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クリフトンの来訪Ⅱ
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それから数日後、無事公務を果たしたクリフトンはいよいようちの屋敷へやってきました。
うちの屋敷も出来る範囲できれいにしましたが、クリフトンの行列がやってくると、どうしても場違い感が出てしまいます。
馬車が庭先に到着すると、私だけでなく父上自ら出迎えに向かいます。
いくら爵位も家の豊かさも向こうの方が上とはいえそこまでせずとも、とは思いますが父上もセネット家との縁を繋ぐために本気なのかもしれません。
馬車から降りてきたクリフトンはそんな私たちの出迎え態勢を見て少し驚きました。
そして慌てて父上に頭を下げます。
伯爵家出身とはいえ、クリフトンはまだ家を継いではいないので当主である父上とどちらの方が偉いかは難しいところです。
また、人によってはここぞとばかりに偉そうにするところでもあります。
「急に来てしまった上、アストリー男爵直々のお迎え、大変恐縮です」
「いや、こちらこそうちのような辺鄙なところまで来ていただき恐縮です」
二人とも腰の低い人物だったため結果的に、二人とも頭の下げ合いのようになってしまっていまいました。
私も慌ててそれに倣います。
「お越しいただきありがとうございます」
「とりあえず立ち話もなんですので、中へどうぞ」
そう言って父上はクリフトンを応接間へと案内します。
一応頑張って綺麗にしたとはいえ、うちのような屋敷をクリフトンのような壮麗な屋敷で暮らしている人物に見られてしまうのは恥ずかしくなってしまいます。
とはいえクリフトンは特にうちの屋敷をじろじろと見ることもなく、父上と立ち話しながら歩いていきます。
応接間に着くと、事前に用意させておいた紅茶とお菓子が運ばれてきます。
そしてしばらくの間父上とクリフトンは社交辞令的な挨拶から入り、お互いの家の近況について話していました。
「……そう言えばアストリー家は最近経営が苦しいと聞きますが」
不意にクリフトンが切り出しました。
その話題が出ると、父上は少し迷った様子ですが、正直に話すことにしたようです。
「そうだ、わしが家を継ぐ少し前に大規模な日照りが襲い、その時に大きな被害を受けましてな」
「しかしそれはかなり前のことですよね?」
クリフトンが遠慮がちに尋ねます。
要するにまだ復興出来ていないのか、ということを遠回しに訊いているのでしょう。
「そうなのですが、その時に農民からの税率を下げましてな。今は収穫も戻ってはいるのですが、また同じような被害が出てはかなわないので税率を戻す代わりに、その差分を蓄えさせているのです。また、領地の経営が厳しい時に家臣を召し放つ訳もいかぬと抱え続けた結果、借金がかさんでしまいまして」
それを聞いたクリフトンは目を丸くしました。
「では災害が起こった時に家臣の給金を減らしたり、被害がなかった地域の税率を上げたりはしなかったのですか?」
「そうですな」
「逆によくそれで家が持ちましたね」
「いやあ、しかし家臣や領民に負担をかける訳にはいきませんので。それでずっと貧乏経営が続いております」
「なるほど」
クリフトンは感心した様子でした。
確かにクリフトンが口にしたような対応の方が一般的で、父上のようなやり方の方が珍しいと言えるでしょう。
「逆にセネット家は豊かと聞きますが、どのようなことをしているのでしょうか?」
「我が家では農民や商人の中でも力あるものに積極的に投資をしております。それにより彼らが領内を豊かにしてくれているのです」
「なるほど」
簡単には言いますが、投資は先を間違えるとただの無駄遣いに終わります。
結果が出ているということはその見極めがうまくいっているということでしょう。その見極めに感心してしまいます。
それからさらにお互いの家の話などで盛り上がった後でした。
「ではわしはそろそろ」
そう言って父上が席を立ち、私たちは二人きりになります。
うちの屋敷も出来る範囲できれいにしましたが、クリフトンの行列がやってくると、どうしても場違い感が出てしまいます。
馬車が庭先に到着すると、私だけでなく父上自ら出迎えに向かいます。
いくら爵位も家の豊かさも向こうの方が上とはいえそこまでせずとも、とは思いますが父上もセネット家との縁を繋ぐために本気なのかもしれません。
馬車から降りてきたクリフトンはそんな私たちの出迎え態勢を見て少し驚きました。
そして慌てて父上に頭を下げます。
伯爵家出身とはいえ、クリフトンはまだ家を継いではいないので当主である父上とどちらの方が偉いかは難しいところです。
また、人によってはここぞとばかりに偉そうにするところでもあります。
「急に来てしまった上、アストリー男爵直々のお迎え、大変恐縮です」
「いや、こちらこそうちのような辺鄙なところまで来ていただき恐縮です」
二人とも腰の低い人物だったため結果的に、二人とも頭の下げ合いのようになってしまっていまいました。
私も慌ててそれに倣います。
「お越しいただきありがとうございます」
「とりあえず立ち話もなんですので、中へどうぞ」
そう言って父上はクリフトンを応接間へと案内します。
一応頑張って綺麗にしたとはいえ、うちのような屋敷をクリフトンのような壮麗な屋敷で暮らしている人物に見られてしまうのは恥ずかしくなってしまいます。
とはいえクリフトンは特にうちの屋敷をじろじろと見ることもなく、父上と立ち話しながら歩いていきます。
応接間に着くと、事前に用意させておいた紅茶とお菓子が運ばれてきます。
そしてしばらくの間父上とクリフトンは社交辞令的な挨拶から入り、お互いの家の近況について話していました。
「……そう言えばアストリー家は最近経営が苦しいと聞きますが」
不意にクリフトンが切り出しました。
その話題が出ると、父上は少し迷った様子ですが、正直に話すことにしたようです。
「そうだ、わしが家を継ぐ少し前に大規模な日照りが襲い、その時に大きな被害を受けましてな」
「しかしそれはかなり前のことですよね?」
クリフトンが遠慮がちに尋ねます。
要するにまだ復興出来ていないのか、ということを遠回しに訊いているのでしょう。
「そうなのですが、その時に農民からの税率を下げましてな。今は収穫も戻ってはいるのですが、また同じような被害が出てはかなわないので税率を戻す代わりに、その差分を蓄えさせているのです。また、領地の経営が厳しい時に家臣を召し放つ訳もいかぬと抱え続けた結果、借金がかさんでしまいまして」
それを聞いたクリフトンは目を丸くしました。
「では災害が起こった時に家臣の給金を減らしたり、被害がなかった地域の税率を上げたりはしなかったのですか?」
「そうですな」
「逆によくそれで家が持ちましたね」
「いやあ、しかし家臣や領民に負担をかける訳にはいきませんので。それでずっと貧乏経営が続いております」
「なるほど」
クリフトンは感心した様子でした。
確かにクリフトンが口にしたような対応の方が一般的で、父上のようなやり方の方が珍しいと言えるでしょう。
「逆にセネット家は豊かと聞きますが、どのようなことをしているのでしょうか?」
「我が家では農民や商人の中でも力あるものに積極的に投資をしております。それにより彼らが領内を豊かにしてくれているのです」
「なるほど」
簡単には言いますが、投資は先を間違えるとただの無駄遣いに終わります。
結果が出ているということはその見極めがうまくいっているということでしょう。その見極めに感心してしまいます。
それからさらにお互いの家の話などで盛り上がった後でした。
「ではわしはそろそろ」
そう言って父上が席を立ち、私たちは二人きりになります。
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