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雨
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「さあ、雨を降らして!」
私は自分の周囲に召喚された十一体の精霊に向かって叫ぶ。精霊たちはいっせいに頷くと、体を動かし始める。最初は何かと思ったが、よく見ると地方で伝わる雨ごいの儀式の際の踊りと似ている。
先ほどまで私の魔力に驚いていた周囲の人々は、今度は精霊たちの舞に目を吸い寄せられる。精霊たちは全員が一糸乱れぬ舞を舞っているという訳ではなく、中には動作が遅れている者や違っている者もいたが、なぜか全体でその動きは統率がとれていた。十一体の精霊ではなくまるで全員で一つの生き物かのように。
多くの者たちは純粋にその美しさに見とれているだけだったが、父上だけは絶望と驚愕が入り交ざった表情で見つめている。父上は知識としてこのような舞で雨を降らせた事例を知っているのかもしれない。
そしてそんな舞が続いていくにつれ、次第に祈祷台に魔力が集まってくる。
さらに数分経つと、晴れ渡っていた空にどこからともなく黒雲が集まってきた。見る間に雲は空を覆い、まるで今が真夜中であったかのように辺りは暗くなる。
私が魔法を使うことを知らなかった者たちが何事か、と動揺して王宮内から外を見ているのが見える。
さらに時間が経つと、雨雲は南西の方角に流れていく。
それでも次から次へと雲は湧き上がり、移動しても移動してもなくなることはない。
やがて遠くから雷鳴が鳴り響くのが聞こえる。南西の地では今頃どしゃ降りになっていることだろう。そして中庭にもぽつぽつと雨が降り始めた。
それを見て見物していた国王や貴族たちは慌てて王宮内へと入っていく。私の周りには精霊の力によるものか、薄い膜のようなものが形成されていて雨に濡れることはない。
最後まで残っていたのは魔法を使っている私と、呆然とした表情の父上だけだった。
「い、一体どうしてお前にこんな魔法が使える……?」
父上は震える声で尋ねる。
「さあ、よくは分かりませんが、恐らく私は生まれつき他人より魔力が多かったのでしょう。父上はそれに気づかずに私に魔力が足りないと思い込んで魔力増進薬ばかり飲ませ、増えすぎた魔力は暴走を起こしていたのでは?」
「そんな、ということはわしよりも魔力が多かったというのか!?」
一般的に自分以下の魔力の持ち主であれば大体どれくらいの魔力を持っているかが分かる。
父上が私の魔力に気づいていなかったというのはそういうことなのだろう。
「そうかもしれませんね」
「まさか、そんなことがあったとは……」
そう言って父上は雨に濡れるのも構わずにその場に座り込むのだった。
その後父上は駆け付けた家臣によって引っ張られていくのを見つつ、私は一時間ほど魔法を使い続けたのだった。
私は自分の周囲に召喚された十一体の精霊に向かって叫ぶ。精霊たちはいっせいに頷くと、体を動かし始める。最初は何かと思ったが、よく見ると地方で伝わる雨ごいの儀式の際の踊りと似ている。
先ほどまで私の魔力に驚いていた周囲の人々は、今度は精霊たちの舞に目を吸い寄せられる。精霊たちは全員が一糸乱れぬ舞を舞っているという訳ではなく、中には動作が遅れている者や違っている者もいたが、なぜか全体でその動きは統率がとれていた。十一体の精霊ではなくまるで全員で一つの生き物かのように。
多くの者たちは純粋にその美しさに見とれているだけだったが、父上だけは絶望と驚愕が入り交ざった表情で見つめている。父上は知識としてこのような舞で雨を降らせた事例を知っているのかもしれない。
そしてそんな舞が続いていくにつれ、次第に祈祷台に魔力が集まってくる。
さらに数分経つと、晴れ渡っていた空にどこからともなく黒雲が集まってきた。見る間に雲は空を覆い、まるで今が真夜中であったかのように辺りは暗くなる。
私が魔法を使うことを知らなかった者たちが何事か、と動揺して王宮内から外を見ているのが見える。
さらに時間が経つと、雨雲は南西の方角に流れていく。
それでも次から次へと雲は湧き上がり、移動しても移動してもなくなることはない。
やがて遠くから雷鳴が鳴り響くのが聞こえる。南西の地では今頃どしゃ降りになっていることだろう。そして中庭にもぽつぽつと雨が降り始めた。
それを見て見物していた国王や貴族たちは慌てて王宮内へと入っていく。私の周りには精霊の力によるものか、薄い膜のようなものが形成されていて雨に濡れることはない。
最後まで残っていたのは魔法を使っている私と、呆然とした表情の父上だけだった。
「い、一体どうしてお前にこんな魔法が使える……?」
父上は震える声で尋ねる。
「さあ、よくは分かりませんが、恐らく私は生まれつき他人より魔力が多かったのでしょう。父上はそれに気づかずに私に魔力が足りないと思い込んで魔力増進薬ばかり飲ませ、増えすぎた魔力は暴走を起こしていたのでは?」
「そんな、ということはわしよりも魔力が多かったというのか!?」
一般的に自分以下の魔力の持ち主であれば大体どれくらいの魔力を持っているかが分かる。
父上が私の魔力に気づいていなかったというのはそういうことなのだろう。
「そうかもしれませんね」
「まさか、そんなことがあったとは……」
そう言って父上は雨に濡れるのも構わずにその場に座り込むのだった。
その後父上は駆け付けた家臣によって引っ張られていくのを見つつ、私は一時間ほど魔法を使い続けたのだった。
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