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Ⅲ
三人での勉強会
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それから試験後の休みが明けて、再び学園が始まった。
仲のいい生徒たちはそれぞれ一週間ぶりの再会を喜び合っている。そして休み中にあったことなどを話していた。
これまでなら私はクリフと何かを話していたけど、その日私の元へ歩いてきたのはカーティスだった。
いつもは快活な笑顔を浮かべていることが多い彼だが、今日は少しだけ真剣そうだった。
「リアナ、これからは僕に勉強を教えてくれないか?」
「え、カーティスってそんなに成績悪かったっけ?」
突然の申し出に私は少し驚く。
彼は授業態度も悪くないし、宿題も毎回やってきている。特に先生に怒られているところも見たことがない。だから特に彼の成績を見たことはないが、真ん中ぐらいの成績を維持しているのかと思っていた。
すると彼は少し小声になって言った。
「実は今回の試験、少し点数が下がっていてね。自分では授業についていけているつもりだったんだけど、実際は全然理解してないこととか頭に入ってないことが多いんだ、と気づかされたよ。結果は赤点というほどではないけど、このままだと少しまずいんじゃないかと思ったんだ」
「なるほど」
確かに歴史や法律だと先生が言っていることは何となく分かるけど、聞いた話が右から左へ抜けていって結果的に頭に残ってないというのはよくある。
とはいえ、それでこのままではまずい、と危機感を抱けるのは素直にすごいと思った。
普通の人は、というか私も、成績が下がってからまずいと思うことが多い。そして大体そういう時はすでに手遅れになっている。
「それにこの休みに久しぶりに父上に会ってね。家を継ぐならいくらスポーツが出来てもそれだけではだめだ、と言われてしまって」
カーティスが苦い顔で言う。
実際のところ、カーティスのようにサッカーが強い生徒は学園では女子にモテるが、貴族としてはそこまで役に立つことではない。もちろん運動が出来ないよりはいいし、箔がつくと言えばつくが、逆に言えばそれだけに過ぎない。
もちろん学問が出来ても実際に領地運営や政治の場面で優れた手腕を発揮できるかは別問題であるが、少なくとも歴史や法律に詳しいだけでそうでない人よりはそれだけで一段階優秀であると言える。
「それなら私も一緒に教えてくれない?」
そこへ私たちの会話を聞いたイヴも入ってくる。
そもそもまだカーティスに教えるとは言ってないけど、と思ったけどある意味ちょうどいいのかもしれない。
一応私にもクリフという婚約者がいる以上カーティスと二人きりで勉強会をするのはあまりよろしくないけど、イヴがいれば男女二人ではなくなる。それなら問題ないだろう。
それに話を聞く限り、二人ともそこまで成績が悪いと言うよりは中の下ぐらいの成績ということで教えるレベルも同じぐらいだと思われる。
「いいよ、カーティスもそれで大丈夫?」
「ああ。確かに三人の方が良さそうだね」
イヴの提案にカーティスも私と同じことを思ったのか、頷く。
そしてほっとした表情で言った。
「助かった、正直なところ僕の友達は皆勉強よりも運動の方が得意っていう人が多くて困っていたところなんだ」
「それは確かに」
運動が得意なカーティスの周囲は必然的に運動が得意な生徒が多い。
だから彼は教わる相手がいなかったのだろう。そして最近何かとかかわりがある私に頼んだに違いない。
こうしてこの日から私はイヴとカーティスに勉強を教えることになったのだった。
仲のいい生徒たちはそれぞれ一週間ぶりの再会を喜び合っている。そして休み中にあったことなどを話していた。
これまでなら私はクリフと何かを話していたけど、その日私の元へ歩いてきたのはカーティスだった。
いつもは快活な笑顔を浮かべていることが多い彼だが、今日は少しだけ真剣そうだった。
「リアナ、これからは僕に勉強を教えてくれないか?」
「え、カーティスってそんなに成績悪かったっけ?」
突然の申し出に私は少し驚く。
彼は授業態度も悪くないし、宿題も毎回やってきている。特に先生に怒られているところも見たことがない。だから特に彼の成績を見たことはないが、真ん中ぐらいの成績を維持しているのかと思っていた。
すると彼は少し小声になって言った。
「実は今回の試験、少し点数が下がっていてね。自分では授業についていけているつもりだったんだけど、実際は全然理解してないこととか頭に入ってないことが多いんだ、と気づかされたよ。結果は赤点というほどではないけど、このままだと少しまずいんじゃないかと思ったんだ」
「なるほど」
確かに歴史や法律だと先生が言っていることは何となく分かるけど、聞いた話が右から左へ抜けていって結果的に頭に残ってないというのはよくある。
とはいえ、それでこのままではまずい、と危機感を抱けるのは素直にすごいと思った。
普通の人は、というか私も、成績が下がってからまずいと思うことが多い。そして大体そういう時はすでに手遅れになっている。
「それにこの休みに久しぶりに父上に会ってね。家を継ぐならいくらスポーツが出来てもそれだけではだめだ、と言われてしまって」
カーティスが苦い顔で言う。
実際のところ、カーティスのようにサッカーが強い生徒は学園では女子にモテるが、貴族としてはそこまで役に立つことではない。もちろん運動が出来ないよりはいいし、箔がつくと言えばつくが、逆に言えばそれだけに過ぎない。
もちろん学問が出来ても実際に領地運営や政治の場面で優れた手腕を発揮できるかは別問題であるが、少なくとも歴史や法律に詳しいだけでそうでない人よりはそれだけで一段階優秀であると言える。
「それなら私も一緒に教えてくれない?」
そこへ私たちの会話を聞いたイヴも入ってくる。
そもそもまだカーティスに教えるとは言ってないけど、と思ったけどある意味ちょうどいいのかもしれない。
一応私にもクリフという婚約者がいる以上カーティスと二人きりで勉強会をするのはあまりよろしくないけど、イヴがいれば男女二人ではなくなる。それなら問題ないだろう。
それに話を聞く限り、二人ともそこまで成績が悪いと言うよりは中の下ぐらいの成績ということで教えるレベルも同じぐらいだと思われる。
「いいよ、カーティスもそれで大丈夫?」
「ああ。確かに三人の方が良さそうだね」
イヴの提案にカーティスも私と同じことを思ったのか、頷く。
そしてほっとした表情で言った。
「助かった、正直なところ僕の友達は皆勉強よりも運動の方が得意っていう人が多くて困っていたところなんだ」
「それは確かに」
運動が得意なカーティスの周囲は必然的に運動が得意な生徒が多い。
だから彼は教わる相手がいなかったのだろう。そして最近何かとかかわりがある私に頼んだに違いない。
こうしてこの日から私はイヴとカーティスに勉強を教えることになったのだった。
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