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陰謀

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「実はエルーノ公爵の屋敷で裁判を行うと決まってから、僕らは、というより父上が『あんなに強引に口封じしようとしてきたランカスター家がこのまま大人しく引き下がるはずがない』と心配していてね。それで子爵家の周辺を探らせていたんだ。そしたらランカスター家の領地からリーン家の領地に密かに移動する賊の集団が見つかり、それを聞いた僕はもしやと思ってやってきた訳だ」
「そんな……」

 それを聞いて私は絶句します。それではまさかあの賊はランカスター家の息がかかった賊だったということでしょうか。

 とはいえ、そう考えると色々と納得がいきます。
 何でこれまで治安が良かった街道沿いに急に賊が現れたのか。
 そして彼らはなぜ通行人やフランクには目もくれずに私たちだけを狙ってきたのか。
 さらにはなぜ彼らはあんなに統制がとれ、しかもいい武器を持っていたのか。
 最後のリーダーの弓の腕もなかなかのものでした。馬車だけを狙ってきたのも、あわよくばヘレンだけを射抜こうとしたためでしょう。

 さすがに私たちが傷つけば徹底的に賊の調査が行われ、真相も暴かれてしまうかもしれません。
 しかしヘレンを射抜くだけならそこまで大事にはならないし、証人を潰せば裁判でも決着がつかないと思ったのかもしれません。

 それは全て彼らがただの賊ではないからなのでしょう。ただの賊であればもっと目の届かないところで自分たちが絶対に勝てる相手だけを襲うはずです。
 元々ランカスター家にいた者たちに武器だけ与えて送り出したのか、それともあの中に家臣が混ざっているのかは分かりませんが、危ないところでした。

「ありがとうございます、あと少し来てもらうのが遅かったらヘレンの身が危なかったかもしれません」
「他にも怪我した者はいないか?」
「はい、最後の矢以外は攻撃されてなかったので」
「それは良かった」
「いやあ、助かった、本当にありがとうフランク君」

 そこへ額に汗を浮かべながら父上も姿を現します。
 それを見てフランクはぺこりと頭を下げました。

「これはリーン男爵、ご無事で何よりです」
「今回は助けていただき感謝する。しかしランカスター子爵め、このようなことを企むとは許せぬ!」
「いかがしましょう? 逃げた賊を追いましょうか?」

 賊を捕えればランカスター家が命じたという証言が手に入るかもしれません。
 とはいえ、今からそれをすれば裁判に遅れてしまうかもしれません。遅れて、しかも賊の捕縛が失敗すれば私たちの印象が悪くなってしまいます。また、賊を捕まえても身元を洗ったり尋問したりするには時間がかかるでしょう。裁判に間に合うとは思えません。

「いや、確かにはらわたが煮えくり返る思いだが、とりあえず公爵家に向かうのを優先しよう。おぬしも公爵家には向かうのか?」
「はい、もちろんです」
「それなら公爵邸までともに来てくれないか?」
「元よりそのつもりでした」
「おお、それは頼もしい」

 こうして私たちは一緒に公爵家へ向かうことになったのでした。
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