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久し振りの再会

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 それから私たちが公爵の屋敷に着くと、すでにそこにはたくさんの貴族たちが集まり、ちょっとした騒ぎになっていました。

「おい、リーン家の行列が賊に襲われたというのは本当か?」
「噂によると男爵が矢を受けたそうだ」
「それよりも賊の正体はランカスター子爵家の者たちだというのは本当か!?」
「その場にはロイド家の者もいたと聞くぞ」

 そこではすでに貴族たちがそれぞれが手に入れた真偽入り混ざった情報を元に好き勝手に噂話をしているようです。そのため、中には私たちが無事に屋敷に入ってくるのを見るだけで驚いている方すらいました。

 改めて公爵邸に集まった貴族の人数を見て私は驚きます。公爵が出てきた時点で注目度は高いと思っていましたが、予想以上の人数です。

 最初は他家にとってはとるに足らない騒ぎだった今回の件ですが、ついにエルーノ公爵直々の裁きとなった以上、当事者以外の他の貴族たちもその動向に注目します。
 中にはランカスター家が嫌いとかメルヴィン子爵がいけすかないとか個人的な感情で裁判の行方に注目している人物もいるでしょうし、エルーノ公爵の手腕を見学に来たという者もいるようでした。
 また、彼らの中には私たちとフランクが一緒にやってきたことに驚いている人物もいます。

 そんな中、今回の対決を取り仕切るエルーノ公爵が現れて私たちを出迎えます。自分の屋敷にいるせいか、公爵はこの前会った時よりも一段と貫禄ある人物に見えました。
 彼も噂を聞いていたのでしょう、私たちの無事な姿を見てほっとした様子です。

「色々と噂を聞いて心配していたが、無事そうで良かった、男爵よ」
「色々と思うところはありますが、とりあえず本日の出席を優先しました」

 そう言って父上はうやうやしく一礼し、私たちもそれに倣います。

「それはありがたい。負傷した者などはいないか?」
「いえ、幸いフランク・ロイドの助けもあって怪我人はおりません」
「それなら何よりだ。君が賊を撃退するのを手助けしてくれたのか?」
「はい」
「よくやった」

 フランクが頷くと、公爵は満足そうに頷きます。

「ならば裁判は予定通り始めるが問題ないな?」
「はい、お願いします」

 そう言って父上は再び頭を下げました。
 そこで私は尋ねます。

「ところでランカスター家の方々は予定通り来ているのでしょうか?」
「ああ、先ほど到着したはずだが」

 公爵がそう言った時でした。
 突然奥から血相を変えたウィルが現れました。私たちの姿を見るとまるで幽霊でも見るかのように青ざめています。気のせいか、最後に会ったときと比べると彼は少しやせたような気もしました。

「お、お前たち、よ、よくも恥ずかしげもなくこんなところに顔を出せたな」

 彼は精いっぱい虚勢を張っているようです。恐らく私たちが無事に辿り着いたのが驚きなのでしょう。
 そう言えばあの事件以来対立はしていましたが、ウィル本人と会うのは久し振りかもしれません。

「あなたこそ、いい加減真実を認めてはいかがですか? 私のことが嫌いだったのは構いませんが、その後のことは許されることではありません」
「う、うるさい! お前だってメルヴィン子爵と密通していたという噂があるではないか!」
「それは子爵自身が否定していました。というか、その噂を流したのはあなたでは?」
「そ、そんなことする訳ないだろ!」

 ウィルは精いっぱい虚勢を張っていますが、すでに自分でも勝てるとは思っていない様子がひしひしと伝わってきます。やはりあの賊は彼が破れかぶれで手配したようにしか思えません。
 最初はただ気が合わないだけだったのに、こじれにこじれてまさかこのようなことにまでなるなんて。

 が、そこへ公爵がやんわりと間に入ります。

「まあまあ、対決はこれからきちんと全員の前でしてもらうことになる。今こんなところでバチバチしてもらっては困るな。賊についても、いずれきちんと調査すれば正体は分かるだろう」
「はい」
「そ、そういうことなら今は勘弁しておいてやる!」
「ではお互い部屋に案内させよう」

 相変わらずウィルは言葉だけは強気ですが、体は震えています。
 こうして私たちは別々の控室へと案内されました。
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