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王子の後悔Ⅱ
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「殿下、ようやく気付いてくださいましたか!」
牢の中から引き出されたアルベルトは目に涙を浮かべながら僕の方へと歩いて来る。
牢での生活が不自由だったからか、心労のせいか彼は少しやつれていた。
確かに僕は間違っていたが、だからといってこいつらが正しかったと認めるのは腹立たしい。
「う、うるさい! お前たちが僕を軽んじていたことについては許すつもりはない! だがヒューム伯とその一派は本当に僕を利用することしか考えていないのか?」
「その通りでございます」
アルベルトは夢中で頷く。
「私たちは確かに殿下に苦言を呈することもありましたが、決して殿下をないがしろにすることはありませんでした。たくさんの政務を殿下にしていただき、またたくさんのことを勉強していただこうとしていたのも、伯爵のような人物に利用されないようにするためだったのです!」
「な、なるほど」
言われてみればアルベルトの言っていることは正しいような気がする。確かに要人との会合や書類の決裁など王子としての務めをきちんと果たしていれば伯爵のような人物が僕を騙すこともなくなるだろう。
学問も面倒だとは思っていたが、知識が増えれば他人に騙されることもなくなるだろう。
「もしかして……お前たちは本当に僕のためを思ってそんなことをしていたのか!?」
「もちろんでございます」
「そうだったのか……」
アルベルトの言葉を聞いて僕は愕然とした。
本当にそんなことを思っていた人を勘違いで僕は牢に入れてしまったのか、という後悔の念と、それでも彼らの言うことを信じたくない、という思いがぐるぐると渦を巻く。
そんな時僕の脳裏にカミラとの思い出がよぎる。
仮に伯爵が裏で何を企んでいたとしても、彼女の笑顔だけは本物だったはずだ。
もはや何が本当で何が嘘かなど分からなかったが、それだけは信じたかった。
「そ、そうだ、カミラだけは本当に僕のことを思っていたはずだ!」
僕の言葉にアルベルトはため息をつく。
「殿下、彼女も大方伯爵が殿下の心を掴むために送り込んできた女でしょう。それに、いくら殿下がそう思っていたとしてもアシュリー様との婚約破棄は許されざる行為です」
「そんな……」
僕は愕然とする。
「一体僕はどうすればいいんだ……」
それを聞いてアルベルトも首をかしげる。
実際周りの者は気軽に婚約破棄を取り消せとか言ってくるが、真面目に考えてみるとこれだけの行動を起こしておきながら「全部なかったことで」などと言ってそれが通るとも思えない。
となってくると、僕はもう破滅しかないのではないか。
そんな……
気が付くと僕は眩暈とともにその場に崩れ落ちていた。
そんな僕にアルベルトは心配そうに駆け寄ってくる。
「お、落ち着いてください殿下。とりあえずはヒューム伯を王宮から遠ざけ、一度出してしまった彼を利するような命令を全て取り消しましょう」
「た、確かにそれはそうだ」
とはいえ、やはりアルベルトは「婚約を戻しましょう」とは言わなかった。ということは例えヒューム伯を罷免したところで僕はこのまま破滅するしかないのだろうか。
そんなことを思いながら僕はかすれる声で命令を出す。
「分かった……ならばすぐにその命令書を作ってくれ」
「わ、分かりました」
そう言ってアルベルトが部屋を出ていく。
が、それと入れ替わりに別の家臣が部屋に入って来た。
「殿下、伯爵閣下から内密のお話があるとのことです」
「何だと!?」
その時混乱しきっていた僕はもうどうしていいか分からなくなっていた。
牢の中から引き出されたアルベルトは目に涙を浮かべながら僕の方へと歩いて来る。
牢での生活が不自由だったからか、心労のせいか彼は少しやつれていた。
確かに僕は間違っていたが、だからといってこいつらが正しかったと認めるのは腹立たしい。
「う、うるさい! お前たちが僕を軽んじていたことについては許すつもりはない! だがヒューム伯とその一派は本当に僕を利用することしか考えていないのか?」
「その通りでございます」
アルベルトは夢中で頷く。
「私たちは確かに殿下に苦言を呈することもありましたが、決して殿下をないがしろにすることはありませんでした。たくさんの政務を殿下にしていただき、またたくさんのことを勉強していただこうとしていたのも、伯爵のような人物に利用されないようにするためだったのです!」
「な、なるほど」
言われてみればアルベルトの言っていることは正しいような気がする。確かに要人との会合や書類の決裁など王子としての務めをきちんと果たしていれば伯爵のような人物が僕を騙すこともなくなるだろう。
学問も面倒だとは思っていたが、知識が増えれば他人に騙されることもなくなるだろう。
「もしかして……お前たちは本当に僕のためを思ってそんなことをしていたのか!?」
「もちろんでございます」
「そうだったのか……」
アルベルトの言葉を聞いて僕は愕然とした。
本当にそんなことを思っていた人を勘違いで僕は牢に入れてしまったのか、という後悔の念と、それでも彼らの言うことを信じたくない、という思いがぐるぐると渦を巻く。
そんな時僕の脳裏にカミラとの思い出がよぎる。
仮に伯爵が裏で何を企んでいたとしても、彼女の笑顔だけは本物だったはずだ。
もはや何が本当で何が嘘かなど分からなかったが、それだけは信じたかった。
「そ、そうだ、カミラだけは本当に僕のことを思っていたはずだ!」
僕の言葉にアルベルトはため息をつく。
「殿下、彼女も大方伯爵が殿下の心を掴むために送り込んできた女でしょう。それに、いくら殿下がそう思っていたとしてもアシュリー様との婚約破棄は許されざる行為です」
「そんな……」
僕は愕然とする。
「一体僕はどうすればいいんだ……」
それを聞いてアルベルトも首をかしげる。
実際周りの者は気軽に婚約破棄を取り消せとか言ってくるが、真面目に考えてみるとこれだけの行動を起こしておきながら「全部なかったことで」などと言ってそれが通るとも思えない。
となってくると、僕はもう破滅しかないのではないか。
そんな……
気が付くと僕は眩暈とともにその場に崩れ落ちていた。
そんな僕にアルベルトは心配そうに駆け寄ってくる。
「お、落ち着いてください殿下。とりあえずはヒューム伯を王宮から遠ざけ、一度出してしまった彼を利するような命令を全て取り消しましょう」
「た、確かにそれはそうだ」
とはいえ、やはりアルベルトは「婚約を戻しましょう」とは言わなかった。ということは例えヒューム伯を罷免したところで僕はこのまま破滅するしかないのだろうか。
そんなことを思いながら僕はかすれる声で命令を出す。
「分かった……ならばすぐにその命令書を作ってくれ」
「わ、分かりました」
そう言ってアルベルトが部屋を出ていく。
が、それと入れ替わりに別の家臣が部屋に入って来た。
「殿下、伯爵閣下から内密のお話があるとのことです」
「何だと!?」
その時混乱しきっていた僕はもうどうしていいか分からなくなっていた。
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