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エピローグ

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 そんなパーティーの出来事から約一か月後、私はレイモンド家で開かれたパーティーに出席していた。

 レイモンド伯爵はパーティーについて「重大発表がある」としか言っていなかったが、この前のパーティーでアイザックがジュリーを言い負かした件はすでに国中の貴族に知れ渡っていた。

 そのため、私が歩くだけで周囲からの視線が集まってきてとても気恥ずかしかった。
 私が近くを通りかかると、皆「アイザックと婚約するのか」「一体どんな人なのだろう」と興味本位、もしくはそのことをうらやんでじろじろ見てくるのである。

 そんな中、唯一私やアイザックが近くにいても注目してこない人々がいった。
 誰かと思って見てみると、クレアとジャックであった。二人は会場のど真ん中で周囲にはばかる中、マイペースに自分たちの世界を作っていた。
 相変わらずだな、と思いつつも微笑ましくなる。あの二人を見ていると結局婚約者に大切なのは容姿や評判よりも相性なのだと思ってしまう。

「済まないね、こんなことになってしまって」

 私がそんなことを考えていると、アイザックが苦笑しながら話しかけてくる。
 私たち二人が話し始めるとすぐに周囲の視線が集まった。

「僕はともかくローラまでこんなに注目されて……大変だろ?」
「いえ、私は別に」
「そうか? せっかくだし少し庭に出ないか?」
「え、ええ」

 私が頷くと、彼はさっと私の手を引いて庭に連れ出す。
 そのあまりに自然な動作に私は最初自分の手を掴まれたことにも気づかなかった。

 さすがに周囲の人々も庭まで追いかけてくることはなく、私たちは二人きりになる。
 そこで私はようやく一息つく。
 注目を集めるというのは知らず知らずのうちに疲れてしまうもので、そう考えるとアイザックはすごい。

「でも、あの時はありがとう。正直クレアがジュリーに絡まれてるのを見てずっとはらはらしてたから、割って入ってくれて良かった」
「そうか。実はあの後父上に怒られてね、『あんなところでまだ発表してない婚約の話を勝手に発表するな』と」

 レイモンド伯爵から見ればそうなるのは当然だろう。

「それは本当にそう」
「僕は元々周囲から変な目で見られることに慣れていたけど君までそうなって大変だっただろう?」
「うーん、まあそれはそうだけど、どうせ婚約したらそうなる訳だよね? それなら別にそれがちょっと早くてもいいんじゃない?」
「それはそうだ。しかし君の友達は本当にすごいな」

 彼が言っているのはクレアとジャックのことだろう。

「うん、クレアは色んな意味ですごいよ。こんなこと言うのもなんだけど、アイザックは将来どんな大人になってどういう風に活躍するのかは何となく想像がつくけど、クレアは全然予想つかない」
「そうか、ちなみに君の見立てだと僕はどうなるんだ?」
「将来当主になったら自分の家のことだけじゃなくて、国のことについても色々こうしたらいいとか気づいて、色々言うと思う。その時の国王陛下がいい人だったらきっと重宝されると思う」
「そうか。そうなるといいな」

 それから私たちは他愛のない話をした。
 何でもないことを話していると時間はあっという間に過ぎていってしまい、やがてパーティーが始まる時間になってしまう。

「仕方ない、そろそろ行こうか」
「分かった」

 こうして私たちは会場に戻っていくのだった。
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