誰でも職業をもらえる世界で無職と言われた俺は「職業合成師」の力に覚醒する ~剣聖奴隷や王女メイドの最強ハーレムパーティーを作る~

今川幸乃

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因縁の再会と決着

帰還

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 ドラゴンが崩れると、俺たちはほっと息を吐く。
 元々リオナと魔物軍団であればドラゴンを倒すのも簡単だったところに俺が割り込んだせいで苦戦を強いられることになってしまった。

 そう考えると、やはりリオナと魔物軍団の力は絶大だったのだろう。
 だからこそ危険を冒してでも魔物を解き放って良かったと言えるかもしれないが。

「ピュア・ウォーター」

 ドラゴンが倒れると、フィリアが水属性の魔法で周囲の火を消していく。
 そこで俺ははっとする。

「リオナ?」

 周囲を見回すがリオナの姿はない。
 俺が持っている「奴隷」の数は減っているから、いくつかをリオナに与えることには成功したのは確かだ。
 しかし命令がうまくいく前に彼女は逃げてしまった。
 一応脳内で戻ってこい、と命令してみるが応答がある気配はない。

 とはいえ、もし公爵の支配が残っていれば彼女は俺たちに報復に出てくるはずだ。それがないということはうまくいったのだろうか?
 それとも両方の支配が混在して混乱してしまっているのだろうか?

「ドラゴン討伐おめでとうございます」

 リンが声をかけてくれるが、俺は浮かない表情のままだった。

「リオナさんのことが心配なのでしょうか?」

 ティアが心配そうに尋ねてくる。

「ああ、正直なことを言うと、あいつは因縁のある相手だったから、俺の手であいつを公爵の元から解き放つことが出来れば本当の意味であのときのことを乗り越えた気持ちになれると思ったんだが……みんなには関係ないよな」
「そうよ、過去は今更変えられないけど、今あなたが冒険者として、というか人として最強かもしれない力を持っているのは事実だし私たちのパーティーもとんとん拍子で迷宮を攻略しているのも確かよ」

 フィリアの言葉に俺は気を取り直す。
 そうだ、別にリオナ相手にトラウマを克服するようなことをわざわざしなくても、俺たちは今でも十分な強さを持っている。
 せっかくドラゴンを倒したのにリオナのことばかりに気を取られていれば今の仲間たちに失礼だ。

「すまないみんな。まずはドラゴン討伐おめでとう。みなの協力のおかげだ」
「お、おいお前たち、一体何をしてくれたんだ!?」

 それはそれとして、ドラゴンが倒されたからか、トロール使いの兵士がそう言って俺に詰め寄ってくる。

「ドラゴンは倒したんだからいいだろ?」
「ふざけるな! 公爵様の偉大な技術で作った魔物軍団を全部逃がしてしまうなんて!」
「いや、偉大な技術とかに不備があって野生に戻ったんじゃないか?」

 俺は白々しく言う。
 とはいえ、公爵の技術も俺の力もよく知られていないものだからこう言ったとしてもきちんと反論することは出来ないはずだ。

「そ、そんな訳は……」

 兵士は悔しそうな表情でそう言うが、それ以上の言葉は出てこないようだった。
 そこで俺はふと実験がてら彼に「奴隷」の職業を送りつけようとする。
 が、すぐに彼から拒絶されてしまった。
 これが自由に出来るようになればどんな人でも支配出来るようになるが、さすがにそこまでうまくはいかないか。

「おい、今何をしようとした!?」

 俺が何かしようとしたことは分かったのだろう、兵士は声を荒げる。

「別に何もしてない。気のせいだ」
「くそ、こんなことして無事で済むと思うなよ?」

 兵士は負け惜しみのように言う。

「公爵にでも言いつけるつもりか? それはやめといた方がいいぞ」
「なぜだ! 報復が怖いから適当なことを言っているんだろう」
「公爵のことだから、きっと任務に失敗したやつがおめおめと帰ってきたら改造魔物を作る実験の材料にでもしてしまうんじゃないか?」

 公爵の人間性は何も知らなかったが、話を聞く限りろくなやつだとは思えない。俺の推測は間違っていなかったのだろう、兵士の顔も青ざめていく。

「俺のことを言いつけて復讐するとか余計なことは考えず、適当にどこかに逃げて平和に暮らすんだな」
「くそ野郎!」

 そう言って兵士はどこかに走っていった。それを見て俺はため息をつく。

「良かったんですか?」

 リンが不安そうに尋ねる。

「まあ兵士があの脅しを本気にしてくれることを信じるしかないな。それに良くなかったとしてもあいつ自体は何も悪いことをしてないのに殺したり捕まえたりすることも出来ないだろう」

 そもそも俺たちから少し離れたところには改造魔物の戦いを見にきた冒険者たちがいる。その前でさすがに公爵の家臣に危害を加えることは出来ない。
 ちなみに彼らは何が起こったのかよく分からずに呆然としている。

「どうも公爵のやり方には問題があったようだ。きっとドラゴンに恐れをなして野生に戻ってしまったんだろう」
「は、はあ……」

 俺の言葉に彼らは納得はいっていないようだったが、どこかほっとしている。
 彼らからすれば自分たちが命をかけてダンジョンを探索しているのにその役目をぽっと出の、しかもおぞましい存在である魔物なんかに奪われるのは嫌だったのだろう。
 俺が何かをしたのは察しているようだったが、あえて追及してくる者はいなかった。

「よし、帰るか」

 こうして俺たちはダンジョンから帰ることにした。
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