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ダークドワーフのオルギム
別れ
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「おお、まさか本当にゴルゴールを倒してしまうとは……」
目の前に横たわるゴルゴールの死体を見て、オルギムは目を見張った。
「やはり武闘派の相手は何が起こるか分からないから怖かったな」
「あまりそうは見えないが」
オルギムには俺が余裕そうにしているように見えるらしい。俺自身は常にゴルゴールの攻撃に当たってしまうのではないかと恐れていたのだが。
「何にせよゴルゴールさえ倒せばさすがの魔族も諦めるだろう」
「そうだな」
ふと街の方を見ると、ミリアの魔法はいつの間にかやみ、代わりに山の方から戦いの音が聞こえてくる。ゴルゴールの部下たちは遠距離魔法を突破して、ミリアとマキナの元に辿り着くことが出来たらしい。
しかしゴルゴールが倒れたのを見て(巨体すぎて遠くからでもしっかりその様子は見えたのだろう)、彼らは一斉に逃亡を始めた。
「よし、合流しよう」
俺はダークドワーフたちを連れて二人がいる山頂を目指す。そこに立っていたのは両手を変異させて返り血まみれになったマキナと、魔力の使い過ぎで疲れ果てているミリアであった。幸い、二人とも返り血以外に外傷はなさそうだった。
「二人とも、大丈夫だったか?」
「ああ、久しぶりに本気を出すことが出来て悪くなかった」
マキナはそう言って不敵に笑う。確かに王宮に攻め込んだ時はマキナは魔王の力を完全に封じて戦ったためにフラストレーションがあったのかもしれない。
「マキナさんが守ってくれたので、私も疲れてはいますが大丈夫です。アルスさんこそゴルゴールと戦ったのに大丈夫でしたか?」
「ああ、攻撃は全く喰らっていない。人質も無事だ」
そう言って俺は後ろからついてきたダークドワーフたちを指す。それを見てミリアとマキナはほっと息を吐いた。
下の街を見ても生き残りのオーガたちはゴルゴールの死体の周りに集まってどこかに運んでおり、反撃に出る様子はない。こうして救出作戦は成功に終わった。
俺にとってはこれでほぼ仕事は終わったと言えるのだが、助けられたダークドワーフたちにとってはこれは始まりに過ぎないとも言える。
「さて、無事救出したところで今後の件なんだが……」
それから、俺たちは救出したダークドワーフたちにこれまでの経緯を話す。特に最初に捕まったダークドワーフたちはあまり事情を把握していなかったようで、これまでの顛末を聞いて目を白黒させた。
彼らも新しくやってきたダークドワーフたちから話は聞いていたが、しっかり話を整理して聞くのは初めてだったらしい。特にダークドワーフたちが三派に分かれたことに対しては目を白黒させていた。
「……と言う訳だ」
「そんなことになっていたとは。何にせよ、助けていただいて本当にありがとうございます」
「人間領にも人があまりいない鉱山のようなところがあれば、そこに住まわせていただきたいです」
一人の若者が言う。それを聞くとミリアが頷く。
「はい、山奥の方であればそういうところもありますし、問題が起こらないよう私から国に伝えておきます」
「ならばそうさせていただこう」
そう言って何人かのダークドワーフたちが頷く。特にオルギムと一緒に逃げようとていた者たちのほとんどは頷いた。
が、残りの数人は少し申し訳なさそうに口を開く。
「申し訳ないが、我らは戻らせていただきたい」
「ゴルゴールが死んで脅威が薄れたというのもあるが、残っている者たちを放ってはおけない」
「わしはむしろ皆とともに魔族に一矢報いたい!」
彼らはいわゆる独立派の者たちだったのだろう、今回の魔族の所業への恨みや長年住んできた地への愛着があるに違いない。
それなら俺としてはその意志を優先して欲しい。
「そうか、それならここでお別れだな。お元気で」
「ああ、このご恩はいつか人間が魔族と戦う時に返させてもらおう」
居残り派のダークドワーフたちはそう言って俺に頭を下げる。ゴルゴールを倒した今すぐにということはないだろうが、今後魔族と全面対決するときはやってくるかもしれない。その時に彼らが味方してくれるのであれば俺としても心強い。
「ああ、その時はよろしく頼む」
「ではお元気で」
そう言って俺たちは別れたのだった。
目の前に横たわるゴルゴールの死体を見て、オルギムは目を見張った。
「やはり武闘派の相手は何が起こるか分からないから怖かったな」
「あまりそうは見えないが」
オルギムには俺が余裕そうにしているように見えるらしい。俺自身は常にゴルゴールの攻撃に当たってしまうのではないかと恐れていたのだが。
「何にせよゴルゴールさえ倒せばさすがの魔族も諦めるだろう」
「そうだな」
ふと街の方を見ると、ミリアの魔法はいつの間にかやみ、代わりに山の方から戦いの音が聞こえてくる。ゴルゴールの部下たちは遠距離魔法を突破して、ミリアとマキナの元に辿り着くことが出来たらしい。
しかしゴルゴールが倒れたのを見て(巨体すぎて遠くからでもしっかりその様子は見えたのだろう)、彼らは一斉に逃亡を始めた。
「よし、合流しよう」
俺はダークドワーフたちを連れて二人がいる山頂を目指す。そこに立っていたのは両手を変異させて返り血まみれになったマキナと、魔力の使い過ぎで疲れ果てているミリアであった。幸い、二人とも返り血以外に外傷はなさそうだった。
「二人とも、大丈夫だったか?」
「ああ、久しぶりに本気を出すことが出来て悪くなかった」
マキナはそう言って不敵に笑う。確かに王宮に攻め込んだ時はマキナは魔王の力を完全に封じて戦ったためにフラストレーションがあったのかもしれない。
「マキナさんが守ってくれたので、私も疲れてはいますが大丈夫です。アルスさんこそゴルゴールと戦ったのに大丈夫でしたか?」
「ああ、攻撃は全く喰らっていない。人質も無事だ」
そう言って俺は後ろからついてきたダークドワーフたちを指す。それを見てミリアとマキナはほっと息を吐いた。
下の街を見ても生き残りのオーガたちはゴルゴールの死体の周りに集まってどこかに運んでおり、反撃に出る様子はない。こうして救出作戦は成功に終わった。
俺にとってはこれでほぼ仕事は終わったと言えるのだが、助けられたダークドワーフたちにとってはこれは始まりに過ぎないとも言える。
「さて、無事救出したところで今後の件なんだが……」
それから、俺たちは救出したダークドワーフたちにこれまでの経緯を話す。特に最初に捕まったダークドワーフたちはあまり事情を把握していなかったようで、これまでの顛末を聞いて目を白黒させた。
彼らも新しくやってきたダークドワーフたちから話は聞いていたが、しっかり話を整理して聞くのは初めてだったらしい。特にダークドワーフたちが三派に分かれたことに対しては目を白黒させていた。
「……と言う訳だ」
「そんなことになっていたとは。何にせよ、助けていただいて本当にありがとうございます」
「人間領にも人があまりいない鉱山のようなところがあれば、そこに住まわせていただきたいです」
一人の若者が言う。それを聞くとミリアが頷く。
「はい、山奥の方であればそういうところもありますし、問題が起こらないよう私から国に伝えておきます」
「ならばそうさせていただこう」
そう言って何人かのダークドワーフたちが頷く。特にオルギムと一緒に逃げようとていた者たちのほとんどは頷いた。
が、残りの数人は少し申し訳なさそうに口を開く。
「申し訳ないが、我らは戻らせていただきたい」
「ゴルゴールが死んで脅威が薄れたというのもあるが、残っている者たちを放ってはおけない」
「わしはむしろ皆とともに魔族に一矢報いたい!」
彼らはいわゆる独立派の者たちだったのだろう、今回の魔族の所業への恨みや長年住んできた地への愛着があるに違いない。
それなら俺としてはその意志を優先して欲しい。
「そうか、それならここでお別れだな。お元気で」
「ああ、このご恩はいつか人間が魔族と戦う時に返させてもらおう」
居残り派のダークドワーフたちはそう言って俺に頭を下げる。ゴルゴールを倒した今すぐにということはないだろうが、今後魔族と全面対決するときはやってくるかもしれない。その時に彼らが味方してくれるのであれば俺としても心強い。
「ああ、その時はよろしく頼む」
「ではお元気で」
そう言って俺たちは別れたのだった。
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