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Ⅳ
ロイド家にてⅢ
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言い争っている私たちの元に、さらに別の人物が入ってきます。
「確かにフランク君が言っていることに一理ある。特に興味はないから黙っていたが、くだらないことを言いふらすのは迷惑だからやめてもらおうか」
そんな言葉とともに現れたのはメルヴィン子爵でした。険悪な雰囲気のフランクとハーミット子爵とは違い、まるで他人事のように一人だけのんびりとした雰囲気です。
てっきり彼はこういう言い争いには加わらない人だと思っていたので少し意外でした。周囲の野次馬たちにも驚愕が広がります。
「こ、これはメルヴィン子爵……」
さすがのハーミット子爵もメルヴィン子爵が出てくると動揺の色が見えます。
「この際だから一言言っておくが、わしは女の体には大して興味はない。結婚は家を残すためにやむなくしているが、わしはもっと崇高な芸術のみを追い求めている。そこのところを勘違いしないでもらいたい」
「……は?」
突然の子爵の「女に興味はない」宣言に周囲は驚きを通り越して沈黙が広がりました。仮にそうだとしても、とても人前で宣言するようなことではありません。一体何のつもりなのでしょうか。それとも面倒な噂がなくなるのであれば自分がどう思われようと構わないということでしょうか。
とはいえ周囲の驚きをよそに、言いたいことだけ言って子爵はまたぶつぶつとワインについての感想を言いながら歩いていくのでした。
「いや、一応貴族の当主が女に興味ないと宣言するなんて」
「やはりあの方は本物の狂人なのでは」
そんなささやきが広まっていきます。メルヴィン子爵の常識外れの言葉に、野次馬たちの注目はそちらに向きます。本当かどうかよく分からない噂よりも、既婚の子爵が突然「女に興味がない」と言い出すことの方が興味を惹きます。
元々メルヴィン子爵が変わった人だったこともあり、瞬く間に話題の中心はそちらへと移っていきました。謎のカミングアウトですが、噂をかき消すという意味では効果てきめんだったようです。
そんな様子を見てさすがのハーミット子爵も気勢をそがれたようで、戸惑っています。
その彼にフランクは止めのように言い放ちました。
「……と言う訳だ。これ以上他人のめでたい席で事実無根の悪口を広めるのはやめていただきたい」
「く、くそ、覚えておけよ!」
フランクの言葉にハーミット子爵は悔しそうにそう叫ぶと走り去っていくのでした。
それを見て私はほっと一息つきます。
「大丈夫だったか、エレン?」
そんな私にフランクが心配そうに声をかけてくれます。
しかし心配なのは私の方です。私は黙っていればそのうちその場を切り抜けられたのに、フランクはわざわざ子爵に敵対するだなんて。
「ありがとう、でも大丈夫だった? ハーミット子爵に敵対して」
「うん……冷静に考えると軽率だったような気もするけど、結果的にうやむやになったから大丈夫だ。でもハーミット子爵の絡み方を見ていたら腹が立っていても立ってもいられなくなってしまって」
相変わらずフランクはかなり正義感が強いようです。
その言葉を聞いて私は喜ぶと同時に安堵しました。
「本当に、ありがとう」
「いや、そこまで言われることじゃない」
フランクは照れたように頭をかきます。
子爵が去っていった後、たくさんいた野次馬たちもそれぞれメルヴィン子爵についてささやきながらこの場を去っていくのでした。
「確かにフランク君が言っていることに一理ある。特に興味はないから黙っていたが、くだらないことを言いふらすのは迷惑だからやめてもらおうか」
そんな言葉とともに現れたのはメルヴィン子爵でした。険悪な雰囲気のフランクとハーミット子爵とは違い、まるで他人事のように一人だけのんびりとした雰囲気です。
てっきり彼はこういう言い争いには加わらない人だと思っていたので少し意外でした。周囲の野次馬たちにも驚愕が広がります。
「こ、これはメルヴィン子爵……」
さすがのハーミット子爵もメルヴィン子爵が出てくると動揺の色が見えます。
「この際だから一言言っておくが、わしは女の体には大して興味はない。結婚は家を残すためにやむなくしているが、わしはもっと崇高な芸術のみを追い求めている。そこのところを勘違いしないでもらいたい」
「……は?」
突然の子爵の「女に興味はない」宣言に周囲は驚きを通り越して沈黙が広がりました。仮にそうだとしても、とても人前で宣言するようなことではありません。一体何のつもりなのでしょうか。それとも面倒な噂がなくなるのであれば自分がどう思われようと構わないということでしょうか。
とはいえ周囲の驚きをよそに、言いたいことだけ言って子爵はまたぶつぶつとワインについての感想を言いながら歩いていくのでした。
「いや、一応貴族の当主が女に興味ないと宣言するなんて」
「やはりあの方は本物の狂人なのでは」
そんなささやきが広まっていきます。メルヴィン子爵の常識外れの言葉に、野次馬たちの注目はそちらに向きます。本当かどうかよく分からない噂よりも、既婚の子爵が突然「女に興味がない」と言い出すことの方が興味を惹きます。
元々メルヴィン子爵が変わった人だったこともあり、瞬く間に話題の中心はそちらへと移っていきました。謎のカミングアウトですが、噂をかき消すという意味では効果てきめんだったようです。
そんな様子を見てさすがのハーミット子爵も気勢をそがれたようで、戸惑っています。
その彼にフランクは止めのように言い放ちました。
「……と言う訳だ。これ以上他人のめでたい席で事実無根の悪口を広めるのはやめていただきたい」
「く、くそ、覚えておけよ!」
フランクの言葉にハーミット子爵は悔しそうにそう叫ぶと走り去っていくのでした。
それを見て私はほっと一息つきます。
「大丈夫だったか、エレン?」
そんな私にフランクが心配そうに声をかけてくれます。
しかし心配なのは私の方です。私は黙っていればそのうちその場を切り抜けられたのに、フランクはわざわざ子爵に敵対するだなんて。
「ありがとう、でも大丈夫だった? ハーミット子爵に敵対して」
「うん……冷静に考えると軽率だったような気もするけど、結果的にうやむやになったから大丈夫だ。でもハーミット子爵の絡み方を見ていたら腹が立っていても立ってもいられなくなってしまって」
相変わらずフランクはかなり正義感が強いようです。
その言葉を聞いて私は喜ぶと同時に安堵しました。
「本当に、ありがとう」
「いや、そこまで言われることじゃない」
フランクは照れたように頭をかきます。
子爵が去っていった後、たくさんいた野次馬たちもそれぞれメルヴィン子爵についてささやきながらこの場を去っていくのでした。
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