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竜の巫女
竜の巫女選定の儀 Ⅱ
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こうして早くも巫女候補は私とアリサの二人きりになってしまいましたが、儀は粛々と続いていきます。
「では次は第二の試練を行う。御使様、お願いします」
“次は魔法の試練だ。周囲に雪を降らせてみよ”
「そ、そんな……」
御使様の言葉を聞いて私は絶望します。
王宮にこもりきりだった私は今までそんな魔法は使ったことありません。アリサはどうなのか、とちらりと隣を見ると彼女も難しい表情で何かを悩んでいます。雪を降らすのが難しいのか、そもそも試練の内容が分からないのかは分かりません。
とはいえ、今は自分に出来ることをやるしかありません。私は懸命に魔力をこめて雪が降ることを念じます。
普通、魔法はきちんとした魔力の使い方のようなものがあり、その手順を踏まなければうまく発動しないのですが、幸い私の魔力は常人に比べて遥かに多いらしいです。となれば多少手順に問題があっても力技で発動するかもしれません。
一方、隣ではアリサが何らかの氷魔法のようなものを使い、周辺の水分が凍り付いています。見ようによっては雪に見えなくもありません。
私もどうにか雪を降らせなければ……そう思った時でした。
突然、目に見えない何かと魔力でつながったような妙な感覚を覚えました。今までで似ている感覚があるとすれば、神殿で聖女の適性を試した時に鉢植えに魔力をこめた時の感覚でしょうか。
そして突然私の脳裏に正しい魔法の手順が浮かび上がってきます。まるで前世の記憶がフラッシュバックしてくるかのように、その記憶が脳裏に浮かんでくるのです。
何が起こったのかはよく分かりませんが、その通りに魔法を使おうとすると、気が付くと周囲にははらはらと雪が降ってくるのが見えます。
それを見て周囲の人々は目を見張りました。先ほどリタイアした候補者たちは、この試練に残っていても無理だと思ったのか、諦めの表情になっています。
「御使様、判定は」
殿下の言葉に御使様は私たちを見て二回頷きます。
それを見て殿下は結果を告げました。
「とりあえず二人とも合格だ」
「ふぅ」
そう言ってアリサは息を吐きますが、彼女はちらちらとこちらを見ながら表情を強張らせています。
私の周りにはきれいな雪が降っていますが、アリサの周りは雪というよりは霜が降りているという様子に近く、私との差は歴然でした。
「あなた、本当に魔法初心者?」
アリサは引きつった声で話しかけてきます。
「はい、そうですが」
「雪を降らせるなんてまぐれが起こっても初心者に使える魔法ではないわ。もしかして私を油断させるために嘘を……」
そう言われても今起こったのはまぐれのようなことなので、どう答えていいのか分かりません。
私が答えに困っていると、ハリス殿下が口を開きます。
「静粛に。次の試練へ進む」
「す、すみません」
殿下の言葉にアリサは慌てて沈黙します。
“第三の試練だ。花を咲かせてみよ”
御使様は私たちに一つずつ、種のようなものを手渡します。方法は指示されませんでしたが、聖女の時のように適性があれば自然と咲くのでしょう。
そう考えた私は種を握りしめて祈ります。
するとしばらくして種が割れて芽が生え、茎がのび、桜色の淡い花が咲きます。これは聖女に選ばれる時に神殿で何度もやってみせたものと全く同じ感覚でした。
私の手元できれいな花が咲くと、それを見た周囲の人々から歓声が上がります。
一方のアリサは懸命に力をこめたり何かに祈ったりしていますが、結果はわずかに芽が出ただけでした。
殿下の言葉を待たずとも、それを見てアリサはその場に膝をつきます。
そして悔しそうに呟きました。
「はあ、負けてしまったわ」
「と言う訳で巫女候補に残ったのはシンシアだ。と言ってもこれで巫女に決まる訳ではない。これより最終試練を行い、それを達成すれば無事巫女として認定される。もし達成できなければ巫女は空席となる」
「最終試練?」
ということはこれまでは最終試練に挑戦出来る者を選抜するためのものだったということでしょうか。
緊張する私にハリス殿下は優しく声をかけてくれます。
「大丈夫だ。最終試練と言っても、御使様とともに竜の祠へ向かい、守護竜様と言葉を交わすというだけだ。御使様が選んだ人物が守護竜様の言葉を聞けないなんてことはこれまでほぼなかった」
「そ、そういうものなのですか」
それを聞いて私は少しほっとしますが、「そういうものか」という気分にしかなりません。
「竜の巫女が空席になるなどあってはならないことよ。ここまでの試練を潜り抜けた以上、何としてでも巫女になってもらわないと困るわ」
不安そうな顔をしている私に、アリサはそう言います。
「あまり不安にさせるな、と言いたいところだがアリサの言葉はその通りだ。とはいえ、守護竜様の洞窟までは僕も一緒についていくから安心してくれ」
「それでも構わないのですか?」
「ああ。試練はあくまで守護竜様と言葉をかわすこと。だから洞窟の前まで一緒に向かうことは問題はない」
「それなら良かったです」
それを聞いて私は少しほっとします。うまくは説明できませんが、殿下がついてきてくださると聞いて、私は安心しました。
御使様とも言葉をかわすことが出来た以上、それなら大丈夫でしょう。
「では次は第二の試練を行う。御使様、お願いします」
“次は魔法の試練だ。周囲に雪を降らせてみよ”
「そ、そんな……」
御使様の言葉を聞いて私は絶望します。
王宮にこもりきりだった私は今までそんな魔法は使ったことありません。アリサはどうなのか、とちらりと隣を見ると彼女も難しい表情で何かを悩んでいます。雪を降らすのが難しいのか、そもそも試練の内容が分からないのかは分かりません。
とはいえ、今は自分に出来ることをやるしかありません。私は懸命に魔力をこめて雪が降ることを念じます。
普通、魔法はきちんとした魔力の使い方のようなものがあり、その手順を踏まなければうまく発動しないのですが、幸い私の魔力は常人に比べて遥かに多いらしいです。となれば多少手順に問題があっても力技で発動するかもしれません。
一方、隣ではアリサが何らかの氷魔法のようなものを使い、周辺の水分が凍り付いています。見ようによっては雪に見えなくもありません。
私もどうにか雪を降らせなければ……そう思った時でした。
突然、目に見えない何かと魔力でつながったような妙な感覚を覚えました。今までで似ている感覚があるとすれば、神殿で聖女の適性を試した時に鉢植えに魔力をこめた時の感覚でしょうか。
そして突然私の脳裏に正しい魔法の手順が浮かび上がってきます。まるで前世の記憶がフラッシュバックしてくるかのように、その記憶が脳裏に浮かんでくるのです。
何が起こったのかはよく分かりませんが、その通りに魔法を使おうとすると、気が付くと周囲にははらはらと雪が降ってくるのが見えます。
それを見て周囲の人々は目を見張りました。先ほどリタイアした候補者たちは、この試練に残っていても無理だと思ったのか、諦めの表情になっています。
「御使様、判定は」
殿下の言葉に御使様は私たちを見て二回頷きます。
それを見て殿下は結果を告げました。
「とりあえず二人とも合格だ」
「ふぅ」
そう言ってアリサは息を吐きますが、彼女はちらちらとこちらを見ながら表情を強張らせています。
私の周りにはきれいな雪が降っていますが、アリサの周りは雪というよりは霜が降りているという様子に近く、私との差は歴然でした。
「あなた、本当に魔法初心者?」
アリサは引きつった声で話しかけてきます。
「はい、そうですが」
「雪を降らせるなんてまぐれが起こっても初心者に使える魔法ではないわ。もしかして私を油断させるために嘘を……」
そう言われても今起こったのはまぐれのようなことなので、どう答えていいのか分かりません。
私が答えに困っていると、ハリス殿下が口を開きます。
「静粛に。次の試練へ進む」
「す、すみません」
殿下の言葉にアリサは慌てて沈黙します。
“第三の試練だ。花を咲かせてみよ”
御使様は私たちに一つずつ、種のようなものを手渡します。方法は指示されませんでしたが、聖女の時のように適性があれば自然と咲くのでしょう。
そう考えた私は種を握りしめて祈ります。
するとしばらくして種が割れて芽が生え、茎がのび、桜色の淡い花が咲きます。これは聖女に選ばれる時に神殿で何度もやってみせたものと全く同じ感覚でした。
私の手元できれいな花が咲くと、それを見た周囲の人々から歓声が上がります。
一方のアリサは懸命に力をこめたり何かに祈ったりしていますが、結果はわずかに芽が出ただけでした。
殿下の言葉を待たずとも、それを見てアリサはその場に膝をつきます。
そして悔しそうに呟きました。
「はあ、負けてしまったわ」
「と言う訳で巫女候補に残ったのはシンシアだ。と言ってもこれで巫女に決まる訳ではない。これより最終試練を行い、それを達成すれば無事巫女として認定される。もし達成できなければ巫女は空席となる」
「最終試練?」
ということはこれまでは最終試練に挑戦出来る者を選抜するためのものだったということでしょうか。
緊張する私にハリス殿下は優しく声をかけてくれます。
「大丈夫だ。最終試練と言っても、御使様とともに竜の祠へ向かい、守護竜様と言葉を交わすというだけだ。御使様が選んだ人物が守護竜様の言葉を聞けないなんてことはこれまでほぼなかった」
「そ、そういうものなのですか」
それを聞いて私は少しほっとしますが、「そういうものか」という気分にしかなりません。
「竜の巫女が空席になるなどあってはならないことよ。ここまでの試練を潜り抜けた以上、何としてでも巫女になってもらわないと困るわ」
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「あまり不安にさせるな、と言いたいところだがアリサの言葉はその通りだ。とはいえ、守護竜様の洞窟までは僕も一緒についていくから安心してくれ」
「それでも構わないのですか?」
「ああ。試練はあくまで守護竜様と言葉をかわすこと。だから洞窟の前まで一緒に向かうことは問題はない」
「それなら良かったです」
それを聞いて私は少しほっとします。うまくは説明できませんが、殿下がついてきてくださると聞いて、私は安心しました。
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