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カミラの後悔Ⅱ
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「どういうことですか、父上! 父上はもしかして最初を騙すつもりだったのですか!?」
私が父上の執務室に入ると、父上は一瞬私が何を言っているのか分からない、という様子で首をかしげる。
が、やがて私の表情を見て私が本気で怒っていることに気づいたのだろう、言った。
「もしかしてお前……気づいていなかったのか?」
「え?」
父上の言葉に私は呆然として首をかしげる。
むしろ私が父上の言っている意味が理解出来ない。
「い、一体どういうことですか!?」
「てっきりカミラも最初からそのために殿下に取り入ったものだと思っていたが……違ったのか」
「そんな!」
父上の言葉を聞いて私は呆然とした。
そうか、父上は最初からそのつもりで殿下に忠義を尽くす振りをしていたと言うのか。
ずっと私は父上の背中を見習って殿下のためにと行動してきたつもりだったのに。
ひとしきり状況を理解してしまうと、湧いてきたのは怒りだった。ずっと自分を騙してたいこと。そして何より殿下を騙してきたこと。
私は殿下のためと思って婚約破棄を仕向けたのに、よりにもよって父上は自分のためにあの事件を仕組んだなんて。
「ゆ、許せません、私はともかく殿下まで騙すなんて!」
「まさかわしが本気で殿下のために動いていると信じていたのか? ちっ、これだからガキは困るんだ。うちのような中堅貴族は所詮誰かにとりいらないと生きていけないんだ。とはいえ国で有数の大貴族は皆古くからの交友関係がある。その中で殿下は無能と評判だから誰も近づこうとしなかった。だからわしは殿下を利用することに決めたんだ。いくら無能でも王になることは決まっているからな!」
「そ、そんな、無能だなんて……殿下はただ……」
とはいえ、私の口から否定する言葉は出てこなかった。
あの時もし私が父上の書類を読んでいなければ、今でも殿下は父上を信じたままだっただろう。
「お前も奴がただの無能であることは分かっているだろう? だから散々利用させてもらった。これまでうちは裕福でもないのに贈り物だのパーティーだので散々ご機嫌をとってきたんだ! だから今度こそわしらはいい思いをさせてもらうしかない!」
「そんな……」
父上の言葉に私は何も反論することは出来なかった。
確かに自家の利益だけを考えれば父上の言うことは正しかった。そして所詮私の言っていることはただの感情論だということも。
それでも、ここまで酷い事を平気でする父上を、私は許すことが出来なかった。
いくら自分の家のためとはいえ、何をやっても許されるという訳ではないはずだ。
「もういいです! ならばこのことは全部殿下に打ち明けます! それが嫌なら今すぐ殿下に謝罪して今後は殿下のために動いてください!」
「ふふふ、そう言えばお前は殿下に大層気に入られているんだったな?」
「そ、それがどうかしましたか? もはや父上には関係のないことです」
急に父上が変な笑い方をしたので私は少し警戒する。
「お前が気づいたならどうせ殿下にもばれているだろう。それなら最後にもう一働きしてもおうと思ってな」
「誰が父上なんかのために! もういいです!」
そう言って私が部屋を出ようとしたときだった。突然、入り口に我が家の使用人たちが立ちはだかる。
「な、何ですか!」
「お嬢様、失礼いたします」
「きゃあっ」
次の瞬間、私は彼らに組み伏せられていた。
突然のことに私は何が何だか分からなくなる。
「な、何をするんですか!」
「知れたことだ。お前の身を盾にすれば殿下も言うことを聞かざるを得ないだろう」
「そんな……」
まさか私が殿下の役にたつどころか殿下の迷惑になってしまうなんて。
父上の本心に気づかないまま殿下を誤った道に誘導し、あまつさえ人質として殿下に父上のような人間の要求をのませる駒として使われるなんて。
すみません、殿下。
そう思いながら私は猿轡をかまされて暗い部屋に押し込められるのだった。
私が父上の執務室に入ると、父上は一瞬私が何を言っているのか分からない、という様子で首をかしげる。
が、やがて私の表情を見て私が本気で怒っていることに気づいたのだろう、言った。
「もしかしてお前……気づいていなかったのか?」
「え?」
父上の言葉に私は呆然として首をかしげる。
むしろ私が父上の言っている意味が理解出来ない。
「い、一体どういうことですか!?」
「てっきりカミラも最初からそのために殿下に取り入ったものだと思っていたが……違ったのか」
「そんな!」
父上の言葉を聞いて私は呆然とした。
そうか、父上は最初からそのつもりで殿下に忠義を尽くす振りをしていたと言うのか。
ずっと私は父上の背中を見習って殿下のためにと行動してきたつもりだったのに。
ひとしきり状況を理解してしまうと、湧いてきたのは怒りだった。ずっと自分を騙してたいこと。そして何より殿下を騙してきたこと。
私は殿下のためと思って婚約破棄を仕向けたのに、よりにもよって父上は自分のためにあの事件を仕組んだなんて。
「ゆ、許せません、私はともかく殿下まで騙すなんて!」
「まさかわしが本気で殿下のために動いていると信じていたのか? ちっ、これだからガキは困るんだ。うちのような中堅貴族は所詮誰かにとりいらないと生きていけないんだ。とはいえ国で有数の大貴族は皆古くからの交友関係がある。その中で殿下は無能と評判だから誰も近づこうとしなかった。だからわしは殿下を利用することに決めたんだ。いくら無能でも王になることは決まっているからな!」
「そ、そんな、無能だなんて……殿下はただ……」
とはいえ、私の口から否定する言葉は出てこなかった。
あの時もし私が父上の書類を読んでいなければ、今でも殿下は父上を信じたままだっただろう。
「お前も奴がただの無能であることは分かっているだろう? だから散々利用させてもらった。これまでうちは裕福でもないのに贈り物だのパーティーだので散々ご機嫌をとってきたんだ! だから今度こそわしらはいい思いをさせてもらうしかない!」
「そんな……」
父上の言葉に私は何も反論することは出来なかった。
確かに自家の利益だけを考えれば父上の言うことは正しかった。そして所詮私の言っていることはただの感情論だということも。
それでも、ここまで酷い事を平気でする父上を、私は許すことが出来なかった。
いくら自分の家のためとはいえ、何をやっても許されるという訳ではないはずだ。
「もういいです! ならばこのことは全部殿下に打ち明けます! それが嫌なら今すぐ殿下に謝罪して今後は殿下のために動いてください!」
「ふふふ、そう言えばお前は殿下に大層気に入られているんだったな?」
「そ、それがどうかしましたか? もはや父上には関係のないことです」
急に父上が変な笑い方をしたので私は少し警戒する。
「お前が気づいたならどうせ殿下にもばれているだろう。それなら最後にもう一働きしてもおうと思ってな」
「誰が父上なんかのために! もういいです!」
そう言って私が部屋を出ようとしたときだった。突然、入り口に我が家の使用人たちが立ちはだかる。
「な、何ですか!」
「お嬢様、失礼いたします」
「きゃあっ」
次の瞬間、私は彼らに組み伏せられていた。
突然のことに私は何が何だか分からなくなる。
「な、何をするんですか!」
「知れたことだ。お前の身を盾にすれば殿下も言うことを聞かざるを得ないだろう」
「そんな……」
まさか私が殿下の役にたつどころか殿下の迷惑になってしまうなんて。
父上の本心に気づかないまま殿下を誤った道に誘導し、あまつさえ人質として殿下に父上のような人間の要求をのませる駒として使われるなんて。
すみません、殿下。
そう思いながら私は猿轡をかまされて暗い部屋に押し込められるのだった。
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