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団欒Ⅱ

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 が、私の心配に反してレイノルズ一家の反応は好意的だった。

「そうか、そんなことがあったのか。そうと知らずにすまなかった」

 まずはレイノルズ侯爵が同情と後悔の視線をこちらに向けてくる。

「今の話を聞いて申し訳なくなった。君が怠惰で魔法が使えるようにならないという噂を聞いていたけど、そうではなかったんだな。というか、思い返してみると僕の方こそどうせ貧乏貴族だからって大して頑張らなくてもいいと甘えていたところがあったかもしれない」

 レイノルズもそんなことを言う。

「公爵家に生まれたと聞いて楽な暮らしをしていたのかと思っていたけどそうではなかったのね」
「というかブランドというのは大層酷い人物だわ」

 他の人々も口々に私への同情を口にする。
 少しの間私は目の前に広がる光景を信じることが出来なかった。実家ではもし自分の境遇が辛いなどと言えば、「怠けている癖にそんなことを言うな」「そう思うならさっさと魔法の一つでも使えるようになれ」などと言われて終わりだっただろう。

 もちろん今は魔法が使えるようになってはいるが、仮にそうでなくてもここでは私の境遇に対して同情してくれそうな気がした。

「おい、大丈夫か、泣いているぞ!」
「え!?」

 侯爵の言葉で私はようやく自分が涙を流していることに気づく。
 どうやら話に熱が入りすぎて昔のことを思い出し、知らないうちに目から涙がこぼれていたようだ。全く気付かなかったが、気づくととても恥ずかしい。

「すみません、こんな場で……」
「いや、いいんだ。それなら今度は僕の話でも聞いてくれないか?」
「おい、彼女が悲しんでいる時にまた暗い話をする気か?」

 話題を変えようとしてくれたロルスに侯爵が苦言を呈する。とはいえ、ロルスの話は聞いてみたかった。何せ私はここに来てからまだまともに彼の話を聞いてはいないのだ。

「いえ、私はロルスの話を聞いてみたい」
「いいのか? 父上の言う通り、あまり愉快な話ではないが」
「いいの。これから一緒に暮らすんだから」
「ありがとう。それなら聞いてくれ」

 そう言ってロルスは話を始める。
 ロルスの話はある意味私と逆で、周囲に全く期待されずに育ってきたらしい。幼少期は武術や学問に精を出していた彼だったが、周囲の大人たちはロルスがいくら頑張っても、「所詮貧乏貴族」と取り合わなかったらしい。

 そしてその話を聞きながら渋い顔をしている侯爵もそんなロルスにあまり関心がなかったのかもしれない。
 また、ロルスの話の中にはマロード侯爵を含む数人の貴族に馬鹿にされたり辱めを受けたりしたエピソードもあった。

「……まあ僕のこれまでの人生のことだから無限に語れることはあるからとりあえずここまでにしておくよ。ただ一つだけ覚えておいて欲しいのは僕が初日に君に冷たい態度をとったのは、これまで見下され続けた上にオールストン家という名門貴族から僕を厄介払い先みたいに扱われたのが頭に来ていたからなんだ」
「うん、分かった」

 父上とロルスは今の話を聞いた限りでは婚姻話が出るまでは接点がなかったようだが、きっと彼は幼いころからのトラウマのせいで名門貴族というだけでアレルギーのようなものがあるのだろう。
 こうしてお互いの話が終わるころにはすっかり夜も更けていたのだった。
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