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ダークドワーフのオルギム
ダークドワーフ
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その後俺はマキナとともにオルギムを連れて家に向かった。オルギムは俺たちが王国の外の山奥に住んでいるのを見て怪訝な表情をする。
「なぜあなた方はこのようなところに住んでいるのか?」
「まあ色々あるんだが、一言で言うと王国にいると人間関係が面倒だからだな」
「そうか? とはいえまあ我らも身内だけで山に引きこもっているし似たようなものか」
オルギムは勝手に納得してくれる。そして家が見えてくると、家の周囲にある畑と牧場を見て感心する。
「山奥なのにここまで立派な畑と牧場を造るなんてすごいな」
「ありがとう。ドワーフはそういうのはないのか?」
「そうだな。大体我らの食糧は魔族との交易と、山中での狩だけで賄われている」
そんなことを話しつつ俺たちは家の中へと入る。俺はあまりうまくないなりにお茶を淹れてオルギムに出した。
「ゴルゴールに連れていかれた人質がどこにいるか分かるか?」
「ゴルゴールは我らの山脈の近くのドグラという町に城を築いてそこから圧力をかけてきている。おそらくその中にいるはずだ」
「それなら話は早い。色々考えたが、今回の件を解決するにはゴルゴールを倒して人質を救出してしまうのが一番だろう」
「そんなことが出来るのか?」
もし魔王の城とかに連れていかれていれば面倒だったので俺は少し安堵した。が、俺の言葉にオルギムは首をかしげる。
「もちろん絶対に倒せるとは言えない。だが、俺は四天王の一人ガウゼルを倒したこともある」
「何と、あのガウゼルを!?」
それを聞いてオルギムの表情が変わる。
普通の人々(人ではないが)に比べれば魔王軍四天王と言えば雲の上の存在だろう。
「魔王軍全員が集結しているならともかく、話を聞く限りゴルゴールは自身の軍勢のみとドグラにいるのだろう? それなら俺たちが力を合わせれば勝機はあるはずだ」
「なるほど」
俺の言葉にオルギムは頷く。
「ただ、この案には大きな問題がある。仮に人質救出に成功すれば、魔王軍はダークドワーフたちに対して報復に出る可能性があるということだ」
「それはそうだ」
俺の言葉にオルギムの表情は曇る。
「そしてそうなった場合、人間も我らを助けてくれるかどうかは分からないということか」
「そうだな。時期にもよるが、王国の混乱が収まっていなければ厳しいだろう」
「結局、わしらがとれる選択は少ないな。魔族に膝を屈するか、全滅覚悟で抵抗するか、もしくはどこかに集落を移すか」
オルギムの言葉に気まずい沈黙が漂う。
「ちなみにだが、オルギムはダークドワーフが人間の王国に移住する可能性はあると思うか?」
「逆に訊くが、人間はそれを受け入れるのか?」
「どうだろうな」
俺は少し首を捻る。とりあえず賢者の石の結界は魔族にしか効かないため、ダークドワーフに効くことはない。問題は人間や王国にわずかに住むドワーフたちが彼らをどう思うかだが、正直予想はつかなかった。というのもダークドワーフの数が少なすぎて、そもそも認知されていないからだ。
「分からない。そもそもダークドワーフの存在自体、そこまで認知されていないからな。だが、それは逆に言えば第一印象でどうにでもなるということでもある。例えば魔族が攻めてきた時に共闘して力を発揮するとかな」
「なるほど。予想だが、ダークドワーフたちの意見は割れるだろう。魔族や人間に膝を屈するぐらいなら今まで生きてきた集落に立てこもって最後まで戦うという者はいるだろうし、逆にそこまでするぐらいなら魔族に膝を屈するとか人間領に逃げるという者もいるだろう。何にせよ、議論の時間が限られている以上きちんとまとめるのは難しいだろうな」
オルギムは少し暗い表情で言った。
「分かった。それなら一度戻って相談してみるか? 一応俺としては魔族に降伏することだけはやめて欲しいから、それ以外の選択をとるなら出来る限りサポートしよう」
「ありがとう。出来る限りおぬしの気持ちに答えられるようにしようと思う」
そう言ってオルギムは家を出た。来たばかりなのに慌ただしいが、時間が限られている以上仕方がない。
「いいのか? 場合によっては彼らが皆魔族に降ることになるが」
マキナが不安そうに言う。
「とはいえ、彼らが抵抗や移住を選んだとしても人間が全面協力する、と断言出来ない以上こちらから無理強いは出来ない。とはいえ一応王国にもこのことは伝えておくか。せめて移住の可否だけでも確認しておきたい」
彼らの移住を国として受け入れる意思があれば、少しはいい結論になりやすくなるかもしれない。そう思いつつ俺は手紙を書くのだった。
「なぜあなた方はこのようなところに住んでいるのか?」
「まあ色々あるんだが、一言で言うと王国にいると人間関係が面倒だからだな」
「そうか? とはいえまあ我らも身内だけで山に引きこもっているし似たようなものか」
オルギムは勝手に納得してくれる。そして家が見えてくると、家の周囲にある畑と牧場を見て感心する。
「山奥なのにここまで立派な畑と牧場を造るなんてすごいな」
「ありがとう。ドワーフはそういうのはないのか?」
「そうだな。大体我らの食糧は魔族との交易と、山中での狩だけで賄われている」
そんなことを話しつつ俺たちは家の中へと入る。俺はあまりうまくないなりにお茶を淹れてオルギムに出した。
「ゴルゴールに連れていかれた人質がどこにいるか分かるか?」
「ゴルゴールは我らの山脈の近くのドグラという町に城を築いてそこから圧力をかけてきている。おそらくその中にいるはずだ」
「それなら話は早い。色々考えたが、今回の件を解決するにはゴルゴールを倒して人質を救出してしまうのが一番だろう」
「そんなことが出来るのか?」
もし魔王の城とかに連れていかれていれば面倒だったので俺は少し安堵した。が、俺の言葉にオルギムは首をかしげる。
「もちろん絶対に倒せるとは言えない。だが、俺は四天王の一人ガウゼルを倒したこともある」
「何と、あのガウゼルを!?」
それを聞いてオルギムの表情が変わる。
普通の人々(人ではないが)に比べれば魔王軍四天王と言えば雲の上の存在だろう。
「魔王軍全員が集結しているならともかく、話を聞く限りゴルゴールは自身の軍勢のみとドグラにいるのだろう? それなら俺たちが力を合わせれば勝機はあるはずだ」
「なるほど」
俺の言葉にオルギムは頷く。
「ただ、この案には大きな問題がある。仮に人質救出に成功すれば、魔王軍はダークドワーフたちに対して報復に出る可能性があるということだ」
「それはそうだ」
俺の言葉にオルギムの表情は曇る。
「そしてそうなった場合、人間も我らを助けてくれるかどうかは分からないということか」
「そうだな。時期にもよるが、王国の混乱が収まっていなければ厳しいだろう」
「結局、わしらがとれる選択は少ないな。魔族に膝を屈するか、全滅覚悟で抵抗するか、もしくはどこかに集落を移すか」
オルギムの言葉に気まずい沈黙が漂う。
「ちなみにだが、オルギムはダークドワーフが人間の王国に移住する可能性はあると思うか?」
「逆に訊くが、人間はそれを受け入れるのか?」
「どうだろうな」
俺は少し首を捻る。とりあえず賢者の石の結界は魔族にしか効かないため、ダークドワーフに効くことはない。問題は人間や王国にわずかに住むドワーフたちが彼らをどう思うかだが、正直予想はつかなかった。というのもダークドワーフの数が少なすぎて、そもそも認知されていないからだ。
「分からない。そもそもダークドワーフの存在自体、そこまで認知されていないからな。だが、それは逆に言えば第一印象でどうにでもなるということでもある。例えば魔族が攻めてきた時に共闘して力を発揮するとかな」
「なるほど。予想だが、ダークドワーフたちの意見は割れるだろう。魔族や人間に膝を屈するぐらいなら今まで生きてきた集落に立てこもって最後まで戦うという者はいるだろうし、逆にそこまでするぐらいなら魔族に膝を屈するとか人間領に逃げるという者もいるだろう。何にせよ、議論の時間が限られている以上きちんとまとめるのは難しいだろうな」
オルギムは少し暗い表情で言った。
「分かった。それなら一度戻って相談してみるか? 一応俺としては魔族に降伏することだけはやめて欲しいから、それ以外の選択をとるなら出来る限りサポートしよう」
「ありがとう。出来る限りおぬしの気持ちに答えられるようにしようと思う」
そう言ってオルギムは家を出た。来たばかりなのに慌ただしいが、時間が限られている以上仕方がない。
「いいのか? 場合によっては彼らが皆魔族に降ることになるが」
マキナが不安そうに言う。
「とはいえ、彼らが抵抗や移住を選んだとしても人間が全面協力する、と断言出来ない以上こちらから無理強いは出来ない。とはいえ一応王国にもこのことは伝えておくか。せめて移住の可否だけでも確認しておきたい」
彼らの移住を国として受け入れる意思があれば、少しはいい結論になりやすくなるかもしれない。そう思いつつ俺は手紙を書くのだった。
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