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翌朝

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「どうしよう……ドレスのまま寝てしまっていたわ」

 翌朝、目を覚まして最初に気づいたのはそんなことでした。
 昨夜は色々とショックなことがたくさんあり、気が付くと眠ってしまっていた。昨日はウィルのために張り切っておしゃれしてしまっていましたが、そのまま寝てしまったため台無しです。お化粧は乱れ、体のあちこちにはドレスの跡がついてしまっています。

 いえ、これは全部現実逃避です。正直なところドレスがどうなろうが、どうでもいいことです。

 昨夜はドレスよりももっと大事なものが台無しになってしまっているのに、それを考えないためについ現実逃避をしてしまったのでしょう。

 そう思って私が溜め息をついた時でした。
 不意に部屋のドアがコンコンとノックされます。

「誰でしょうか?」
「僕だ。昨晩は色々あったと聞いてね」
「フランク!?」

 その声を聞いて私は飛び上がりそうになります。
 なぜフランクが私に会いにきているのでしょうか。

「な、何でフランクが!?」
「エレンの両親はウィルとの婚約を決めた張本人だからしばらくは話しづらいと思ってね。僕だったら他人だから話しやすいだろ?」

 確かに私は両親を心配させないために、出来るだけウィルの悪口を言わないようにしようとつとめてきました。それをフランクはよく分かっています。
 その心遣いはありがたいですが、一つだけ不満がありました。

「そんな、他人だなんて! 私たちは幼馴染じゃないですか!」
「悪かった、そういう意味じゃないんだ」

 とはいえ、フランクが来てくれたのは嬉しいですが、今の私はとても彼と顔を合わせられる状況ではありません。
 顔も身だしなみもぐちゃぐちゃになったままです。

「すみません、ちょっとだけ待っていただけない?」
「もちろんだ」

 私は素早く着替えて顔を拭きます。鏡を見ると、目元は真っ赤になっているし、涙の跡はついてるしで最悪でした。
 フランクに会うなら本当は身だしなみをきちんと整えたいところですが、あまり待たせるのも迷惑なので普段着ているシンプルなワンピースに着替え、化粧を大急ぎで直しました。

 そしてドアを開け、フランクを迎え入れます。どんな話を聞いてきたのか、普段の彼より少しだけ私に同情的な視線を向けていました。

 そう言えば自室に彼を招くのは初めてかもしれず、こんな時だというのに少し緊張してしまいます。

「お邪魔するよ、悪かったね、急に」
「すみません、大したもてなしも出来なくて」
「気にしなくていい。それよりも何があったか話してくれないか? まさかウィルに直接聞く訳にもいかず、シエラもいまいち歯切れが悪くて、何があったのかよく分からないんだ」
「分かったわ、それなら……」

 とはいえ、昨日のことをどう話していいのかは自分にもよく分かりませんでした。
 私がウィルと会話していた時に感じた違和感や、ウィルが私に感じていた違和感は正直私もふんわりとしか分かっていません。
 それなのにそれを言葉にして伝えることが出来るでしょうか。

「大丈夫、ゆっくりでいい」

 そんな私にフランクは優しい言葉をかけてくれます。
 それを聞いてやはり彼は私の味方をしてくれるんだな、と安心しました。

「分かりました。でしたら私とフランクの間に起こったことを少し前から順に話していきますね」
「分かった」

 そういう訳で私はフランクにここ最近起こったことを話し始めました。
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