77 / 77
エピローグ
Ⅵ
しおりを挟む
「ただいま、遅くなって悪かった」
「お帰り。帰ってきて良かったの? 今日は大事な会合だったって聞くけど」
「会合自体は終わったから大丈夫だ」
「でも、その後にも宴会とか色々あるんじゃ?」
「確かにそうだけど、それは別にいいよ」
あれから数年後、私とフランクは無事に正式に結婚し、フランクはロイド家の当主を継ぎました。先代のロイド男爵も隠居したもののまだ元気で、フランクの手に負えないことがあると何だかんだ面倒を見てくれます。
私たちは穏やかな生活を送っていましたが、やはり貴族の当主となると忙しくなるもので、かえって結婚前よりも忙しくなってしまってはいました。
それでもフランクはよほどのことがなければこうして夕飯までには帰ってきて一緒に食卓を囲んでくれます。
「それに、せっかく夕食を作ってくれてるからね」
「それは気にしなくてもいいのに」
ロイド家は国から恩賞をもらったとはいえ、まだまだ裕福というにはほど遠い家。元々私は料理が好きだったということもあって、今でも私は時々夕食を作っています。
フランクの父上はそれくらいのメイドは雇ったらどうかと言ってくれますが、そのたびに私は適当に言葉を濁して先送りにしていました。
「僕もエレンの作る夕食が食べたくて早く帰ってるだけだから気にしなくていいよ」
「そ、そう」
結婚するにあたってお互い好意は何度か伝えあってきたのですが、今でもこういう風に直接的に言われると恥ずかしくなってしまいます。
というか最初はフランクの方が私に好意を伝える時に恥ずかしがっているときに照れていたはずなのに、最近は慣れてきたのか私の目を見ながら言ってくるので私はかえって前よりも恥ずかしくなってきました。
「じ、じゃあもうご飯出来てるから」
そう言って私はキッチンに用意していた食事を食卓へと運びます。その間にフランクは着替え、他の家族の方々も集まってきました。
「おお、今日もおいしそうだ」
フランクはテーブルの上に並んだ夕食を見て相好を崩しました。
「そうだといいけど」
そして私たちは食前の祈りを捧げて食べ始めます。
少し食べたところでウィルはおもむろに口を開きました。
「しかし、ウィルはこんな料理を食べて文句を言っていたのか? 全く信じられないな」
「フランク、男は気に入らない女が作ったものは何でも気に入らないものなんだ」
父上が諭すように言います。
「まあ確かにああいういい加減な性格だと、エレンのことは気に入らないのかもしれないな。もっとも、ウィルがもう少しまともだった僕らが出会うこともなかったと思うと何とも言えないけど」
「うーん、まともなウィルというのは想像できないわ」
「ははは、それはそうだ」
私の言葉に周囲から笑いが起きます。
これからもフランクは当主として大変な日々が続くでしょうし、ロイド家もまだまだ小さな家なのでどんな災難が降りかかるかは分かりません。ランカスター家のような裕福な家に嫁げば色々楽だったこともあるかもしれませんが、それでも私はこうして毎日一緒に楽しく食卓を囲むことが出来るというだけで嬉しいのでした。
「お帰り。帰ってきて良かったの? 今日は大事な会合だったって聞くけど」
「会合自体は終わったから大丈夫だ」
「でも、その後にも宴会とか色々あるんじゃ?」
「確かにそうだけど、それは別にいいよ」
あれから数年後、私とフランクは無事に正式に結婚し、フランクはロイド家の当主を継ぎました。先代のロイド男爵も隠居したもののまだ元気で、フランクの手に負えないことがあると何だかんだ面倒を見てくれます。
私たちは穏やかな生活を送っていましたが、やはり貴族の当主となると忙しくなるもので、かえって結婚前よりも忙しくなってしまってはいました。
それでもフランクはよほどのことがなければこうして夕飯までには帰ってきて一緒に食卓を囲んでくれます。
「それに、せっかく夕食を作ってくれてるからね」
「それは気にしなくてもいいのに」
ロイド家は国から恩賞をもらったとはいえ、まだまだ裕福というにはほど遠い家。元々私は料理が好きだったということもあって、今でも私は時々夕食を作っています。
フランクの父上はそれくらいのメイドは雇ったらどうかと言ってくれますが、そのたびに私は適当に言葉を濁して先送りにしていました。
「僕もエレンの作る夕食が食べたくて早く帰ってるだけだから気にしなくていいよ」
「そ、そう」
結婚するにあたってお互い好意は何度か伝えあってきたのですが、今でもこういう風に直接的に言われると恥ずかしくなってしまいます。
というか最初はフランクの方が私に好意を伝える時に恥ずかしがっているときに照れていたはずなのに、最近は慣れてきたのか私の目を見ながら言ってくるので私はかえって前よりも恥ずかしくなってきました。
「じ、じゃあもうご飯出来てるから」
そう言って私はキッチンに用意していた食事を食卓へと運びます。その間にフランクは着替え、他の家族の方々も集まってきました。
「おお、今日もおいしそうだ」
フランクはテーブルの上に並んだ夕食を見て相好を崩しました。
「そうだといいけど」
そして私たちは食前の祈りを捧げて食べ始めます。
少し食べたところでウィルはおもむろに口を開きました。
「しかし、ウィルはこんな料理を食べて文句を言っていたのか? 全く信じられないな」
「フランク、男は気に入らない女が作ったものは何でも気に入らないものなんだ」
父上が諭すように言います。
「まあ確かにああいういい加減な性格だと、エレンのことは気に入らないのかもしれないな。もっとも、ウィルがもう少しまともだった僕らが出会うこともなかったと思うと何とも言えないけど」
「うーん、まともなウィルというのは想像できないわ」
「ははは、それはそうだ」
私の言葉に周囲から笑いが起きます。
これからもフランクは当主として大変な日々が続くでしょうし、ロイド家もまだまだ小さな家なのでどんな災難が降りかかるかは分かりません。ランカスター家のような裕福な家に嫁げば色々楽だったこともあるかもしれませんが、それでも私はこうして毎日一緒に楽しく食卓を囲むことが出来るというだけで嬉しいのでした。
67
お気に入りに追加
5,862
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました
神村 月子
恋愛
貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。
彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。
「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。
登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。
※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。
ミミリン
恋愛
ある世界の貴族である俺。婚約者のアリスはいつもボサボサの髪の毛とぶかぶかの制服を着ていて陰気な女だ。幼馴染のアンジェリカからは良くない話も聞いている。
俺と婚約していても話は続かないし、婚約者としての役目も担う気はないようだ。
そんな婚約者のアリスがある日、俺のメイドがふるまった紅茶を俺の目の前でわざとこぼし続けた。
こんな女とは婚約解消だ。
この日から俺とアリスの関係が少しずつ変わっていく。

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました

【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる