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Ⅳ
窮地のウィルⅡ
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「おい、ウィル、一体どうするつもりだ」
そこへすぐに話を聞いた父上もやってくる。
「いや、どうすると言われても……」
突然のことに僕は思わず口ごもってしまう。
むしろ僕の力ではどうにもならないから父上に頼らざるを得ないと思っていたところだ。
が、そんな僕の態度を見ると父上は声を荒げる。
「お前は未だに危機感がないな! いいか、今回の件の真相が明らかになればかばおうとしたわしの名前にも確かに傷がつくが、お前はもう終わりだ! 少なくともこの家の次期当主になることだけは絶対にないし、下手をすれば追い出さざるを得なくなるのだぞ!?」
「そ、そんな……僕はそんな大したことは……」
ありえない。僕はただ自分のことを好きなように見える女子に手を出そうとしたら断られたというだけじゃないか。
そもそも向こうが思わせぶりな態度をとってきたのが悪いのになぜ僕がそんなことにならなければならないのだ。
「まだ自覚していなかったのか!? 婚約者の妹に手を出そうとした挙句、それを隠蔽するために嘘の噂まで流しているんだ。元の罪であれば婚約破棄程度で済んだかもしれないが、ここまでしてしまうとそれでは済まないだろ」
「そんな……どうにかならないのですか、父上」
「わしの力で収拾してもいいが、それでも無傷で済ませることは難しい上に、そうなった場合はお前はその程度のことも自力で始末出来ないとみなすが、それでもいいか?」
「そ、それは……」
それは要するに後継者の座から引きずり降ろされる可能性があるということだ。
それを聞いて僕は背筋が寒くなる。いくら貴族の息子に生まれても家を継げるかどうかでその後の人生は天と地ほどの差もある。
しかも次男や三男で家を継げなければしょうがなかった、で済むが長男で家を継げなければ無能という名札をつけて歩いているも同然だ。
「わ、分かりました、絶対に何とかします」
「うむ、分かった」
こうして僕は父上の元を離れるのだった。
が、そこで僕は屋敷の中が何やら騒がしいのに気づく。
見ると、住み込みで働いている使用人、それも僕に仕えていた使用人が数人荷造りをしているのが見えた。
「おい、どうしたんだ?」
声をかけると彼女らは言いづらそうに言う。
「いえ……一身上の理由で退職させていただこうと」
「はい、私もです」
「何だと!?」
それを聞いて僕は察した。
使用人たちは他の誰よりも先日の事件の顛末の真実を知っている。
そのためエルーノ公爵の元で対決が行われると聞いて、僕が負けるに違いないと思い、早めに泥船から脱出しようと思っているのだろう。子爵家の跡継ぎとしてちやほやされてきた自分が今ではただの泥船としか思われていないという事実に僕はぞっとした。
同時に彼らの露骨過ぎる態度に僕は歯ぎしりしたが、このままこいつらが屋敷の外へ出ていき、向こうに有利な証言をしたら大変なことになる。
せめて対決の日まではいてもらわなければ。
「退職するのはいいが、今週一杯は働いてもらう。急な退職は許さない」
「まあその後辞めさせていただけるのでしたら」
そう言って彼らは頷いたのだった。
この件で僕は事の重大さを再認識した。とはいえ一体どうすれば……依然としてまともな方法は思いつかない。
いや、待てよ? それならもはやまともじゃない方法を使うしかないのでは?
そのことに僕は気づいた。
そこへすぐに話を聞いた父上もやってくる。
「いや、どうすると言われても……」
突然のことに僕は思わず口ごもってしまう。
むしろ僕の力ではどうにもならないから父上に頼らざるを得ないと思っていたところだ。
が、そんな僕の態度を見ると父上は声を荒げる。
「お前は未だに危機感がないな! いいか、今回の件の真相が明らかになればかばおうとしたわしの名前にも確かに傷がつくが、お前はもう終わりだ! 少なくともこの家の次期当主になることだけは絶対にないし、下手をすれば追い出さざるを得なくなるのだぞ!?」
「そ、そんな……僕はそんな大したことは……」
ありえない。僕はただ自分のことを好きなように見える女子に手を出そうとしたら断られたというだけじゃないか。
そもそも向こうが思わせぶりな態度をとってきたのが悪いのになぜ僕がそんなことにならなければならないのだ。
「まだ自覚していなかったのか!? 婚約者の妹に手を出そうとした挙句、それを隠蔽するために嘘の噂まで流しているんだ。元の罪であれば婚約破棄程度で済んだかもしれないが、ここまでしてしまうとそれでは済まないだろ」
「そんな……どうにかならないのですか、父上」
「わしの力で収拾してもいいが、それでも無傷で済ませることは難しい上に、そうなった場合はお前はその程度のことも自力で始末出来ないとみなすが、それでもいいか?」
「そ、それは……」
それは要するに後継者の座から引きずり降ろされる可能性があるということだ。
それを聞いて僕は背筋が寒くなる。いくら貴族の息子に生まれても家を継げるかどうかでその後の人生は天と地ほどの差もある。
しかも次男や三男で家を継げなければしょうがなかった、で済むが長男で家を継げなければ無能という名札をつけて歩いているも同然だ。
「わ、分かりました、絶対に何とかします」
「うむ、分かった」
こうして僕は父上の元を離れるのだった。
が、そこで僕は屋敷の中が何やら騒がしいのに気づく。
見ると、住み込みで働いている使用人、それも僕に仕えていた使用人が数人荷造りをしているのが見えた。
「おい、どうしたんだ?」
声をかけると彼女らは言いづらそうに言う。
「いえ……一身上の理由で退職させていただこうと」
「はい、私もです」
「何だと!?」
それを聞いて僕は察した。
使用人たちは他の誰よりも先日の事件の顛末の真実を知っている。
そのためエルーノ公爵の元で対決が行われると聞いて、僕が負けるに違いないと思い、早めに泥船から脱出しようと思っているのだろう。子爵家の跡継ぎとしてちやほやされてきた自分が今ではただの泥船としか思われていないという事実に僕はぞっとした。
同時に彼らの露骨過ぎる態度に僕は歯ぎしりしたが、このままこいつらが屋敷の外へ出ていき、向こうに有利な証言をしたら大変なことになる。
せめて対決の日まではいてもらわなければ。
「退職するのはいいが、今週一杯は働いてもらう。急な退職は許さない」
「まあその後辞めさせていただけるのでしたら」
そう言って彼らは頷いたのだった。
この件で僕は事の重大さを再認識した。とはいえ一体どうすれば……依然としてまともな方法は思いつかない。
いや、待てよ? それならもはやまともじゃない方法を使うしかないのでは?
そのことに僕は気づいた。
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