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アイシャと王都
クルトとの再会
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今後どうするかを決めかねて王宮で日々を過ごしていたある日のことである。
一人の兵士が俺の部屋にやってくる。
「アルス様、もし不快に思われたら仕方がないのですが、クルトに会われますか?」
「クルト? そうだ、そう言えばあいつは今どうしていたんだったか?」
そう言えばアイシャに王都の話を聞いた時も、クルトの名前は出てこなかった。事態は解決したからどうでもいいと言えばいいのだが、そう言われると気になる。
「はい、彼は賢者の石の暴走を抑えられなかったためエレナに使えないと判断され、賢者の石に魔力を吸われるための犠牲として閉じ込められておりました」
エレナと一緒に俺を裏切ったはいいが、そのエレナにも早々に切り捨てられたらしい。
エレナからすれば賢者の石が暴走したのは話が違うことだろうし、クルトからすれば利用するだけされて捨てられたというところだろう。
「近いうちに今回の騒動の原因を作ったということで処刑される訳ですが、一応アルス様も言いたいことがあるかもしれないと思いまして。何もなければそのまま処刑されると思います」
「今回はほぼエレナが主犯だったから忘れていたぐらいだし、どうでもいいが……。最後に一言ぐらい声をかけておくか。会わせてくれ」
「分かりました」
そう言って兵士は俺を王宮の地下にある牢に案内する。
地下牢では今回の騒ぎで味方したエレナ派の主だった者のうち逃げ遅れた者たちが何人も拘束されていたが、そのうちの一室に魔法封じの鎖で拘束されたクルトがうつろな目で閉じ込められていた。
が、俺と兵士の姿を見ると彼の目に突然生気が戻る。
「師匠、師匠じゃないですか!」
いきなり師匠と呼びかけられ俺は鳥肌が立つ。
「もう俺は師匠じゃないと言ったのはお前だろ、クルト」
「ち、違うんです! これは全部エレナに騙されていたことなんです! あいつが全部悪いんです!」
クルトは熱烈に訴えてくる。それを聞いて俺は失望した。彼の人格にがっかりしたというのもあるが、こんな奴に足元を掬われた自分の間抜けさにも失望する。
「一応聞いてやるが、俺を嵌める話はどっちから持ち掛けたんだ?」
「もちろんエレナからです! エレナは師匠を嫌っていたので、錬金術の相談などがあれば全て僕を誘っていたのです! そこで僕はエレナの演技に騙されて親しくなったと思ってしまい、ある日例の計画を持ちかけられたのです!」
「俺の知らぬ間に王女と仲良くなっていたのか」
「違うんです! それもこれも全てエレナに騙されていたんです!」
そう言ってクルトは目から涙を流す。
「では俺を嵌める件はどちらから言い出したんだ?」
「もちろんエレナです! 僕は師匠が禁忌魔術の研究を行っているという嘘を吹き込まれて騙されただけです!」
「じゃああの偽の証拠は誰が俺の工房に隠したんだ?」
「……」
俺の言葉にそれまで流暢にしゃべっていたクルトは急に沈黙する。
しかし俺は工房にはほぼ常駐していたし、そうでない時も誰かしらかの弟子はいたはずだ。エレナやエレナの命令を受けた兵士が入ってこればすぐに分かる。
「あんなものを俺の工房に隠せるのはお前ぐらいしかいないんだ」
「……」
即座に論破され、クルトは沈黙する。
「まあいい、別にお前がどう弁解しようと他人を陥れ、石を暴走させて国を滅亡寸前に追いやった罪が許される訳ではない。せいぜいあの世でエレナと罪のなすりつけ合いでもするがいい」
「そ、そんな! 待ってください! 僕と師匠の仲じゃないですか!」
「うるさい! この期に及んでまだ助かろうとするのか!? 見苦しいぞ!」
「くそ、エレナめ……僕を担いだうえで途中で監禁し、あまつさえ最終的に僕を捨てるなんて許せん……」
最後までクルトはエレナの悪口を言っていた。こいつとこれ以上話しても何も言うことはない。そう思った俺は黙って引き返したのだった。
一人の兵士が俺の部屋にやってくる。
「アルス様、もし不快に思われたら仕方がないのですが、クルトに会われますか?」
「クルト? そうだ、そう言えばあいつは今どうしていたんだったか?」
そう言えばアイシャに王都の話を聞いた時も、クルトの名前は出てこなかった。事態は解決したからどうでもいいと言えばいいのだが、そう言われると気になる。
「はい、彼は賢者の石の暴走を抑えられなかったためエレナに使えないと判断され、賢者の石に魔力を吸われるための犠牲として閉じ込められておりました」
エレナと一緒に俺を裏切ったはいいが、そのエレナにも早々に切り捨てられたらしい。
エレナからすれば賢者の石が暴走したのは話が違うことだろうし、クルトからすれば利用するだけされて捨てられたというところだろう。
「近いうちに今回の騒動の原因を作ったということで処刑される訳ですが、一応アルス様も言いたいことがあるかもしれないと思いまして。何もなければそのまま処刑されると思います」
「今回はほぼエレナが主犯だったから忘れていたぐらいだし、どうでもいいが……。最後に一言ぐらい声をかけておくか。会わせてくれ」
「分かりました」
そう言って兵士は俺を王宮の地下にある牢に案内する。
地下牢では今回の騒ぎで味方したエレナ派の主だった者のうち逃げ遅れた者たちが何人も拘束されていたが、そのうちの一室に魔法封じの鎖で拘束されたクルトがうつろな目で閉じ込められていた。
が、俺と兵士の姿を見ると彼の目に突然生気が戻る。
「師匠、師匠じゃないですか!」
いきなり師匠と呼びかけられ俺は鳥肌が立つ。
「もう俺は師匠じゃないと言ったのはお前だろ、クルト」
「ち、違うんです! これは全部エレナに騙されていたことなんです! あいつが全部悪いんです!」
クルトは熱烈に訴えてくる。それを聞いて俺は失望した。彼の人格にがっかりしたというのもあるが、こんな奴に足元を掬われた自分の間抜けさにも失望する。
「一応聞いてやるが、俺を嵌める話はどっちから持ち掛けたんだ?」
「もちろんエレナからです! エレナは師匠を嫌っていたので、錬金術の相談などがあれば全て僕を誘っていたのです! そこで僕はエレナの演技に騙されて親しくなったと思ってしまい、ある日例の計画を持ちかけられたのです!」
「俺の知らぬ間に王女と仲良くなっていたのか」
「違うんです! それもこれも全てエレナに騙されていたんです!」
そう言ってクルトは目から涙を流す。
「では俺を嵌める件はどちらから言い出したんだ?」
「もちろんエレナです! 僕は師匠が禁忌魔術の研究を行っているという嘘を吹き込まれて騙されただけです!」
「じゃああの偽の証拠は誰が俺の工房に隠したんだ?」
「……」
俺の言葉にそれまで流暢にしゃべっていたクルトは急に沈黙する。
しかし俺は工房にはほぼ常駐していたし、そうでない時も誰かしらかの弟子はいたはずだ。エレナやエレナの命令を受けた兵士が入ってこればすぐに分かる。
「あんなものを俺の工房に隠せるのはお前ぐらいしかいないんだ」
「……」
即座に論破され、クルトは沈黙する。
「まあいい、別にお前がどう弁解しようと他人を陥れ、石を暴走させて国を滅亡寸前に追いやった罪が許される訳ではない。せいぜいあの世でエレナと罪のなすりつけ合いでもするがいい」
「そ、そんな! 待ってください! 僕と師匠の仲じゃないですか!」
「うるさい! この期に及んでまだ助かろうとするのか!? 見苦しいぞ!」
「くそ、エレナめ……僕を担いだうえで途中で監禁し、あまつさえ最終的に僕を捨てるなんて許せん……」
最後までクルトはエレナの悪口を言っていた。こいつとこれ以上話しても何も言うことはない。そう思った俺は黙って引き返したのだった。
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