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決着
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「イレーネ、今度こそあなたを倒すわ。喰らえ!」
そう言ってレイシャは杖に力をこめると、初手から全力でファイアーボールを撃ってきます。私は慌てて防御魔法を張りますが、幸い威力は前回とそこまで変わっておらず、どうにか防ぎきることが出来ました。
「あなたでは何度やっても勝つことは出来ない。王国をかき乱し、国全体に不幸をまき散らした報いを受けていただきます」
「うるさい! 最後に勝てば何の問題もないわ!」
それでもレイシャは諦めきれないらしく、続いてレイシャは何発もファイアーボールを発射してきます。圧倒的な魔力ですが、その攻撃は自棄になっているような感じを覚えます。
次々とファイアーボールが防御魔法に着弾して派手に爆発し、周りで戦っていた武将や兵士たちはそのたびに少しずつ遠ざかっていきます。
気が付くと、私の周囲には焦げた大地が広がっていました。
防御魔法を解くと、目の前で息をきらしているレイシャの姿が見えます。いきなりたくさんの魔力を使ったから疲れているのでしょう。
「ホーリー・ランス」
私は前回と同じように攻撃魔法を放ちます。すぐにレイシャも防御魔法を張りますが、光の槍とぶつかり合うと音を立てて割れていきました。
もっとも私の魔法もバリアにぶつかった衝撃で割れていきましたが、こちらの方がまだ余力があります。
「やはりあなたでは私には勝てませんよ」
今度は私が続けざまに光の槍を何発も発射しました。レイシャは必死に防御魔法を張っていきますが、魔力がきれかけているのかその強度はどんどん下がっていきます。
最初は私の魔法と相殺出来ていましたが、だんだんそれも出来なくなっていき、突破した光の槍がレイシャの体をかすめて衣服が破れ、かすり傷が増えていきます。
やがて何度目かの攻撃をかわそうとしたレイシャは足がもつれてその場に転んでしまいました。今なら私の魔法を避けることも防ぐことも出来ないでしょう。彼女が頼みにしていた魔法の杖もいつの間にか彼女の手元を離れて近くに転がっています。
私は最後の呪文を唱えようとします。
「さて、次で終わりです、ホーリー……」
その時でした。突然、絶対絶命のはずのレイシャがにやりと笑いました。
「覚悟!」
突然レイシャは懐からナイフを抜くと、こちらに投げつけてきます。ナイフはまっすぐに私の首筋を狙って飛んできました。
そのあまりの機敏な動作に私は反応することが出来ませんでした。ちょうど攻撃魔法を唱えようとしていたところ
だったので防御魔法も間に合いません。
もしかしてレイシャは私との再戦に備えて魔法ではなくこの一度の投擲だけをひたすらに練習していたのでしょうか。
もうだめだ、と思って私が眼をつぶろうとした時でした。
突然、カツン、という甲高い金属音とともにナイフが叩き落されます。
気が付くと、前の前には先ほどまでボルグと戦っていたはずのオーウェン様が立っていました。
「大丈夫だったか?」
「は、はい。おかげで。でもボルグと戦っていたのでは?」
「さっき片付けた」
そう言ってオーウェン様が指さした方を見ると、そこにはボルグが倒れていました。あの剣の腕だけには優れたボルグをあっという間に倒してしまうとは、やはりオーウェン様はお強い方です。
それを見たレイシャはちっ、と舌打ちします。
「本当に最後まで使えない王子だったわ」
「結局曲がったことをしようとすると、そういう人しか味方にならないということです」
私の言葉にレイシャは悔しそうに顔を歪めましたが、反論はしませんでした。
「悪いな」
オーウェン様は一言いうと、目にも留まらぬ速さでレイシャに近づくと、彼女の胸を一突きにします。あまりに鮮やかな一撃にレイシャは悲鳴も上げずにこときれました。
「これでようやく終わったな」
「は、はい。本当にありがとうございました」
見ると騎馬隊の隊長ももはやこれまでと思ったのか、残った騎兵をまとめて退却に移っています。
帝国軍は秘策であった鉄騎兵が敗れてもはや勝ち目なしと思ったのか、潮が引くように退却していくのでした。
こうして今度こそ私たちはボルグとレイシャを倒し、帝国に完全勝利したのです。
そう言ってレイシャは杖に力をこめると、初手から全力でファイアーボールを撃ってきます。私は慌てて防御魔法を張りますが、幸い威力は前回とそこまで変わっておらず、どうにか防ぎきることが出来ました。
「あなたでは何度やっても勝つことは出来ない。王国をかき乱し、国全体に不幸をまき散らした報いを受けていただきます」
「うるさい! 最後に勝てば何の問題もないわ!」
それでもレイシャは諦めきれないらしく、続いてレイシャは何発もファイアーボールを発射してきます。圧倒的な魔力ですが、その攻撃は自棄になっているような感じを覚えます。
次々とファイアーボールが防御魔法に着弾して派手に爆発し、周りで戦っていた武将や兵士たちはそのたびに少しずつ遠ざかっていきます。
気が付くと、私の周囲には焦げた大地が広がっていました。
防御魔法を解くと、目の前で息をきらしているレイシャの姿が見えます。いきなりたくさんの魔力を使ったから疲れているのでしょう。
「ホーリー・ランス」
私は前回と同じように攻撃魔法を放ちます。すぐにレイシャも防御魔法を張りますが、光の槍とぶつかり合うと音を立てて割れていきました。
もっとも私の魔法もバリアにぶつかった衝撃で割れていきましたが、こちらの方がまだ余力があります。
「やはりあなたでは私には勝てませんよ」
今度は私が続けざまに光の槍を何発も発射しました。レイシャは必死に防御魔法を張っていきますが、魔力がきれかけているのかその強度はどんどん下がっていきます。
最初は私の魔法と相殺出来ていましたが、だんだんそれも出来なくなっていき、突破した光の槍がレイシャの体をかすめて衣服が破れ、かすり傷が増えていきます。
やがて何度目かの攻撃をかわそうとしたレイシャは足がもつれてその場に転んでしまいました。今なら私の魔法を避けることも防ぐことも出来ないでしょう。彼女が頼みにしていた魔法の杖もいつの間にか彼女の手元を離れて近くに転がっています。
私は最後の呪文を唱えようとします。
「さて、次で終わりです、ホーリー……」
その時でした。突然、絶対絶命のはずのレイシャがにやりと笑いました。
「覚悟!」
突然レイシャは懐からナイフを抜くと、こちらに投げつけてきます。ナイフはまっすぐに私の首筋を狙って飛んできました。
そのあまりの機敏な動作に私は反応することが出来ませんでした。ちょうど攻撃魔法を唱えようとしていたところ
だったので防御魔法も間に合いません。
もしかしてレイシャは私との再戦に備えて魔法ではなくこの一度の投擲だけをひたすらに練習していたのでしょうか。
もうだめだ、と思って私が眼をつぶろうとした時でした。
突然、カツン、という甲高い金属音とともにナイフが叩き落されます。
気が付くと、前の前には先ほどまでボルグと戦っていたはずのオーウェン様が立っていました。
「大丈夫だったか?」
「は、はい。おかげで。でもボルグと戦っていたのでは?」
「さっき片付けた」
そう言ってオーウェン様が指さした方を見ると、そこにはボルグが倒れていました。あの剣の腕だけには優れたボルグをあっという間に倒してしまうとは、やはりオーウェン様はお強い方です。
それを見たレイシャはちっ、と舌打ちします。
「本当に最後まで使えない王子だったわ」
「結局曲がったことをしようとすると、そういう人しか味方にならないということです」
私の言葉にレイシャは悔しそうに顔を歪めましたが、反論はしませんでした。
「悪いな」
オーウェン様は一言いうと、目にも留まらぬ速さでレイシャに近づくと、彼女の胸を一突きにします。あまりに鮮やかな一撃にレイシャは悲鳴も上げずにこときれました。
「これでようやく終わったな」
「は、はい。本当にありがとうございました」
見ると騎馬隊の隊長ももはやこれまでと思ったのか、残った騎兵をまとめて退却に移っています。
帝国軍は秘策であった鉄騎兵が敗れてもはや勝ち目なしと思ったのか、潮が引くように退却していくのでした。
こうして今度こそ私たちはボルグとレイシャを倒し、帝国に完全勝利したのです。
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