40 / 54
レーヴェン公爵Ⅳ
しおりを挟む
その後はレーヴェン公爵が用意した楽団や踊り手たちによる公演が行われる中、パーティーは続いた。が、パーティーそっちのけで、
「先ほどの魔法は素晴らしいものでした」
「今度機会があれば我が屋敷にも来ていただけないか」
などと声を掛けられる。
これまで参加してきたパーティーでも似たような反応は多かったが、今日はロルスやレイノルズ侯爵がいないせいか私に直接声をかけてくる方が多い。
私はそれぞれの方に出来るだけ丁寧に応対し、印象を良くしようとするのだった。
が、やがて時間が遅くなってくると酔った貴族たちは順に会場を出ていき、レーヴェン公爵が用意した宿泊部屋へと歩いていく。
そしてパーティーがお開きになると公爵が私の元に歩いてくる。
「おかげさまで本日は大いに盛り上がった」
「それは良かったわ」
「お疲れのところすまないが、娘を診察していただけないか?」
ある意味先ほどの余興などよりもこちらの方が重要な任務だ。
余興は成功しても何となく印象がよくなるだけだが、これに成功すれば公爵が味方になってくれるかもしれない。
「分かりました」
疲れたとはいえ、今日のパーティーでは私に話しかけてくる方は皆私に対して好意的だったのでそこまででもない。
「おお、ありがたい」
私はレーヴェン公爵に連れられて広間から離れた一室へ向かう。
ドアを開けると、そこにはベッドがあって一人の少女が寝かせられていた。すうすうと寝息を立てているが、ロウソクの灯りに照らされた顔は明らかに青白いし、頬はごっそりと痩せこけている。その上額には汗がにじんでおり、表情もどことなく苦しそうだ。
私と年齢が近そうなので、余計に痛ましさを覚える。
「彼女が私の娘のソフィだ。今は眠っているが、日に日に高熱を出し、体力は衰えて食事もほぼ喉を通らない」
「なるほど」
とはいえ、私は医学の知識はほとんどないので病状を説明されても全く分からない。
「サモン・ノーム」
そこで私は静かにノームを召喚する。
召喚されたノームは私の意図を理解したのか、横たわるソフィを見て部屋にある観葉植物の植木鉢に一本の草を生やす。葉っぱの形や茎の色合いが独特でこの辺りには生えてなさそうな植物だ。
「何だこの草は?」
見たこともない草に公爵は首を捻る。
が、ノームは私を見て一つ頷くとそのまま姿を消した。
「私も分かりませんが、おそらくこれが病気に効くのでしょう」
「おぬしの力を信じさせてもらうぞ」
公爵は緊張した面持ちで頷くと、すぐに薬師を呼ぶ。
呼び出された薬師は困惑しつつも、公爵の指示通りにノームが生やした薬草を煎じて粉薬にして持ってきた。
そして寝ているソフィの口元から薬を飲ませる。
当然飲んですぐに劇的な変化がある訳ではない。私は不安になったが、後はノームを信じることしか出来ない。
「ありがとう、今日はもう休んでくれ」
「分かりました。おやすみなさい」
あの薬草は本当に効くのだろうか。それがとても気になったが私に出来ることは何もない。
私は公爵家のメイドに案内されて客間へと向かい、翌日屋敷に帰るのだった。
「先ほどの魔法は素晴らしいものでした」
「今度機会があれば我が屋敷にも来ていただけないか」
などと声を掛けられる。
これまで参加してきたパーティーでも似たような反応は多かったが、今日はロルスやレイノルズ侯爵がいないせいか私に直接声をかけてくる方が多い。
私はそれぞれの方に出来るだけ丁寧に応対し、印象を良くしようとするのだった。
が、やがて時間が遅くなってくると酔った貴族たちは順に会場を出ていき、レーヴェン公爵が用意した宿泊部屋へと歩いていく。
そしてパーティーがお開きになると公爵が私の元に歩いてくる。
「おかげさまで本日は大いに盛り上がった」
「それは良かったわ」
「お疲れのところすまないが、娘を診察していただけないか?」
ある意味先ほどの余興などよりもこちらの方が重要な任務だ。
余興は成功しても何となく印象がよくなるだけだが、これに成功すれば公爵が味方になってくれるかもしれない。
「分かりました」
疲れたとはいえ、今日のパーティーでは私に話しかけてくる方は皆私に対して好意的だったのでそこまででもない。
「おお、ありがたい」
私はレーヴェン公爵に連れられて広間から離れた一室へ向かう。
ドアを開けると、そこにはベッドがあって一人の少女が寝かせられていた。すうすうと寝息を立てているが、ロウソクの灯りに照らされた顔は明らかに青白いし、頬はごっそりと痩せこけている。その上額には汗がにじんでおり、表情もどことなく苦しそうだ。
私と年齢が近そうなので、余計に痛ましさを覚える。
「彼女が私の娘のソフィだ。今は眠っているが、日に日に高熱を出し、体力は衰えて食事もほぼ喉を通らない」
「なるほど」
とはいえ、私は医学の知識はほとんどないので病状を説明されても全く分からない。
「サモン・ノーム」
そこで私は静かにノームを召喚する。
召喚されたノームは私の意図を理解したのか、横たわるソフィを見て部屋にある観葉植物の植木鉢に一本の草を生やす。葉っぱの形や茎の色合いが独特でこの辺りには生えてなさそうな植物だ。
「何だこの草は?」
見たこともない草に公爵は首を捻る。
が、ノームは私を見て一つ頷くとそのまま姿を消した。
「私も分かりませんが、おそらくこれが病気に効くのでしょう」
「おぬしの力を信じさせてもらうぞ」
公爵は緊張した面持ちで頷くと、すぐに薬師を呼ぶ。
呼び出された薬師は困惑しつつも、公爵の指示通りにノームが生やした薬草を煎じて粉薬にして持ってきた。
そして寝ているソフィの口元から薬を飲ませる。
当然飲んですぐに劇的な変化がある訳ではない。私は不安になったが、後はノームを信じることしか出来ない。
「ありがとう、今日はもう休んでくれ」
「分かりました。おやすみなさい」
あの薬草は本当に効くのだろうか。それがとても気になったが私に出来ることは何もない。
私は公爵家のメイドに案内されて客間へと向かい、翌日屋敷に帰るのだった。
78
お気に入りに追加
4,775
あなたにおすすめの小説

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜
八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」
侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。
その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。
フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。
そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。
そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。
死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて……
※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる