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父との再会

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 当日、国王に謁見する私だけでなく父上とロルスも正装して一緒に王宮に赴くことになった。表向きはただ「私が国のために魔法を使うために国王に謁見する」というだけだが、実際はこの国で誰が一番魔法の腕があるかという問題、そしてオールストン家が魔法の技術と宮廷魔術師の地位を独占する一強体制の是非にまで関係している。

 そのため、私たちはもちろんのこと、関係ない貴族たちもかなり注目していた。
 私たちが王宮に向かうと、王宮にいる貴族の数はいつもよりかなり多い。父上に睨まれるのを恐れて表立っては言えないが応援の目でこちらを見る者、様子見に徹する者、嫌悪の目で見てくる者まで様々であった。

 そこへレーヴェン公爵が現れる。
 彼は私たちよりも緊張した面持ちで話しかけてくる。

「今日は期待しています。オールストン家が魔法だけでなく権力まで独占しようとしていることに不満を抱く者は数多いです。みなレイラ様に期待していますよ」
「ここまで段取りしていただきありがとうございます」
「いえいえ、王国の問題が解決するかもしれないということで陛下も乗り気ですよ」
「はい」

 仮に私が魔法に失敗しても王国が損害を受けることはない。だから国王は父上が反対しようが、私に魔法を試させようとしているのだろう。

 が、不意に付近で雑談していた貴族たちがしんと静まり返る。
 何だ、と思うと人混みが割れた。そしてその向こうから父上が歩いてくる。

 相変わらず父上は逆らうことを許さない威厳に満ちているが、実家にいたときの印象と比べると随分恐怖はなくなった。あの時はもっと絶対的な存在に感じたが、今は「他人より少し魔力が高い人」という程度にしか思えない。

「レイラ、家を出てから好き勝手しているそうじゃないか」

 父上は私を見ると敵意に満ちた表情で言う。
 相変わらず私のことは物か玩具としか見ていないようだ。

「好き勝手しているのは父上じゃないですか。魔法が使えないと知れば他家に追い出し、魔法が使えるようになれば連れ戻そうとする。いくら父上が偉いからといって人を物のように扱うなんて許されることではありません」
「何だと!? わしは伝統あるオールストン家の当主にしてこの国の宮廷魔術師だ! 他の者がわしの命令を聞くのは当然だ!」

 地位と能力がある者が他者を支配する。
 それだけ聞くと乱暴ではあるが、貴族であれば誰しも領民を支配しているので正論ではある。私はそれでもやっていいことの限度があると思うが、父上はそうは思わないらしい。
 良心がない人に対して良心に訴えかけても無駄だろう。

「そうですか。でも父上が宮廷魔術師でいられるのは今日までですよ」
「何だと!?」
「だって宮廷魔術師の仕事は魔法で国を良くすることなのに、その権力で他家を潰そうとしてあまつさえ私に魔力で後れをとるならその地位にいる資格はないと思いますが」

「うるさい! お前のような小娘に雨を降らせるなどということが出来るか! お前こそ出来もしないことを出来ると吹聴し、他家を巻き込んで大騒ぎしたとなればただではすまないと分かってるのだろうな!?」
「分かっています。失敗すれば煮るなり焼くなり好きにしてください。ですがもし成功すれば父上の方こそ分かっていますよね?」

 私の言葉に父上は顔をしかめる。

「ふん、せいぜい今のうちに吠えておくことだ」

 が、やがてそう吐き捨てると踵を返して去っていくのだった。
 それを見て私はほっと一息つく。実家にいたころは逆らえずにいた父上に今回はちゃんと言いたいことを言うことが出来た。それが何よりうれしい。

「レイラ、格好良かった」
「ありがとうロルス」

 すると、ロルスの声に合わせるように周囲から拍手が聞こえてくる。今の言い合いを見て私に対して頑張ってほしいと思ってくれる貴族の人が増えたのかもしれない。
 彼らの気持ちにも応えるため、私は王座の間へ向かうのだった。
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