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EX 勘違い女の末路Ⅱ

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 それから一か月ほど、ジュリーは悲惨な日々を送っていた。
 以前はパーティーやお茶会に出てはドレスや実家の自慢をしていたジュリーだったが、今ではすっかりそんな元気もなくなってしまい、家の中に閉じこもっていた。
 かといって自分が悪かったと反省する訳ではなく、使用人にいい男探しを行わせていた。
 そんなある日、彼女の部屋がノックされる。

「どなた?」
「父上がお呼びです」

 あの忌まわしきパーティーの日以来父は一切ジュリーに口を利いてくれなかった。それなのにいきなり呼び出しとは一体何だろうか。
 いや、もしかして父上は実は私を可哀想に思って婚約者を探してくれていたのではないか。それに忙しくて私に声をかけることも出来なかったのだろう。

 基本的に物事を自分に都合のいい方向にしか捉えられないジュリーはすぐにそう納得する。あれだけのことがあっても彼女は自分の勘違い癖を治そうとしなかった。
 そしてふんふんと鼻歌を歌いながら父の部屋へ向かう。

「父上、ジュリーです」
「入りなさい」

 部屋に入ったジュリーは少し緊張しながら父の向かいに座る。
 すると父は少し複雑そうな表情で告げた。

「ジュリー、ついにお前に婚約者が決まった」
「い、一体どなたでしょうか?」
「アラザン伯爵家のカルロスだ」
「まあ!」

 その名を聞いてジュリーは喜ぶ。
 カルロスと言えば、アイザックほどではないが優男として有名だ。ただ、実家の裕福さであればアイザックに勝る。
 何よりジュリーにとって嬉しかったのはカルロスも華美な身なりを好み、いつも高級な服を着ているところだ。噂によると、彼は一年で同じ服を着る日は一度もないという。そんな彼であればジュリーの魅力も分かってくれるに違いない、と彼女は思った。

 一方の父親はカルロスについてもう少し詳しく知っていたので、ジュリーと違って特に喜んではいない。
 そもそも今のジュリーに本当にまともな相手との縁談が決まる訳がなかった。

「とにかく、これは正式に決まった婚約だ。今度は粗相することなくうまくやるのだぞ」
「もちろんです、父上。素敵な婚約を決めてくださってありがとうございます」

 無邪気に喜ぶジュリーを見て父は内心頭を抱えた。しかしまさか自分で決めた婚約者に対して「カルロスは噂ほどいい人ではないからあまり期待しすぎるな」と言う訳にもいかない。

 そんな訳で父はずっと微妙な顔をしていた。

「それなら彼と会うために新しいドレスを仕立てさせて欲しいですわ」
「うむ」

 本来ならこれ以上ジュリーに我がままさせたくはなかったが、今のドレスはこの前のパーティーでケチがついたと聞く。
 まさかそれを着てカルロスに会わせる訳にもいかない。仕方なく父が頷くと、ジュリーは小躍りして喜ぶのだった。

 それを見て父は何となく嫌な予感がしつつも、厄介な評判が立った娘を早い所よそに出すしかない、と腹を括るのだった。
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