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Ⅱ
カーティス視点 イヴからの相談
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クリフのやつ、一向に反省する気配がないな。
僕の最近の気がかりはそれだった。
元々クリフはリアナという婚約者がいる癖にやたらエルマという女子に懐かれて彼自身もデレデレしているところがあった。
また、極めつけはリアナの誘いを僕をダシにして断ったことだ。その日の試合に一緒に出ようと誘ってはいたが、僕もクリフに断られていた。そのことを人づてに聞いた時はさすがに友達ながら僕もクリフに対しては本心から改めた方がいいと感じた。
そして翌日、クリフと会うなり僕は彼に対して話しかける。
もちろん、リアナが近くにいないことを確認して。
「クリフ、昨日は僕と試合に出るってリアナに言ったらしいね」
「そ、それは……」
僕が口にするとクリフは途端にしどろもどろになる。
前から彼は自分に都合が悪い話になるとしどろもどろになるところがあった。
「一体何でそんなことをしたんだ?」
「済まないカーティス、せっかく誘ってもらったのに」
「僕のことはいいんだ!」
相変わらずリアナに対しては何にも思っていなさそうなクリフの態度に僕はつい苛立ってしまう。
やはり彼は無意識のうちにリアナのことを何でもしてくれる便利な”友人”と思い込んでいる節がある。
「いいか? 僕は断られただけで別に嘘をつかれた訳ではないからいい。だが、君はリアナの誘いを僕の名前を伝わって断ったんだ。悪いとは思わないのか?」
「まあ、確かに悪かったが……」
クリフは罰が悪そうに頭をかく。
「それで一体何をしてたんだ?」
「実はエルマに行きたいところがあると誘われて……」
クリフは言いづらそうに言う。それを聞いて僕はため息をついた。
「クリフ、それはつまりエルマをリアナより優先したということだな?」
「それは違う、リアナは婚約者だからこの先いくらでも一緒にいることはある。だがエルマとは所詮今だけの関係だろ? だから多少は仕方ないじゃないか」
さすがにクリフの言葉を聞いて唖然としてしまった。
しかも彼はそれを本気で言っていそうなのだ。
「クリフ、本当にそう思っているならそれはエルマにも失礼だ。人間関係というのはそういう簡単に切ったりつないだりできるものじゃないし、特に婚約者がいる場合はそうだろう?」
「わ、分かった。悪かったよカーティス。でもこのことはリアナに秘密にしてくれ。過ぎたことをあれこれ言っても仕方ないだろ?」
過ぎたことをあれこれ言っても仕方ない、と本人に言われるのは苛々する。本来それは第三者が仲裁とかする時に言うことではないか。
とはいえ、元々リアナに言うつもりはなかったので僕は頷く。
「分かった。その代わり今後はちゃんとリアナを優先するんだぞ」
「あ、ああ」
僕はクリフの態度に不信感を抱いたが、もしもクリフが反省してリアナときちんと向き合うのであれば余計な告げ口をして二人の仲を裂かない方がいい。
そう思っていったんはそのことを黙っておこうと思ったのだが、数日後リアナとイヴが話しているのを聞いてしまった。イヴによるとクリフはリアナとの勉強会の誘いを断ってエルマと勉強会をしていたという。
それを聞いて僕はクリフにさらに失望した。
この分だとクリフは更生する見込みはないが、その時のリアナはまだクリフがまともなやつだと思っていた、というよりは思い込もうとしていてイヴも説得に難航しているようだった。このままだとリアナを不幸にし続けるだけだ、そう思った僕は意を決してそのことをリアナに言うことにした。
その後、決意したリアナはクリフへの思いを残しつつもこれまでの彼女が嘘のようにクリフに冷たく当たるようになった。
それを見てクリフが改心してくれないかと願っていたが、残念ながらクリフにその兆しは見られなかった。
彼女はクリフにも勉強を教えたり、料理を作ってきたりと尽くしていたし、一度僕の試合を見にきてくれた時もあったが、とてもいい娘だと思う。
それでもクリフが彼女を大事にしないのは常軌を逸しているようにしか思えなかった。
もちろんどんなに性格が良くても恋愛対象として見れないことはあるだろう。
だが、それでもせめて対等な人間として接するべきではないか。
「あの、ちょっと話してもいい?」
そんなことを考えていた時だった。イヴが僕に話しかけてきたのは。
僕の最近の気がかりはそれだった。
元々クリフはリアナという婚約者がいる癖にやたらエルマという女子に懐かれて彼自身もデレデレしているところがあった。
また、極めつけはリアナの誘いを僕をダシにして断ったことだ。その日の試合に一緒に出ようと誘ってはいたが、僕もクリフに断られていた。そのことを人づてに聞いた時はさすがに友達ながら僕もクリフに対しては本心から改めた方がいいと感じた。
そして翌日、クリフと会うなり僕は彼に対して話しかける。
もちろん、リアナが近くにいないことを確認して。
「クリフ、昨日は僕と試合に出るってリアナに言ったらしいね」
「そ、それは……」
僕が口にするとクリフは途端にしどろもどろになる。
前から彼は自分に都合が悪い話になるとしどろもどろになるところがあった。
「一体何でそんなことをしたんだ?」
「済まないカーティス、せっかく誘ってもらったのに」
「僕のことはいいんだ!」
相変わらずリアナに対しては何にも思っていなさそうなクリフの態度に僕はつい苛立ってしまう。
やはり彼は無意識のうちにリアナのことを何でもしてくれる便利な”友人”と思い込んでいる節がある。
「いいか? 僕は断られただけで別に嘘をつかれた訳ではないからいい。だが、君はリアナの誘いを僕の名前を伝わって断ったんだ。悪いとは思わないのか?」
「まあ、確かに悪かったが……」
クリフは罰が悪そうに頭をかく。
「それで一体何をしてたんだ?」
「実はエルマに行きたいところがあると誘われて……」
クリフは言いづらそうに言う。それを聞いて僕はため息をついた。
「クリフ、それはつまりエルマをリアナより優先したということだな?」
「それは違う、リアナは婚約者だからこの先いくらでも一緒にいることはある。だがエルマとは所詮今だけの関係だろ? だから多少は仕方ないじゃないか」
さすがにクリフの言葉を聞いて唖然としてしまった。
しかも彼はそれを本気で言っていそうなのだ。
「クリフ、本当にそう思っているならそれはエルマにも失礼だ。人間関係というのはそういう簡単に切ったりつないだりできるものじゃないし、特に婚約者がいる場合はそうだろう?」
「わ、分かった。悪かったよカーティス。でもこのことはリアナに秘密にしてくれ。過ぎたことをあれこれ言っても仕方ないだろ?」
過ぎたことをあれこれ言っても仕方ない、と本人に言われるのは苛々する。本来それは第三者が仲裁とかする時に言うことではないか。
とはいえ、元々リアナに言うつもりはなかったので僕は頷く。
「分かった。その代わり今後はちゃんとリアナを優先するんだぞ」
「あ、ああ」
僕はクリフの態度に不信感を抱いたが、もしもクリフが反省してリアナときちんと向き合うのであれば余計な告げ口をして二人の仲を裂かない方がいい。
そう思っていったんはそのことを黙っておこうと思ったのだが、数日後リアナとイヴが話しているのを聞いてしまった。イヴによるとクリフはリアナとの勉強会の誘いを断ってエルマと勉強会をしていたという。
それを聞いて僕はクリフにさらに失望した。
この分だとクリフは更生する見込みはないが、その時のリアナはまだクリフがまともなやつだと思っていた、というよりは思い込もうとしていてイヴも説得に難航しているようだった。このままだとリアナを不幸にし続けるだけだ、そう思った僕は意を決してそのことをリアナに言うことにした。
その後、決意したリアナはクリフへの思いを残しつつもこれまでの彼女が嘘のようにクリフに冷たく当たるようになった。
それを見てクリフが改心してくれないかと願っていたが、残念ながらクリフにその兆しは見られなかった。
彼女はクリフにも勉強を教えたり、料理を作ってきたりと尽くしていたし、一度僕の試合を見にきてくれた時もあったが、とてもいい娘だと思う。
それでもクリフが彼女を大事にしないのは常軌を逸しているようにしか思えなかった。
もちろんどんなに性格が良くても恋愛対象として見れないことはあるだろう。
だが、それでもせめて対等な人間として接するべきではないか。
「あの、ちょっと話してもいい?」
そんなことを考えていた時だった。イヴが僕に話しかけてきたのは。
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