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王子の誤算Ⅰ
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「カミラ、せっかくだから今日は王宮の案内をしよう。王宮には何度か来たことがあると思うが、中には王族しか入れない庭もあるんだ」
「まあ、本当ですか!? ありがとうございます!」
僕が提案するとカミラは素直に目を輝かせて感謝する。
きっとアシュリーではこうはならなかったはずだ。もっともアシュリーにこういう誘いをしたことはなかったが。
そして僕がカミラの手をとって外に出ようとした時だった。
遠慮がちに部屋のドアがノックされる。
「何だ?」
これから外に出ようという時に何なんだ、と多少苛立ちながら答える。
「大臣閣下が会いたいとおっしゃっていますが」
「そうか、今は忙しいからまた今度にしろと伝えておけ」
「ですがそういうことを言い出せる空気ではなく……」
「何だその言い方は」
僕が今度にしろと言っているのにそれを言い出すとか言い出さないとかそういう問題ではないと思うのだが。
がちゃりとドアを開けると、そこには困った顔の執事が立っていた。
「一体何があったんだ?」
「それが大臣閣下は大勢の役人や文官を引き連れてこのたびの殿下の婚約破棄の決定を取り消すように、と」
それを聞いて何となく僕は状況を察した。
要するに彼らは自分の意見を聞いてもらえないのが嫌だからと大勢で押しかけて来たのだろう。数で押しかければ自分の言うことが通ると思うのは浅はかな発想だ。
「適当に彼らをその場に留めておきながら近衛を呼べ」
「わ、分かりました」
僕の命令を聞いて執事はその場を立ち去っていく。
全く、とんだ邪魔が入ってしまったものだ。
「済まないな、カミラ。邪魔者のせいで遅くなってしまって」
「いえ、私は構わないのですが、殿下のお心を煩わせるのは許せません」
そう言ってカミラは頬を膨らませる。
やはり彼女は健気だ。
少し待っていると、執事に呼び出された近衛兵たちがばたばたと廊下を走っていくのが見える。
よし、近衛兵たちがやってきたならいくら大勢でやってきたと言っても大丈夫だろう。
「行こう、もう大丈夫なはずだ」
「はい」
そう言って僕はカミラとともに部屋を出る。
王宮内を歩いていき、途中で騒がしくなっている場所を見かける。
おそらくそこに大臣たちが押しかけているのだろう、と思って何気なくそちらを見て僕は目を疑った。
僕は大臣が大勢で押しかけて来た、と聞いてせいぜい十人ほどでやってきたと思ったのかと思ったが、大臣の後ろにはぱっと見ただけで数十人以上の文官たちがいた。そして「殿下に合わせろ!」と大声で怒鳴っている。
さすがに近衛兵たちが彼らを押さえているので突破するのは難しそうではあるが、思っていたよりも彼らの勢いが強かったことに僕は驚いた。
と同時に僕は思ったよりも王宮の中に不忠の者が多かったことに失望する。
もしあと一歩行動に出るのが遅ければ本当に王宮はアシュリー一派に乗っ取られていたかもしれない。
「大丈夫でしょうか?」
「ああ、大丈夫だ。あんな奴らの好き勝手にさせてたまるか」
カミラが心配そうな顔をするので、僕は努めて強気な表情を作ってそう言い、一緒に庭園に向かうのだった。
「まあ、本当ですか!? ありがとうございます!」
僕が提案するとカミラは素直に目を輝かせて感謝する。
きっとアシュリーではこうはならなかったはずだ。もっともアシュリーにこういう誘いをしたことはなかったが。
そして僕がカミラの手をとって外に出ようとした時だった。
遠慮がちに部屋のドアがノックされる。
「何だ?」
これから外に出ようという時に何なんだ、と多少苛立ちながら答える。
「大臣閣下が会いたいとおっしゃっていますが」
「そうか、今は忙しいからまた今度にしろと伝えておけ」
「ですがそういうことを言い出せる空気ではなく……」
「何だその言い方は」
僕が今度にしろと言っているのにそれを言い出すとか言い出さないとかそういう問題ではないと思うのだが。
がちゃりとドアを開けると、そこには困った顔の執事が立っていた。
「一体何があったんだ?」
「それが大臣閣下は大勢の役人や文官を引き連れてこのたびの殿下の婚約破棄の決定を取り消すように、と」
それを聞いて何となく僕は状況を察した。
要するに彼らは自分の意見を聞いてもらえないのが嫌だからと大勢で押しかけて来たのだろう。数で押しかければ自分の言うことが通ると思うのは浅はかな発想だ。
「適当に彼らをその場に留めておきながら近衛を呼べ」
「わ、分かりました」
僕の命令を聞いて執事はその場を立ち去っていく。
全く、とんだ邪魔が入ってしまったものだ。
「済まないな、カミラ。邪魔者のせいで遅くなってしまって」
「いえ、私は構わないのですが、殿下のお心を煩わせるのは許せません」
そう言ってカミラは頬を膨らませる。
やはり彼女は健気だ。
少し待っていると、執事に呼び出された近衛兵たちがばたばたと廊下を走っていくのが見える。
よし、近衛兵たちがやってきたならいくら大勢でやってきたと言っても大丈夫だろう。
「行こう、もう大丈夫なはずだ」
「はい」
そう言って僕はカミラとともに部屋を出る。
王宮内を歩いていき、途中で騒がしくなっている場所を見かける。
おそらくそこに大臣たちが押しかけているのだろう、と思って何気なくそちらを見て僕は目を疑った。
僕は大臣が大勢で押しかけて来た、と聞いてせいぜい十人ほどでやってきたと思ったのかと思ったが、大臣の後ろにはぱっと見ただけで数十人以上の文官たちがいた。そして「殿下に合わせろ!」と大声で怒鳴っている。
さすがに近衛兵たちが彼らを押さえているので突破するのは難しそうではあるが、思っていたよりも彼らの勢いが強かったことに僕は驚いた。
と同時に僕は思ったよりも王宮の中に不忠の者が多かったことに失望する。
もしあと一歩行動に出るのが遅ければ本当に王宮はアシュリー一派に乗っ取られていたかもしれない。
「大丈夫でしょうか?」
「ああ、大丈夫だ。あんな奴らの好き勝手にさせてたまるか」
カミラが心配そうな顔をするので、僕は努めて強気な表情を作ってそう言い、一緒に庭園に向かうのだった。
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