婚約を破棄する。
もう、こんな婚約者知らない。
私は、今まで一応は婚約者だった馬鹿王子を陰から支えていたが、支えるのを辞めた。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?
ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。
卒業3か月前の事です。
卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。
もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。
カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。
でも大丈夫ですか?
婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。
※ゆるゆる設定です
※軽い感じで読み流して下さい
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる