本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃

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神巫

加護授与

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 それからあっという間に三か月ほどが経過しました。ハリス殿下は新陛下を補佐してネクスタ王国の再建に力を尽くしてくださりました。

 再建とはいえ、ネクスタ王国が疲弊していた理由は天災とバルクの重税と労役、そして帝国の侵略の三つなのでそれらの原因はすでに取り除かれたと言えます。
 とはいえ一度負った傷が癒えるには時間がかかります。死んだ人は帰って来ませんしだめになった作物は戻って来ません。エルドラン王国も元々魔物の被害を受けていた上にこのたびの戦いでは軍勢を動かすのにかなりのお金を使ったため支援するほどの余力はありません。
 そのため、主にハリス殿下が行ったのはエルドラン王国兵士を人手として貸し出すことでした。農業や建物の修繕や再建を手伝ったのです。地味ではありますが、そのおかげでゆっくりと王国は再建に向かっていきました。

 そんな時、帝国からの和平の申し入れがありました。詳しいことは殿下や陛下が相談して決めたことなので私は知りませんが、どうやら今回王国に反旗を翻し帝国に味方した貴族たちが帝国に帰属することを認める代わりに帝国から王国へと支援金を支払う、というものでした。

 元々はバルクの暴政に対して反旗を翻した西方の貴族たちでしたが、帝国に味方して王国軍と戦ってしまった以上赦免する訳にもいかないという状況になっていたため、お金と引き換えに帝国に帰属するというのはいい落としどころだったのかもしれません。

 帝国からの資金もえたことで、王国は少しずつ復興していくのでした。



 その間、私は神様に祈りを捧げる傍ら、竜国の人々にも神様に祈りを捧げるようお願いしました。現状ネクスタ王国の人々の祈りはエメラルダを通じて私から神様に届きますが、そこに竜国の人々が加わればさらに大きな力になるためです。

 竜だけを崇拝してきた竜国の人々からは一部反発もありましたが、最終的に神様の力が戻ることが竜のためにもなる、と殿下やアリサが説得を手伝ってくれたため少しずつ力が浸透していったのです。
 ちなみに竜たちは私が説明しなくとも、神様の力が戻っていることから状況を察してくれたようです。大昔(寿命が長い種族である竜にとってはそこまででもありませんが)は竜たちが巫女を通して神様に信仰を捧げており、さらにその昔は竜たちは直接神様を信仰していたようでした。



 そんなある日のことです。
 私がいつものように祈りを捧げていると、神様の力が日に日に強まっていくのを感じます。特に竜国の人々も神様への信仰を持ち始めた時からそれは顕著になりました。

 “そろそろ今年も我が加護が国民に与えられるだろう。今の我が力なら新たな聖女や巫女も現れることだろう”
 “それは良かったです”

 それを聞いて私はほっとしました。正直今のところ聖女と竜の巫女の仕事の両方をこなすため私はかなり無理していたので、このままの状況が続けば長くは持たないと感じていたからです。

 “それから竜国の人々が我への信仰を持ち始めていたことから、今年は加護の授与範囲は竜国の者にも広がるだろう”
 “なるほど”

 言われてみれば、昔から加護を授与される人に明確な縛りはありませんでした。竜国や帝国出身でも加護を受け取った人がいたり、加護を受け取ったネクスタ王国の人がその加護を持って他国に出て活躍したりということはしばしばありました。アリエラも元々は竜国出身でようでしたし。

 とはいえ全ての歴史を知った今、加護が与えられる対象が曖昧なことも納得がいきます。神様の力が弱まっていたから対象が狭まっていただけだったのでしょう。

 “ありがとうございます”

 それから私はそのことを急いで神殿に伝えました。竜国の人々は今のままだと加護を授与されても気づかないでしょう。そのため、我が国から神官たちを派遣してこの国と同じようにどんな加護が授与されたかの判定を行う必要があります。

 そのため、神殿は大忙しになりました。ただでさえ帝国との戦いで人員が減っていたのに、竜国にまで人手を派遣しなければならないのですから。加護の授与が行われる前後一か月ほどは、私を含めて神官たちは寝る間も惜しんで働きました。

 そして、ネクスタ王国からは『聖女』が、竜国からは『巫女』がそれぞれ発見されたのです。
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