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エピローグⅢ
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「レイノルズ侯爵家の者たちよ、よく来た」
王座の間に入ると、国王が上機嫌で私たちを出迎える。南西部の日照りの問題はレイノルズ家のような小さな家には関係ないことだったが、国王にとっては重大な問題である。元々は大規模な工事をしてよその川から大規模な用水路を造るということも検討していたらしく、それが急に解決して気が楽になったのだろう。
私たちは陛下の前まで来ると頭を下げる。
「おかげで長年に渡って我が国を悩ませた飢饉の問題は解決した。今年の収穫では無事作物が採れ、国庫も潤うだろう。その莫大な功績を鑑みておぬしに公爵位を与える」
「出すぎた申し出であったにも関わらず受け入れてくださりありがとうございます」
「いや、これはこのたびの働きに対する正当な報いだ。今後はより一層国のために励んでもらいたい」
「はい、もちろんでございます」
そして義父上はさらに前に進み出ると、国王から直々に一通の書状を受け取った。
「それからロルスよ、おぬしも公爵家の当主にふさわしい人物になるよう励むのだぞ」
「は、はい!」
国王に直接声をかけられるというこれまでであれば考えられないような状況にロルスは少し上ずった声で答える。
最後に国王は私に目を向けた。
「レイラも今後とも忠勤を励むがよい。それから、宮廷魔術師の職は慣例的にオールストン家の当主が就いてきたが、別にそれ以外の者、もしくは女性が就いていけないというものでもない。今後の働き次第では任命することもやぶさかではない」
「ありがとうございます」
それを聞いて周囲からどよめきが上がる。
わざわざ国王がここまで言うからには一般論と言うだけでなく、近いうちに私を宮廷魔術師にしたいという意向があるのだろう。
別に宮廷魔術師の地位がほしいという訳ではなかったが、私が宮廷魔術師になればレイノルズ家がいっそうの名誉を得られると思うとそれも悪くはない。
こうして私たちは玉座の間を出た。
「そうか、ついに僕は貧乏貴族の息子から公爵家の跡継ぎになったんだな」
玉座の間を出ると、ロルスがようやく実感がわいてきたようで、噛みしめるように言う。
「そうよ。これまでずっと周囲に馬鹿にされ続けてきたけど、今後は私たちが王国を引っ張っていく立場になる」
「本当にありがとう。レイラ、改めて今後も僕のことを助けてくれるか?」
ロルスが真剣な目で私を見つめる。
「もちろん、そうするに決まってる」
「公爵位が授与されたことよりも、レイラみたいにすごい魔法が使える人物が妻だということの方が実感がわかない」
「ロルス、それはこれからのお前の頑張り次第だ」
義父上が口を挟むと、ロルスは少し恥ずかしそうに頭をかく。
「確かにそうだな、僕は君にふさわしい人になれるよう頑張るよ」
「別に今がふさわしくないとかは全く思わないけど。父上がどれだけ嫌がらせをしてきても私を手放そうとはしなかったし。あんな風にしてくれる方は多分他にはいない。でも、そう思って頑張ってくれるなら私もおいていかれないよう頑張らないと」
「そうだな、これからお互い頑張ろう」
ここに来るまで色々あったが、私たちの人生という意味ではようやくスタートしたばかりだろう。
こうして私たちは改めてお互い頑張ることを約束したのだった。
王座の間に入ると、国王が上機嫌で私たちを出迎える。南西部の日照りの問題はレイノルズ家のような小さな家には関係ないことだったが、国王にとっては重大な問題である。元々は大規模な工事をしてよその川から大規模な用水路を造るということも検討していたらしく、それが急に解決して気が楽になったのだろう。
私たちは陛下の前まで来ると頭を下げる。
「おかげで長年に渡って我が国を悩ませた飢饉の問題は解決した。今年の収穫では無事作物が採れ、国庫も潤うだろう。その莫大な功績を鑑みておぬしに公爵位を与える」
「出すぎた申し出であったにも関わらず受け入れてくださりありがとうございます」
「いや、これはこのたびの働きに対する正当な報いだ。今後はより一層国のために励んでもらいたい」
「はい、もちろんでございます」
そして義父上はさらに前に進み出ると、国王から直々に一通の書状を受け取った。
「それからロルスよ、おぬしも公爵家の当主にふさわしい人物になるよう励むのだぞ」
「は、はい!」
国王に直接声をかけられるというこれまでであれば考えられないような状況にロルスは少し上ずった声で答える。
最後に国王は私に目を向けた。
「レイラも今後とも忠勤を励むがよい。それから、宮廷魔術師の職は慣例的にオールストン家の当主が就いてきたが、別にそれ以外の者、もしくは女性が就いていけないというものでもない。今後の働き次第では任命することもやぶさかではない」
「ありがとうございます」
それを聞いて周囲からどよめきが上がる。
わざわざ国王がここまで言うからには一般論と言うだけでなく、近いうちに私を宮廷魔術師にしたいという意向があるのだろう。
別に宮廷魔術師の地位がほしいという訳ではなかったが、私が宮廷魔術師になればレイノルズ家がいっそうの名誉を得られると思うとそれも悪くはない。
こうして私たちは玉座の間を出た。
「そうか、ついに僕は貧乏貴族の息子から公爵家の跡継ぎになったんだな」
玉座の間を出ると、ロルスがようやく実感がわいてきたようで、噛みしめるように言う。
「そうよ。これまでずっと周囲に馬鹿にされ続けてきたけど、今後は私たちが王国を引っ張っていく立場になる」
「本当にありがとう。レイラ、改めて今後も僕のことを助けてくれるか?」
ロルスが真剣な目で私を見つめる。
「もちろん、そうするに決まってる」
「公爵位が授与されたことよりも、レイラみたいにすごい魔法が使える人物が妻だということの方が実感がわかない」
「ロルス、それはこれからのお前の頑張り次第だ」
義父上が口を挟むと、ロルスは少し恥ずかしそうに頭をかく。
「確かにそうだな、僕は君にふさわしい人になれるよう頑張るよ」
「別に今がふさわしくないとかは全く思わないけど。父上がどれだけ嫌がらせをしてきても私を手放そうとはしなかったし。あんな風にしてくれる方は多分他にはいない。でも、そう思って頑張ってくれるなら私もおいていかれないよう頑張らないと」
「そうだな、これからお互い頑張ろう」
ここに来るまで色々あったが、私たちの人生という意味ではようやくスタートしたばかりだろう。
こうして私たちは改めてお互い頑張ることを約束したのだった。
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