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冷たい歓迎

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 さて、こうして私たちはオールディズ王国へ向かったのだが、当然ながら私たちに対する反応は良いものではなかった。特に迎えが出る訳でもなく、街や村に滞在すれば、人々は私たちを白い目で見てくる。他に恐怖の目で見てくる者や、私たちの姿を見るなり家に逃げ込む者までいた。

 それもそのはず、人々にとってマイルズは自国を戦争で破った敵国の人物であり、どうせこの国をスタンレット王国の属国にするためにやってくると思われているのだろう。
 もちろん、私も何も知らなければ同じように思っていただろうが。

 一方のマイルズはそんな反応ははなから予想済みだったのだろう、特に気にすることもなくいつも通りの“冷血王子”のままだった。彼にとって自分が他人から恐れられることなど日常茶飯事なのだろう。

 が、私はその空気を密かに気にしていた。王子や一人の政治家としてなら恐れられるのも悪くないことだが、国王になるというのであればそれは良くないことではないか。

 そんな訳で私が胸をざわつかせながら王都に戻ってきても、依然として周囲は微妙なムードだった。出迎えに現れたのは申し訳なさそうな顔をした大臣と数人の役人、残りはメイドや執事ばかりだった。

 その反応に、かえって私の方がマイルズに申し訳なくなってしまう。

「すみません、我が国を助けに来ていただいたというのに」
「言っただろう? 僕は自分に関係ないものに興味はないんだ」

 が、彼の答えは相変わらず素っ気なかった。
 私たちが馬車を下りると大臣たちが申し訳なさそうに頭を下げる。

「申し訳ございません、何分戦いで負けたばかりで歓迎の準備もろくに出来ず」
「陛下や貴族の方々はいないのですか?」
「陛下は体調不良、貴族の方々も敗軍の整理などに忙しいと……」

 大臣は目をそらしながら言う。
 その態度を見て私は確信した。父上はマイルズや私と会うのが気まずくて逃げ、貴族たちもマイルズに会うのを恐れたのだろう。そして真面目な性格の大臣に応対を押し付けたのだ。
 気持ちは分からなくもないが、国を担う者としてそれでいいのだろうか。

「そんな! 国政はパーティーじゃないのですから……」
「気にすることはない」

 私が抗議しようとすると、マイルズはそう遮る。
 彼はそう言ったものの、私としてはそのままにすることは出来なかった。このままではマイルズの扱いはずっと冷たいままで、王宮内でも腫物に触るような扱いが続くだろう。
 そう思った私は意を決して言う。

「大臣殿、この戦いがどのような形で終わったのか、そして今後王国はどうなっていくのかを話すために人を集めていただけませんか?」
「ですが、貴族の方々は……」

 私の言葉にマイルズは少し驚いたようだ。大臣も少し困惑する。
 しかし私は構わずに続ける。

「そうではありません。私が集めて欲しいのは王都の人々です」
「人々ですか?」
「はい」

 国民の支持さえあれば、王族や貴族はスタンレット王国の軍事力を背景にして、マイルズの力で従わせることが出来る。が、それは私に出来ることではない。
 逆に、国民に訴えかけるには隣国出身のマイルズは不適だ。
 私が真剣な目で大臣を見つめると、やがて彼は私の意図を察したようにうなずく。

「分かりました、そういうことでしたら手配させていただきます」
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