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提案
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「何だ、提案というのは」
「婚約破棄を宣言することです」
「何だと!?」
ヒューム伯の言葉に僕は驚く。確かにアシュリーのことは好きではないが、だからといって婚約破棄というのは簡単に出来るものではない。簡単に出来るのであれば政略結婚なんて発生しなくなるだろう。
「だがそんなことをすれば父上が一体何と言うか……」
「もちろん陛下の説得は容易ではないでしょう。しかし殿下、このままでは殿下の周りは殿下よりもアシュリー様の顔色をうかがう者ばかりになってしまいます。そうなればアシュリー様の実家であるヘイウッド家が王国の中枢を握ってしまうことになります。それだけは避けなければなりません」
ヒューム伯の言葉を聞いて僕は納得した。
確かに、これはただの夫婦仲や僕の気持ちの問題ではないのだ。僕と結婚するということは将来王妃になるということでもあり、それは王国の動向にも関係する重大事である。
「しかし父上には何と説明すればいいだろうか? 自分で言うのも何だが、アルベルトらが僕を軽んじてアシュリーばかりを持ち上げるのは父上も黙認しているようなのだ」
アルベルトらが言うように、父上は若いころから有能な人物だったらしい。
そもそもアシュリーとの婚約自体が父上によって決められたものであるため、父上をどうにかしなければ婚約破棄を行うのは難しいだろう。
「分かりました。でしたらこの私がアシュリー様かアルベルトたちが悪だくみをしているという証拠を見つけてきましょう」
そう言ってヒューム伯爵は胸を叩く。
「本当か!?」
「はい、もし謀叛の証拠がなければそれはそれで良し、見つかればそれを陛下に見せて婚約破棄を行うことが出来ます」
「さすがヒューム伯だ。頼んだぞ」
「かしこまりました。殿下のために微力ながら力を尽くします」
そう言って伯爵は頭を下げ、部屋を出ていくのだった。おそらく早速その使命を果たしに行ったのだろう。
そして部屋には僕とカミラが残される。
「殿下、大変だったかもしれませんが、よくご決断なされました。婚約が相手がそのようなことを企んでいるかもしれないと思うとさぞお辛いことでしょう」
カミラは優しい言葉をかけてくれる。
「ああ、アシュリーもアルベルトたちも僕のためにしてくれていることが空回りしているだけなのかもしれないと思ったこともあったが……やはりそうではないのだな」
「大丈夫です殿下。私と父上は何があっても殿下を裏切ることはありませんから」
カミラの言葉からは周りの者たちと違って誠実さを感じられた。
彼らは結局どうやって僕を言いくるめて言うことを聞かせるかばかり考えて、その魂胆がバレそうになった時だけ「殿下のため」と言ってごまかしているに違いない。
その証拠に、本当に僕のことを考えてくれているカミラの言葉は彼らの言葉とは違い、こんなにも心にしみる。やはり彼らは「殿下のため」と言いながらも心が籠っていなかったので僕の心に届かなかったのだろう。
「しかし一つ不安なのは、もし奴らが結託して証拠を隠蔽すれば見つからないのではないか?」
「大丈夫です。父上は有能な人物ですし、殿下に仇なす者たちの証拠を突き止めるためならどのようなこともいとわないですから」
「そうか、なら僕に出来ることは信じて待つことだけだな」
「はい、殿下は王宮ではお辛い思いばかりしているでしょうから、この屋敷にいる時ぐらいは心を楽にしてください」
相変わらずカミラは僕に優しかった。
彼女が奴らと同じ人間とはとても信じられないほどだ。
「分かった、ありがとうカミラ」
「いえいえ、当然のことです」
こうして僕はヒューム伯の屋敷でしばしの休息を楽しんだのだった。
「婚約破棄を宣言することです」
「何だと!?」
ヒューム伯の言葉に僕は驚く。確かにアシュリーのことは好きではないが、だからといって婚約破棄というのは簡単に出来るものではない。簡単に出来るのであれば政略結婚なんて発生しなくなるだろう。
「だがそんなことをすれば父上が一体何と言うか……」
「もちろん陛下の説得は容易ではないでしょう。しかし殿下、このままでは殿下の周りは殿下よりもアシュリー様の顔色をうかがう者ばかりになってしまいます。そうなればアシュリー様の実家であるヘイウッド家が王国の中枢を握ってしまうことになります。それだけは避けなければなりません」
ヒューム伯の言葉を聞いて僕は納得した。
確かに、これはただの夫婦仲や僕の気持ちの問題ではないのだ。僕と結婚するということは将来王妃になるということでもあり、それは王国の動向にも関係する重大事である。
「しかし父上には何と説明すればいいだろうか? 自分で言うのも何だが、アルベルトらが僕を軽んじてアシュリーばかりを持ち上げるのは父上も黙認しているようなのだ」
アルベルトらが言うように、父上は若いころから有能な人物だったらしい。
そもそもアシュリーとの婚約自体が父上によって決められたものであるため、父上をどうにかしなければ婚約破棄を行うのは難しいだろう。
「分かりました。でしたらこの私がアシュリー様かアルベルトたちが悪だくみをしているという証拠を見つけてきましょう」
そう言ってヒューム伯爵は胸を叩く。
「本当か!?」
「はい、もし謀叛の証拠がなければそれはそれで良し、見つかればそれを陛下に見せて婚約破棄を行うことが出来ます」
「さすがヒューム伯だ。頼んだぞ」
「かしこまりました。殿下のために微力ながら力を尽くします」
そう言って伯爵は頭を下げ、部屋を出ていくのだった。おそらく早速その使命を果たしに行ったのだろう。
そして部屋には僕とカミラが残される。
「殿下、大変だったかもしれませんが、よくご決断なされました。婚約が相手がそのようなことを企んでいるかもしれないと思うとさぞお辛いことでしょう」
カミラは優しい言葉をかけてくれる。
「ああ、アシュリーもアルベルトたちも僕のためにしてくれていることが空回りしているだけなのかもしれないと思ったこともあったが……やはりそうではないのだな」
「大丈夫です殿下。私と父上は何があっても殿下を裏切ることはありませんから」
カミラの言葉からは周りの者たちと違って誠実さを感じられた。
彼らは結局どうやって僕を言いくるめて言うことを聞かせるかばかり考えて、その魂胆がバレそうになった時だけ「殿下のため」と言ってごまかしているに違いない。
その証拠に、本当に僕のことを考えてくれているカミラの言葉は彼らの言葉とは違い、こんなにも心にしみる。やはり彼らは「殿下のため」と言いながらも心が籠っていなかったので僕の心に届かなかったのだろう。
「しかし一つ不安なのは、もし奴らが結託して証拠を隠蔽すれば見つからないのではないか?」
「大丈夫です。父上は有能な人物ですし、殿下に仇なす者たちの証拠を突き止めるためならどのようなこともいとわないですから」
「そうか、なら僕に出来ることは信じて待つことだけだな」
「はい、殿下は王宮ではお辛い思いばかりしているでしょうから、この屋敷にいる時ぐらいは心を楽にしてください」
相変わらずカミラは僕に優しかった。
彼女が奴らと同じ人間とはとても信じられないほどだ。
「分かった、ありがとうカミラ」
「いえいえ、当然のことです」
こうして僕はヒューム伯の屋敷でしばしの休息を楽しんだのだった。
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