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Ⅱ
ウィルの勝手な怒りⅢ
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が、僕が言葉に窮しているとエレンはなおも言葉を続ける。
「シエラが私にお菓子作りを教えて欲しいと頼んできたのは最近です。あなたは最近うちには来てなかったようですが、もしかしてシエラと個人的に会っていたということでしょうか?」
「そ、それは、たまたまシエラがうちの近くに来る用事があったからだ! 何もやましいことはない!」
僕はそう叫ぶ。
エレンは僕とシエラの関係を疑っているようだが、僕たちはいたって純粋な関係だ。やましいことは何もない。
が、エレンの冷たい表情は変わらなかった。
「つまり、たまたま近くにいく用事があって、そのついでにたまたまあなたの屋敷に寄る可能性があるから前もって私に料理を教えて欲しいと頼んできた、ということですか?」
「い、いや、それは……」
反論しようとして僕は言葉に詰まる。
「それに、妹に料理を教えるのは姉として当然のことじゃないか!」
「婚約者の妹の料理が食べたいから婚約者に料理を教えさせるなんておかしくないですか?」
そんな、僕はただシエラの純粋な好意を受け取っていただけだというのに。それにとやかく言うなんて。
大体もしエレンの言っていることが事実だとして何か問題があるだろうか。
シエラが僕にそうしたいと思ってしてくれているのに何が問題なのだろうか。
そうだ、そう思うと今まで押されていたのが馬鹿らしくなる。
「……でもそれは元はと言えば君が悪いんだ!」
気が付くと僕は叫んでいた。
エレンは「え?」と困惑したような声をあげる。
「大体君が僕にちゃんと心をこめて接してくれていればこんなことにはならなかったんだ! シエラは君と違って心をこめて僕に接してくれる! だからそんなシエラの好意を受け取るのは当然だろう!」
「なるほど……つまり、自分はシエラの好意を受け取っただけで悪くないと言うのですか?」
エレンも心なしか声を震わせている。
「そ、それは……」
それを聞いて僕は言葉を詰まらせる。
とはいえこのまま頷けば、まるでシエラが僕に言い寄ったかのようになってしまう。そんなことになればシエラはまたエレンに辛く当たられてしまうかもしれない。
そのために僕がはっきりと言ってやらなければ。
「いや、違うね。僕は君の態度が気に食わないからシエラと仲良くしているんだ。だからシエラは悪くない! 大体、君がさっきから何を勘ぐっているのか分からないが、僕とシエラはいたって純粋な関係だ!」
「や、やはりそうなのですか……」
まさかエレンも僕がそこまではっきりと認めるとは思わなかったのだろう、反応に困っているようだった。
「そういう訳だ。とにかく、これ以上シエラに何かするようであれば許さない」
「……」
僕の断固とした決意にさすがのエレンも呆気にとられているようだった。
別に僕とエレンの関係が冷たいままなのはいい。だが、僕はシエラと仲良くさせてもらうしその件でエレンがシエラに辛く当たるのは許せない。
そんな僕の気持ちははっきりと彼女に伝わったことだろう。
それに満足して、僕は呆然としているエレンを置いて部屋を出た。
「シエラが私にお菓子作りを教えて欲しいと頼んできたのは最近です。あなたは最近うちには来てなかったようですが、もしかしてシエラと個人的に会っていたということでしょうか?」
「そ、それは、たまたまシエラがうちの近くに来る用事があったからだ! 何もやましいことはない!」
僕はそう叫ぶ。
エレンは僕とシエラの関係を疑っているようだが、僕たちはいたって純粋な関係だ。やましいことは何もない。
が、エレンの冷たい表情は変わらなかった。
「つまり、たまたま近くにいく用事があって、そのついでにたまたまあなたの屋敷に寄る可能性があるから前もって私に料理を教えて欲しいと頼んできた、ということですか?」
「い、いや、それは……」
反論しようとして僕は言葉に詰まる。
「それに、妹に料理を教えるのは姉として当然のことじゃないか!」
「婚約者の妹の料理が食べたいから婚約者に料理を教えさせるなんておかしくないですか?」
そんな、僕はただシエラの純粋な好意を受け取っていただけだというのに。それにとやかく言うなんて。
大体もしエレンの言っていることが事実だとして何か問題があるだろうか。
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そうだ、そう思うと今まで押されていたのが馬鹿らしくなる。
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「大体君が僕にちゃんと心をこめて接してくれていればこんなことにはならなかったんだ! シエラは君と違って心をこめて僕に接してくれる! だからそんなシエラの好意を受け取るのは当然だろう!」
「なるほど……つまり、自分はシエラの好意を受け取っただけで悪くないと言うのですか?」
エレンも心なしか声を震わせている。
「そ、それは……」
それを聞いて僕は言葉を詰まらせる。
とはいえこのまま頷けば、まるでシエラが僕に言い寄ったかのようになってしまう。そんなことになればシエラはまたエレンに辛く当たられてしまうかもしれない。
そのために僕がはっきりと言ってやらなければ。
「いや、違うね。僕は君の態度が気に食わないからシエラと仲良くしているんだ。だからシエラは悪くない! 大体、君がさっきから何を勘ぐっているのか分からないが、僕とシエラはいたって純粋な関係だ!」
「や、やはりそうなのですか……」
まさかエレンも僕がそこまではっきりと認めるとは思わなかったのだろう、反応に困っているようだった。
「そういう訳だ。とにかく、これ以上シエラに何かするようであれば許さない」
「……」
僕の断固とした決意にさすがのエレンも呆気にとられているようだった。
別に僕とエレンの関係が冷たいままなのはいい。だが、僕はシエラと仲良くさせてもらうしその件でエレンがシエラに辛く当たるのは許せない。
そんな僕の気持ちははっきりと彼女に伝わったことだろう。
それに満足して、僕は呆然としているエレンを置いて部屋を出た。
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