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来客Ⅲ
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「サモン・イフリート」
私はマロード侯爵やお抱えの魔術師に見えるように目の前で魔法を使う。
ちなみにイフリートというのはサラマンダーよりもさらに上位の炎の精霊だ。私が呪文を唱えた瞬間一瞬彼らは驚くが、すぐに、
「落ちこぼれ魔術師の癖にイフリートを召喚しようだと? 戯けたことを」
「侯爵閣下、この私でもイフリートは無理でございます。恐らく適当に別の精霊を召喚して我らを騙そうとしているのでしょう」
などと疑いの眼差しに変わる。
とはいえ、いくら言われようが、本物を召喚すれば済むことだ。
すぐに私の前に炎の魔力が集まり、やがてその中からイフリートが顕現する。
室内ということもあって大きさをセーブしておりサラマンダーと見た目はそこまで変わらないが、サラマンダーは小人なのに対しイフリートは巨人のような貫禄がある。そして何より、身に纏う炎の魔力の濃さは段違いだ。
偽者でごまかすとか言っていた魔術師もその姿を見て一目で表情を変える。恐らく魔術にそこまで詳しくなさそうなマロード侯爵もイフリートの姿を見ただけでまずいと思ったのだろう、
「お、おい、これは本当に偽者なのか!?」
動揺した表情で傍らの魔術師に尋ねるが、彼は蒼い顔で首を横に振る。
「い、いえ、これは紛れもなく本物に見えますが……」
「何だと!? お前はまさか落ちこぼれに負けたというのか!?」
「も、申し訳ございません……」
魔術師は頭を下げる。
それを見てようやくマロード侯爵も私がただならぬ実力を持っているということを理解したのか、額からは汗がだらだらと流れてくる。
「く、くそ……これは一体どういうことなんだ!?」
そう叫ぶが、その場に答える者は誰もいない。
ここでロルスあたりが「無能はあなたの方だったのです」みたいな格好いい台詞を言ってくれれば良かったのだろうが、ロルスもレイノルズ侯爵も私のイフリートを見てぽかんとしていた。
彼らも私の正確な実力は知らなかっただろうし、仮に知っていたとしてもこんなところでマロード侯爵にわざわざ喧嘩を売るとは思っていなかったのだろう。
仕方がないので私がマロード侯爵に止めを刺すことにする。
「ところで落ちこぼれとか無能とか言われた私はこれぐらいの魔法を使えるのですが、あなたはきっとこれよりもすごい魔法を使えるのですよね?」
「おい!」
マロード侯爵はそう言ってすがるような目で隣の魔術師を見るが、彼は蒼い顔で首を横に振るばかりだった。
それを見て彼はしばらく困っていたが、やがて諦めたように立ち上がる。
「くそ! 用を思い出した、わしはもう帰る!」
そう言って彼は供の者を連れて逃げるように屋敷を出ていくのであった。
私はマロード侯爵やお抱えの魔術師に見えるように目の前で魔法を使う。
ちなみにイフリートというのはサラマンダーよりもさらに上位の炎の精霊だ。私が呪文を唱えた瞬間一瞬彼らは驚くが、すぐに、
「落ちこぼれ魔術師の癖にイフリートを召喚しようだと? 戯けたことを」
「侯爵閣下、この私でもイフリートは無理でございます。恐らく適当に別の精霊を召喚して我らを騙そうとしているのでしょう」
などと疑いの眼差しに変わる。
とはいえ、いくら言われようが、本物を召喚すれば済むことだ。
すぐに私の前に炎の魔力が集まり、やがてその中からイフリートが顕現する。
室内ということもあって大きさをセーブしておりサラマンダーと見た目はそこまで変わらないが、サラマンダーは小人なのに対しイフリートは巨人のような貫禄がある。そして何より、身に纏う炎の魔力の濃さは段違いだ。
偽者でごまかすとか言っていた魔術師もその姿を見て一目で表情を変える。恐らく魔術にそこまで詳しくなさそうなマロード侯爵もイフリートの姿を見ただけでまずいと思ったのだろう、
「お、おい、これは本当に偽者なのか!?」
動揺した表情で傍らの魔術師に尋ねるが、彼は蒼い顔で首を横に振る。
「い、いえ、これは紛れもなく本物に見えますが……」
「何だと!? お前はまさか落ちこぼれに負けたというのか!?」
「も、申し訳ございません……」
魔術師は頭を下げる。
それを見てようやくマロード侯爵も私がただならぬ実力を持っているということを理解したのか、額からは汗がだらだらと流れてくる。
「く、くそ……これは一体どういうことなんだ!?」
そう叫ぶが、その場に答える者は誰もいない。
ここでロルスあたりが「無能はあなたの方だったのです」みたいな格好いい台詞を言ってくれれば良かったのだろうが、ロルスもレイノルズ侯爵も私のイフリートを見てぽかんとしていた。
彼らも私の正確な実力は知らなかっただろうし、仮に知っていたとしてもこんなところでマロード侯爵にわざわざ喧嘩を売るとは思っていなかったのだろう。
仕方がないので私がマロード侯爵に止めを刺すことにする。
「ところで落ちこぼれとか無能とか言われた私はこれぐらいの魔法を使えるのですが、あなたはきっとこれよりもすごい魔法を使えるのですよね?」
「おい!」
マロード侯爵はそう言ってすがるような目で隣の魔術師を見るが、彼は蒼い顔で首を横に振るばかりだった。
それを見て彼はしばらく困っていたが、やがて諦めたように立ち上がる。
「くそ! 用を思い出した、わしはもう帰る!」
そう言って彼は供の者を連れて逃げるように屋敷を出ていくのであった。
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