「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃

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いよいよ

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 薬が出来上がると、それを少量コップにそそぎ、口をつける。
 途端に体の中の魔力が沸騰するような感覚に襲われる。が、実家で飲んでいたときほどの不快感はなかった。これも私が魔力の扱いに慣れたからだろう。今回は数回深呼吸することで魔力を落ち着けることが出来た。

 そして体が落ち着くと、薬を飲む前よりも魔力が上がったような気がする。これを繰り返せば雨を降らせるほどの魔力を蓄えることも不可能ではないかもしれない。
 大鍋が冷めると、小分けにして日の当たらないところに保管する。嫌ではあるが、これから毎日薬を飲まなければならない。

 それから数日の間、私は薬を飲んでは魔法の練習をして、ということを繰り返した。そのたびに召喚できる精霊の数は少しずつ増えていく。

 しかし雨が降らせられるかどうかを試すことも出来ないので気を抜くことは出来なかった。水の精霊の力であれば大量の水を発生させることは出来るのでその力を使えば雨を降らすことも出来るはずだけど、聞いた感じかなり広範囲の土地に雨を降らせなければならないのだろう。

 一方、レイノルズ家への嫌がらせとレーヴェン公爵による支援の争いも激しさを増していった。これまでなじみのあった商人が急に姿を見せなくなったかと思えばすぐにレーヴェン公爵家の御用商人がやってくる、というようなことが毎日のように起こりロルスとレイノルズ侯爵は毎日大変そうだった。

「レーヴェン公爵様からの使者がきました!」

 そんなある日、ついに待ち焦がれた使者がやってくる。
 それを聞いて私とロルスとレイノルズ侯爵は応接間に勢ぞろいする。そこにやってきたのは前回もやってきた公爵の家臣であった。
「公爵様のお言葉が認められ、王宮ではレイラ様の魔法での雨ごいを試してみようということが決まりました」
「本当か!?」

 侯爵が喜びの声をあげる。
 だが家臣は浮かれていなかった。緊張した面持ちで言う。

「はい。オールストン公爵はそのようなことが出来るはずはないし、失敗すれば国の恥になるとしきりに反対しましたが、試してみるだけでも、とどうにか許可をいただいたようです」
「ありがたい」
「他にもオールストン家の露骨なやり方に反発を抱く者たちもおり、王宮内は一触即発の状況です。ですからもしこれで失敗すれば大変なことになるでしょう。大丈夫でしょうか?」

 そう言って家臣は確認するように私を見る。反発を押し切って私に魔法を使わせることを決めた以上、もし私が失敗すれば父上は私を許さないだろう。
 私は彼を信じさせるために力強く頷いた。

「大丈夫です」
「確かに、前回会った時よりも魔力が増しているような気がします。でしたら我らの命運はこのままレイラ様に託すことにしましょう」
「はい、お任せください」

 こうしてついに私は再び王宮の大舞台に戻ることになったのだった。
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