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Ⅴ
対決Ⅰ
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しばらくして、いよいよ公爵の前での対決が始まる時間になります。
私たちは公爵屋敷の広間のようなところに通され、それと向かい合うようにウィルやランカスター子爵が強張った表情で立っていました。
そしてその間にエルーノ公爵と彼の家臣、そして書記のような方がいます。
さらにそれから少し離れてフランクやメルヴィン子爵、そしてヘレンなど事件の関係者が待機しており、さらにその後ろに見学に来た貴族たちがいました。
私たちが揃ったのを見て、エルーノ公爵が厳かに宣言します。
「それではランカスター家とリーン家の一連の騒動に決着をつける裁判を行おうと思う。まずはお互い、誓いを立ててもらおうと思う。汝らはこれから始まる裁判において、嘘偽りない言葉を述べ、真実を明らかにしようとすることを誓うか」
「誓います」
公爵の言葉に私たちは一斉に答えます。
形式的な宣誓とはいえ、明らかに嘘をついている相手はどんな気持ちで宣誓しているのでしょうか。相変わらずウィルは蒼白ですが、ランカスター子爵はまだ諦めていないのか緊張した面持ちです。
「それではまずお互いの言い分を訊こう。まずはランカスター子爵」
「はい」
名前を呼ばれた子爵が一歩前に出ます。
「まずはうちのウィルとリーン家のエレン嬢は婚約していましたが、その仲はあまりうまくいっていませんでした。政略結婚ゆえしかたないこととはいえ、これは認めざるをえません。そんな時にシエラ嬢が突然うちにやってきてウィルを誘惑したのです。確かにそれまでもシエラ嬢はウィルに対して好意的な態度をとっており、エレン嬢との関係についても相談に乗ってくれていたためウィルは彼女に好意を抱いていましたが、シエラ嬢の方はどうも下心があったようです。それに気づいたウィルが彼女を拒絶すると、彼女はまるでウィルに襲われたかのように言って逃げ出したのです!」
子爵はあらかじめこの台詞を用意していたのでしょう、すらすらと淀みなく述べました。
言い終えると公爵が尋ねます。
「他に言うことはないか?」
「いえ、他の件は全て我が家とは関係ないことです」
他の件とはメルヴィン子爵の噂や私たちの馬車が襲われた件のことでしょう。当然ランカスター子爵としてはそれらのことには無関係を装うに決まっています。
「それでは次はリーン男爵」
「はい。まずウィル殿とエレンの仲がうまくいっていなかったというのは本当です。それからシエラとウィル殿の仲は良かったようですが、シエラにはそんな下心はありませんでした。彼女はまだ幼くウィル殿のことを異性とは意識していなかったのです」
父上はランカスター子爵と比べると簡潔に述べます。
するとその話を遮るように、向かい側からウィルが怒りの声を上げます
「そんな訳があるか!」
「静かに!」
が、即座に公爵にたしなめられました。
まあ満座の中で「異性と思われていなかった」と言われるのは屈辱とは思いますが。
そしてそんなウィルの横槍などなかったかのように父上は粛々と言葉を続けます。
「こほん、とにかくそんな訳でシエラは軽率にもランカスター家に出かけました。これに関しては姉の婚約者と密会したシエラにも非がないとは言えないので謹慎を申し付けております。しかしそんなシエラに手を出そうとしたのはウィル殿が最初です。これにはきちんと証人も用意しております」
「他の件については?」
「メルヴィン子爵の件については、子爵本人もおっしゃっている通り、エレンとは普通の会談を行っただけでやましいことは何もありません。今朝の件に関しては、残念ながら襲撃者は調査中です」
「分かった。それでは早速お互いの証人の話を聞こうではないか」
こうして裁判はいよいよ本番に突入しました。
私たちは公爵屋敷の広間のようなところに通され、それと向かい合うようにウィルやランカスター子爵が強張った表情で立っていました。
そしてその間にエルーノ公爵と彼の家臣、そして書記のような方がいます。
さらにそれから少し離れてフランクやメルヴィン子爵、そしてヘレンなど事件の関係者が待機しており、さらにその後ろに見学に来た貴族たちがいました。
私たちが揃ったのを見て、エルーノ公爵が厳かに宣言します。
「それではランカスター家とリーン家の一連の騒動に決着をつける裁判を行おうと思う。まずはお互い、誓いを立ててもらおうと思う。汝らはこれから始まる裁判において、嘘偽りない言葉を述べ、真実を明らかにしようとすることを誓うか」
「誓います」
公爵の言葉に私たちは一斉に答えます。
形式的な宣誓とはいえ、明らかに嘘をついている相手はどんな気持ちで宣誓しているのでしょうか。相変わらずウィルは蒼白ですが、ランカスター子爵はまだ諦めていないのか緊張した面持ちです。
「それではまずお互いの言い分を訊こう。まずはランカスター子爵」
「はい」
名前を呼ばれた子爵が一歩前に出ます。
「まずはうちのウィルとリーン家のエレン嬢は婚約していましたが、その仲はあまりうまくいっていませんでした。政略結婚ゆえしかたないこととはいえ、これは認めざるをえません。そんな時にシエラ嬢が突然うちにやってきてウィルを誘惑したのです。確かにそれまでもシエラ嬢はウィルに対して好意的な態度をとっており、エレン嬢との関係についても相談に乗ってくれていたためウィルは彼女に好意を抱いていましたが、シエラ嬢の方はどうも下心があったようです。それに気づいたウィルが彼女を拒絶すると、彼女はまるでウィルに襲われたかのように言って逃げ出したのです!」
子爵はあらかじめこの台詞を用意していたのでしょう、すらすらと淀みなく述べました。
言い終えると公爵が尋ねます。
「他に言うことはないか?」
「いえ、他の件は全て我が家とは関係ないことです」
他の件とはメルヴィン子爵の噂や私たちの馬車が襲われた件のことでしょう。当然ランカスター子爵としてはそれらのことには無関係を装うに決まっています。
「それでは次はリーン男爵」
「はい。まずウィル殿とエレンの仲がうまくいっていなかったというのは本当です。それからシエラとウィル殿の仲は良かったようですが、シエラにはそんな下心はありませんでした。彼女はまだ幼くウィル殿のことを異性とは意識していなかったのです」
父上はランカスター子爵と比べると簡潔に述べます。
するとその話を遮るように、向かい側からウィルが怒りの声を上げます
「そんな訳があるか!」
「静かに!」
が、即座に公爵にたしなめられました。
まあ満座の中で「異性と思われていなかった」と言われるのは屈辱とは思いますが。
そしてそんなウィルの横槍などなかったかのように父上は粛々と言葉を続けます。
「こほん、とにかくそんな訳でシエラは軽率にもランカスター家に出かけました。これに関しては姉の婚約者と密会したシエラにも非がないとは言えないので謹慎を申し付けております。しかしそんなシエラに手を出そうとしたのはウィル殿が最初です。これにはきちんと証人も用意しております」
「他の件については?」
「メルヴィン子爵の件については、子爵本人もおっしゃっている通り、エレンとは普通の会談を行っただけでやましいことは何もありません。今朝の件に関しては、残念ながら襲撃者は調査中です」
「分かった。それでは早速お互いの証人の話を聞こうではないか」
こうして裁判はいよいよ本番に突入しました。
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