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追放と新天地
聖女と神巫
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「シンシア・ハーレーン、お前は本物の聖女じゃない。俺は本物の聖女を見つけたからお前はもう追放させてもらう!」
「え!?」
いきなり宣言されたバルク殿下の言葉に私シンシア・ハーレーンは思わず耳を疑いました。
元々私と殿下は折り合いが悪く、最近はお互いあえて言葉をかわすことも少なかったのですが、今日は突然殿下の執務室に呼び出されたのです。わざわざ殿下の側から呼ばれるのは珍しいことだったので胸騒ぎがしたのですが、まさかここまでの急展開とは思ってもみませんでした。
ちなみにバルク殿下はここネクスタ王国の第一王子で現在十五歳、次期国王になると目されている人物です。しかし何事にも我を通したがる癖があり、また国民や周囲の者たちのことを考えない発言も多く、残念ながらあまり期待されているとは言えません。
とはいえ最近は国王のベルモス陛下が老齢に差し掛かったため、何かと前に出る機会も増えています。
国政に携わる機会も増え、分別も身に着けていったと思っていたのですが、そうではないようでした。
「確かに私の加護は『聖女』ではありません。しかし聖女としての仕事はこれまで十分以上に果たしてきたはずです!」
私は即座に抗議しました。
殿下が言っているのがどういうことかを説明するには、我が国特有の事情、『加護』について説明しなければなりません。
ここネクスタ王国は通称神国とも呼ばれ、国民は皆十歳になると神殿で神様に『加護』と呼ばれるものを授かります。『加護』には『鍛冶屋』『農民』『戦士』など様々なものがありますが、大体は何らかの職業を指しています。そして加護を授けられた人はその加護に一致する能力を授かるのです。例えば『鍛冶屋』の加護を授かった者は他の人よりも鍛冶の能力が高いという訳です。
そしてネクスタ王国の民に対する神の加護に報いるため、これまで国に一人だけ存在するという『聖女』の加護を持つ者が神様に感謝の祈りを捧げてきました。
私が授かっているのは『神巫』という加護で聖女ではないのですが、聖女以上の魔力と適性を持っています。そのため、出身村の神殿の司祭の勧めで私は都にのぼり、そこで神殿に認められて聖女の役割を務めているのです。
それについては大司教のグレゴリオ様が国王陛下に奏上してすでに決まったことであり、別に私が勝手に聖女をしている訳ではありません。そして私が聖女を務めていた期間、ネクスタ王国は神様の加護を受け平和が続いてきました。
そういう経緯があったため殿下の言葉は何を今更という思いです。
が、それでも殿下はなぜか自信満々に続けます。
「そうかもしれない。だがこの国はずっと『聖女』の加護を持つ者が治めるという伝統が続いていた。それを乱したから最近デュアノス帝国の動きが不穏なのだろう」
「それは聖女の務めとは関係ありません!」
神の加護は作物の実りや災害に影響するのであって、隣国の情勢は祈りでどうにかなるものではありません。それをわざわざ言い立てるということはよほどの無知か、よほど私を無能ということにしたいかのどちらかでしょう。
殿下は私の言葉を聞き入れる様子は全くありませんでした。
「だが『神巫』などという加護は聞いたことがない。やはりそんな怪しい加護を持つ者に聖女の役割を任せたのがよくなかったのだ」
「それはもう大司教様や国王陛下が話し合って決めたことです。大体、それなら誰を公認にすると言うのですか?」
「決まっている、正しい『聖女』に決まっているだろう?」
そう言って殿下はにやり、と嫌な笑みを浮かべました。
「え!?」
いきなり宣言されたバルク殿下の言葉に私シンシア・ハーレーンは思わず耳を疑いました。
元々私と殿下は折り合いが悪く、最近はお互いあえて言葉をかわすことも少なかったのですが、今日は突然殿下の執務室に呼び出されたのです。わざわざ殿下の側から呼ばれるのは珍しいことだったので胸騒ぎがしたのですが、まさかここまでの急展開とは思ってもみませんでした。
ちなみにバルク殿下はここネクスタ王国の第一王子で現在十五歳、次期国王になると目されている人物です。しかし何事にも我を通したがる癖があり、また国民や周囲の者たちのことを考えない発言も多く、残念ながらあまり期待されているとは言えません。
とはいえ最近は国王のベルモス陛下が老齢に差し掛かったため、何かと前に出る機会も増えています。
国政に携わる機会も増え、分別も身に着けていったと思っていたのですが、そうではないようでした。
「確かに私の加護は『聖女』ではありません。しかし聖女としての仕事はこれまで十分以上に果たしてきたはずです!」
私は即座に抗議しました。
殿下が言っているのがどういうことかを説明するには、我が国特有の事情、『加護』について説明しなければなりません。
ここネクスタ王国は通称神国とも呼ばれ、国民は皆十歳になると神殿で神様に『加護』と呼ばれるものを授かります。『加護』には『鍛冶屋』『農民』『戦士』など様々なものがありますが、大体は何らかの職業を指しています。そして加護を授けられた人はその加護に一致する能力を授かるのです。例えば『鍛冶屋』の加護を授かった者は他の人よりも鍛冶の能力が高いという訳です。
そしてネクスタ王国の民に対する神の加護に報いるため、これまで国に一人だけ存在するという『聖女』の加護を持つ者が神様に感謝の祈りを捧げてきました。
私が授かっているのは『神巫』という加護で聖女ではないのですが、聖女以上の魔力と適性を持っています。そのため、出身村の神殿の司祭の勧めで私は都にのぼり、そこで神殿に認められて聖女の役割を務めているのです。
それについては大司教のグレゴリオ様が国王陛下に奏上してすでに決まったことであり、別に私が勝手に聖女をしている訳ではありません。そして私が聖女を務めていた期間、ネクスタ王国は神様の加護を受け平和が続いてきました。
そういう経緯があったため殿下の言葉は何を今更という思いです。
が、それでも殿下はなぜか自信満々に続けます。
「そうかもしれない。だがこの国はずっと『聖女』の加護を持つ者が治めるという伝統が続いていた。それを乱したから最近デュアノス帝国の動きが不穏なのだろう」
「それは聖女の務めとは関係ありません!」
神の加護は作物の実りや災害に影響するのであって、隣国の情勢は祈りでどうにかなるものではありません。それをわざわざ言い立てるということはよほどの無知か、よほど私を無能ということにしたいかのどちらかでしょう。
殿下は私の言葉を聞き入れる様子は全くありませんでした。
「だが『神巫』などという加護は聞いたことがない。やはりそんな怪しい加護を持つ者に聖女の役割を任せたのがよくなかったのだ」
「それはもう大司教様や国王陛下が話し合って決めたことです。大体、それなら誰を公認にすると言うのですか?」
「決まっている、正しい『聖女』に決まっているだろう?」
そう言って殿下はにやり、と嫌な笑みを浮かべました。
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