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エピローグ

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 それから数日後、フランクとの顔合わせの日がやってきました。これまではシエラの婚約者候補、あれからは頼れる男性の知り合いとして見ていたので、こうして急に婚約者と言われると緊張してしまいます。

 私がいつもよりおめかししてフランクを待っていると、「フランク様がいらっしゃいました」という声が聞こえてきます。
 玄関に向かうと、そこにはこちらも今までよりも少しおめかししたフランクが立っていました。彼の方もこれまでは私と普通に話していたというのに、今日は少し緊張している様子で嬉しくなってしまいます。

「い、いらっしゃい」
「お邪魔します……あれからどうだ?」
「い、色々うまくいっています……おかげさまで」
「それは良かった」

 そんなぎこちない会話を交わしながら私たちは応接室に向かいました。
 それまでは二人で話していても何にも思わなかったのですが、こうして改めて二人きりになると緊張してしまいます。

「そ、それでどうして今回は婚約の話を私に持ってきてくれたの?」

 普通に話しかけようとしていたのについ少しぎこちなくなってしました。
 フランクの方もどこかぎこちない様子で答えます。

「どうしてって言われると難しいけど、そもそも僕の家とこの家は親交があっただろ?」
「それはそうだけど、あんなことがあったら普通愛想を尽かすものじゃない?」
「確かに愛想は尽かしたが、それはシエラに対してであって、家全体に対してじゃない」

 フランクの言葉は当たり前のように聞こえるかもしれませんが、私にとっては大きな驚きでした。というのも貴族の間では「一家の不始末は家の恥」というのが常識だったからです。
 ランカスター子爵だって、ウィルの恥が家の恥になると思ったからこそあそこまで頑なに事件を隠蔽しようとしたのでしょう。

「それは嬉しいけど……」
「それに、今回の件を解決するときにエレンは積極的に行動しただろう?」
「私何かしたっけ?」

 そう言われて私は少し戸惑います。フランクは調査を手伝ってくれたり、賊を追い返してくれたりと大活躍でしたが私は何かしたでしょうか。

「ああ、あの変わり者のメルヴィン子爵にわざわざ会いに行ったし、変な噂が流れてる中でも、噂を払拭するためにわざわざうちのパーティーにも来てくれたじゃないか」
「言われてみれば確かに」

 その時は一つ一つ最善と思われる行動を選んでいただけであまり自覚はありませんでしたが、他人からは勇敢な行動に見えたのかもしれません。

「今回恩賞をもらったとはいえ、うちは全然大貴族じゃない。だから将来結婚する相手は夫人だから、と何もしない人よりも何か起こった時に協力してくれる人がいいって……父上が言っていた」

 途中まで熱がこもった口調で話していたのに、そこから急に恥ずかしくなったのか、フランクは最後は父親の話にしてしまいました。
 とはいえそれは父親の話ではなくフランク自身の話でもある、と私には分かってしまいます。

「ありがとう」
「い、いや、これは父上が決めたことで僕は何も」

 フランクは照れたように言いました。

「で、でもエレンは良かったのか? あんなことがあったばかりなのに」

 そして彼は話題をそらすようにそう問いかけます。
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