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Ⅰ
不穏
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翌日の授業が終わり、今日もクリフと勉強をしなければと思ったところで私はふと思い出す。そう言えば今日は祖父の一周忌の法事があるから帰らなければならないのだった。
私は申し訳ない気持ちになりながらクリフの席に向かう。直前まで予定を忘れているなんて普段はあまりないけど、試験が近づいていてしかもクリフの成績が結構やばくて焦ってしまったのがいけなかったのかもしれない。
昨日もクリフに教えるために自分の復習もしていたら、いつの間にか夜遅くなってしまっていた。
「ごめんクリフ、そう言えば今日法事があるから勉強教えられないんだった。本当にごめん」
「いや、別にいいよ、気にするな」
が、私の申し訳なさに反してクリフの反応はあっさりしたものだった。
もちろん悪いのは私だしそれを気にするなと言ってもらってこちらから不満に思うのはおかしいのだが、それにしてもあっさりすぎやしないだろうか。
大体、勉強は大丈夫なのだろうか。
私が見る限り全く大丈夫ではないけど。
「本当にごめん。勉強大丈夫?」
が、クリフはあっけらかんとした笑顔で言う。
「俺も昨日結構頑張って疲れちゃってたから、今日も休みでちょうど良かったし」
それを聞いて私は困惑した。
昨日の感じだとクリフの成績はかなりまずいし、私としてはそれを結構指摘したつもりなのにまるで伝わっていない。
「いや、クリフの成績だと今日も家でやった方がいいと思うけど」
「ええ……」
私の言葉にクリフは露骨に嫌そうな表情を見せる。
不安にはなるが、私にはどうすることも出来ない。ドタキャンしてしまった罪悪感もあってそれ以上強く言えずに帰り支度を始める。
が、そこへ隣のクラスからエルマが歩いて来るのが見えた。
最近エルマとクリフは仲がいい……気がする。単に同じ学園に通っているから話す、というのを上回る頻度で話しているように感じる。
そしてそれを見るといつも私は胸騒ぎがしてしまう。
そして今日もエマはクリフに話しかけた。
「ねえクリフ、そろそろ試験も近いし一緒に勉強しない?」
「いや、でも俺勉強苦手だしな」
そう言ってクリフはちらちらと私を見る。
が、それでもエルマは引き下がらない。
「そんなことないわ。クリフ頭いいから私教えて欲しいなあ」
そう言ってエルマは媚びるような上目遣いで彼を見つめる。エルマは本気でそう思っているのだろうか。私はそんな二人を見ていて嫌な気持ちになってきたので、逃げるように帰り支度を終わらせてその場を離れる。
去り際、クリフが「そこまで言うなら仕方ないな」と言うのが聞こえてきたような気がした。
翌日の放課後。
私は勉強会を一日空けてしまったことを申し訳なく思いながらもクリフに誘いかける。
「昨日は急な用事でごめん、今日は大丈夫だからカフェテリア行こうか」
が、私の言葉にクリフは微妙な顔をする。
「その件なんだけど、やっぱいいや」
「え?」
私はクリフの言葉に耳を疑う。
元々頼んできたのはクリフだというのに。
すると彼は私と目を合わさずに答える。
「ほら、何というか俺とリアナじゃ全然勉強のレベル違うし? それなのにずっと教えてもらうんだとほら、何というかリアナには悪いっていうか」
彼の言葉は歯切れが悪いし、クリフの目は泳いでいる。
「いや、そんなの気にしている場合じゃないでしょ? 大体私が教えなかったらクリフはどうするの!?」
「まあそこは何とかするよ」
そもそも自分で何とか出来るのならばこんなことにはなっていない。
私は嫌な予感がした。いや、予感を通り越してすでに心の奥底では何が起こっているのかを理解していたのだろう。
それでも私はその事実を認めたくはなかった。だから懸命に見ない振りをしていただけかもしれない。
「そう……じゃあ……頑張ってね」
私は現実逃避するように教室を後にしたのだった。
私は申し訳ない気持ちになりながらクリフの席に向かう。直前まで予定を忘れているなんて普段はあまりないけど、試験が近づいていてしかもクリフの成績が結構やばくて焦ってしまったのがいけなかったのかもしれない。
昨日もクリフに教えるために自分の復習もしていたら、いつの間にか夜遅くなってしまっていた。
「ごめんクリフ、そう言えば今日法事があるから勉強教えられないんだった。本当にごめん」
「いや、別にいいよ、気にするな」
が、私の申し訳なさに反してクリフの反応はあっさりしたものだった。
もちろん悪いのは私だしそれを気にするなと言ってもらってこちらから不満に思うのはおかしいのだが、それにしてもあっさりすぎやしないだろうか。
大体、勉強は大丈夫なのだろうか。
私が見る限り全く大丈夫ではないけど。
「本当にごめん。勉強大丈夫?」
が、クリフはあっけらかんとした笑顔で言う。
「俺も昨日結構頑張って疲れちゃってたから、今日も休みでちょうど良かったし」
それを聞いて私は困惑した。
昨日の感じだとクリフの成績はかなりまずいし、私としてはそれを結構指摘したつもりなのにまるで伝わっていない。
「いや、クリフの成績だと今日も家でやった方がいいと思うけど」
「ええ……」
私の言葉にクリフは露骨に嫌そうな表情を見せる。
不安にはなるが、私にはどうすることも出来ない。ドタキャンしてしまった罪悪感もあってそれ以上強く言えずに帰り支度を始める。
が、そこへ隣のクラスからエルマが歩いて来るのが見えた。
最近エルマとクリフは仲がいい……気がする。単に同じ学園に通っているから話す、というのを上回る頻度で話しているように感じる。
そしてそれを見るといつも私は胸騒ぎがしてしまう。
そして今日もエマはクリフに話しかけた。
「ねえクリフ、そろそろ試験も近いし一緒に勉強しない?」
「いや、でも俺勉強苦手だしな」
そう言ってクリフはちらちらと私を見る。
が、それでもエルマは引き下がらない。
「そんなことないわ。クリフ頭いいから私教えて欲しいなあ」
そう言ってエルマは媚びるような上目遣いで彼を見つめる。エルマは本気でそう思っているのだろうか。私はそんな二人を見ていて嫌な気持ちになってきたので、逃げるように帰り支度を終わらせてその場を離れる。
去り際、クリフが「そこまで言うなら仕方ないな」と言うのが聞こえてきたような気がした。
翌日の放課後。
私は勉強会を一日空けてしまったことを申し訳なく思いながらもクリフに誘いかける。
「昨日は急な用事でごめん、今日は大丈夫だからカフェテリア行こうか」
が、私の言葉にクリフは微妙な顔をする。
「その件なんだけど、やっぱいいや」
「え?」
私はクリフの言葉に耳を疑う。
元々頼んできたのはクリフだというのに。
すると彼は私と目を合わさずに答える。
「ほら、何というか俺とリアナじゃ全然勉強のレベル違うし? それなのにずっと教えてもらうんだとほら、何というかリアナには悪いっていうか」
彼の言葉は歯切れが悪いし、クリフの目は泳いでいる。
「いや、そんなの気にしている場合じゃないでしょ? 大体私が教えなかったらクリフはどうするの!?」
「まあそこは何とかするよ」
そもそも自分で何とか出来るのならばこんなことにはなっていない。
私は嫌な予感がした。いや、予感を通り越してすでに心の奥底では何が起こっているのかを理解していたのだろう。
それでも私はその事実を認めたくはなかった。だから懸命に見ない振りをしていただけかもしれない。
「そう……じゃあ……頑張ってね」
私は現実逃避するように教室を後にしたのだった。
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