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パーティーⅥ
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私が会場に戻ると、そこには興奮した表情のレイノルズ侯爵とロルスの姿があった。
「今のは凄かったな」
「ああ、皆盛り上がってる」
舞台では次の演武の準備にとりかかっているが、まだ準備中ということもあって周囲は今の魔術に対する感想をつぶやく貴族たちで溢れている。
「良かった、もしうまくいかなかったらずっと白い目で見られたままなんじゃないかって不安だったの」
「確かに、わしもあまり詳しくなかったのが悪かったが、こういうところでは観客受けする魔術の鉄板のようなものがあるらしいな」
「そう、それが分からなくて直前のベラの魔法に被せるようにしてしまったけど大丈夫だったでしょうか?」
そう、仮に魔術の出来自体が良くてもこういう社会では「わざわざ他の相手と内容を被せて自慢するようなことをするのはいかがなものか」と言われることもある。実際、今の私は彼女を負かすためにやったから、力をひけらかそうとしたのは間違いではないし。
が、私の不安にレイノルズ侯爵は首を横に振った。
「いや、そんなことはない。大体の貴族は今回の件の細かいことまで知らないからな、勝手にブランドをベラが奪ったのでレイラが意趣返しをした、と思っているみたいだ」
「なるほど」
確かに時系列だけ追っていくとそう見えるのも無理はない。というかベラ本人もそう思っていたようだし。
「もちろんベラと親しい者の中には眉を顰める者もいるし、いきなり魔法が使えるようになったのはおかしい、と思っている者も多いがあまり悪意を持っていそうな者はいなかったよ」
「ありがとう」
ロルスの言葉に私は安堵した。
すると私が戻ってきたのを見て、周囲の貴族の何人かがこちらにやってくる。
「今の魔術は凄かった!」
「ベラにブランドをとられて練習を頑張ったのか? 圧巻だった!」
「魔法が使えないという噂は何かの間違えだったんだな!?」
彼らはそれぞれ若干誤解しているようだったが、皆私を祝福してくれているようだった。そういうことならいちいち誤解を訂正するほどでもないか、と思う。
「ありがとうございます。これまで力を発揮することが出来なかったのは未熟だったからですが、この大舞台で恥ずかしくない魔法を披露することが出来て良かったです」
「おお、さすがオールストン公爵の娘」
「ブランド君ももったいないことをしてしまったなあ」
そんな私の言葉に貴族たちは無邪気に賞賛の言葉をかけてくれる。中には、
「侯爵も思わぬ良縁に巡り合うことが出来ましたな」
「ロルス殿も良かったですね」
などと侯爵やロルスに声をかけてくれる者もいる。つい先日までは「オールストン公爵家の出来損ないの押し付け先などと言われていたのにこの変わりように二人も驚いていたが、やがて慣れてきたのか普通に応答するようになったのだった。
そして私たちは次の演武が始まるまでの間、周囲の祝福を受けたのだった。そしてそんな私たちを遠目に悔し気に見つめているブランドの姿を見つけるのだった。
「今のは凄かったな」
「ああ、皆盛り上がってる」
舞台では次の演武の準備にとりかかっているが、まだ準備中ということもあって周囲は今の魔術に対する感想をつぶやく貴族たちで溢れている。
「良かった、もしうまくいかなかったらずっと白い目で見られたままなんじゃないかって不安だったの」
「確かに、わしもあまり詳しくなかったのが悪かったが、こういうところでは観客受けする魔術の鉄板のようなものがあるらしいな」
「そう、それが分からなくて直前のベラの魔法に被せるようにしてしまったけど大丈夫だったでしょうか?」
そう、仮に魔術の出来自体が良くてもこういう社会では「わざわざ他の相手と内容を被せて自慢するようなことをするのはいかがなものか」と言われることもある。実際、今の私は彼女を負かすためにやったから、力をひけらかそうとしたのは間違いではないし。
が、私の不安にレイノルズ侯爵は首を横に振った。
「いや、そんなことはない。大体の貴族は今回の件の細かいことまで知らないからな、勝手にブランドをベラが奪ったのでレイラが意趣返しをした、と思っているみたいだ」
「なるほど」
確かに時系列だけ追っていくとそう見えるのも無理はない。というかベラ本人もそう思っていたようだし。
「もちろんベラと親しい者の中には眉を顰める者もいるし、いきなり魔法が使えるようになったのはおかしい、と思っている者も多いがあまり悪意を持っていそうな者はいなかったよ」
「ありがとう」
ロルスの言葉に私は安堵した。
すると私が戻ってきたのを見て、周囲の貴族の何人かがこちらにやってくる。
「今の魔術は凄かった!」
「ベラにブランドをとられて練習を頑張ったのか? 圧巻だった!」
「魔法が使えないという噂は何かの間違えだったんだな!?」
彼らはそれぞれ若干誤解しているようだったが、皆私を祝福してくれているようだった。そういうことならいちいち誤解を訂正するほどでもないか、と思う。
「ありがとうございます。これまで力を発揮することが出来なかったのは未熟だったからですが、この大舞台で恥ずかしくない魔法を披露することが出来て良かったです」
「おお、さすがオールストン公爵の娘」
「ブランド君ももったいないことをしてしまったなあ」
そんな私の言葉に貴族たちは無邪気に賞賛の言葉をかけてくれる。中には、
「侯爵も思わぬ良縁に巡り合うことが出来ましたな」
「ロルス殿も良かったですね」
などと侯爵やロルスに声をかけてくれる者もいる。つい先日までは「オールストン公爵家の出来損ないの押し付け先などと言われていたのにこの変わりように二人も驚いていたが、やがて慣れてきたのか普通に応答するようになったのだった。
そして私たちは次の演武が始まるまでの間、周囲の祝福を受けたのだった。そしてそんな私たちを遠目に悔し気に見つめているブランドの姿を見つけるのだった。
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