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対決
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「聞いてテッド、そこにいるのは私の妹のレーナなの! シェリーは私!」
「え、でも……」
そう言ってテッドは交互に私たちを見比べる。
おそらく容姿を見ても服装や髪型以外に明確な違いはないだろう。
思えばレーナは今までも私に隠れてテッドに会っていたのだろう、最近テッドと話していると少しずつ会話がかみ合わないことがあった。
例えば、私が話したはずのないことを知っていたり。
私がテッドに久しぶりに会ったと思った時もテッドはそこまで久しぶりではなさそうにしていたり。
それらは一つ一つは些細な違いだから気のせいとか、勘違いで済ませてしまってきていたが、この状況になると全てが一つに繋がっていく。
そしてレーナが言っていた、恋愛をするのに忙しいというのもこういうことだったのか。
そう言えば彼女は執拗に私に入れ替わりを求めてきたが、レーナがテッドと会っている間、私が彼女の代わりに手習いやお稽古をしていればテッドと会うことは出来ない。入れ替わりは単に面倒なことを押し付けることではなく、ばれにくくすることが目的だったのかもしれない。
「どういうことだ!? もしかしてずっと僕を騙していたのか!?」
テッドは上ずった口調でレーナに向かって叫ぶ。
彼からすれば自分の婚約者に変装して自分に会い続けていたなど許されることではないだろう。もっとも、それは私目線でも同じことだけど。
さてこの状況でレーナはどうするのだろう、と思いながら私はレーナを注視する。
彼女はしばしの間じっと虚空を見つめていた。レーナもまさか私にばれた上、ここまで押しかけてくるとは思わなかったのだろう、しばしの間泡を喰ったように動揺していたが、やがて決心したように口を開く。
「違うわテッド、彼女が私の妹のレーナよ! 私が本物のシェリー!」
何とあろうことか、レーナは自分が本物であるという主張を始めたのだ。
さすがに私は唖然としてしまう。
テッドの方も思わぬ反論に口をパクパクさせていた。
だが、確かにそう開き直られてしまうと咄嗟に自分が本物であることを証明する手段はない。
が、私たちが話せないでいるのをいいことに、レーナは言葉を続ける。
「私がシェリー! 思い出して、さっきまで私と話していて楽しかったでしょう? これまでも何回か偽者が来たことがあったと思う! テッドも話していて違和感を覚えたことがあったと思う!」
「え、もしかしてこれまでも!?」
それを聞いてテッドはさらに頭を抱える。
確かにこれまで自分が婚約者と会っていたつもりが、そのうちの何回かは偽者だったと明かされたのだ。
「お願いテッド、私を信じて!」
私も動揺しつつもとりあえず叫ぶ。
困ったテッドは私を案内してきた執事を見たが、執事は申し訳なさそうに目を伏せるだけだ。
「でも確かにこれまで話していて違和感を覚えることはあった。でも一体どっちがどっちなんだ?」
「思い出して、どっちと話している時が楽しかったのか」
レーナが叫ぶ。
それを聞いてテッドははっとしたような顔になる。
「確かに今日はいつもより会話が弾んだ気がする。それに、これまで話していて楽しかった時はいつも今日と同じシェリーの時だったような気がする……」
「そんな……」
それを聞いて私は愕然とする。
まさかテッドは私と話していた時よりもレーナと話していた時の方が楽しいと思っていたなんて。
そんな私にレーナは勝ち誇ったような表情を向ける。
「ふう、いきなりレーナが乗り込んでくるから驚いたけど、私たちは本当の愛があるからどちらが本物か見分けられるの」
「嘘だ!」
私は叫ぶが本物の愛、というレーナの言葉が胸に刺さる。
それがレーナとテッドの間にあるとは思えないが、私とテッドの間にあったと言えるだろうか?
だが明らかにレーナは偽者だ。どうにかそれを示さないと。
そこでふと私は思い至る。
私とテッドが会っている日はちゃんと両家の間で前もって決められていた日だ。その日に会っている方が本物に決まっているはず。
おそらくレーナは適当に日を決めて会っているはず。そのことを示せばテッドも真相に気づくだろう。
「え、でも……」
そう言ってテッドは交互に私たちを見比べる。
おそらく容姿を見ても服装や髪型以外に明確な違いはないだろう。
思えばレーナは今までも私に隠れてテッドに会っていたのだろう、最近テッドと話していると少しずつ会話がかみ合わないことがあった。
例えば、私が話したはずのないことを知っていたり。
私がテッドに久しぶりに会ったと思った時もテッドはそこまで久しぶりではなさそうにしていたり。
それらは一つ一つは些細な違いだから気のせいとか、勘違いで済ませてしまってきていたが、この状況になると全てが一つに繋がっていく。
そしてレーナが言っていた、恋愛をするのに忙しいというのもこういうことだったのか。
そう言えば彼女は執拗に私に入れ替わりを求めてきたが、レーナがテッドと会っている間、私が彼女の代わりに手習いやお稽古をしていればテッドと会うことは出来ない。入れ替わりは単に面倒なことを押し付けることではなく、ばれにくくすることが目的だったのかもしれない。
「どういうことだ!? もしかしてずっと僕を騙していたのか!?」
テッドは上ずった口調でレーナに向かって叫ぶ。
彼からすれば自分の婚約者に変装して自分に会い続けていたなど許されることではないだろう。もっとも、それは私目線でも同じことだけど。
さてこの状況でレーナはどうするのだろう、と思いながら私はレーナを注視する。
彼女はしばしの間じっと虚空を見つめていた。レーナもまさか私にばれた上、ここまで押しかけてくるとは思わなかったのだろう、しばしの間泡を喰ったように動揺していたが、やがて決心したように口を開く。
「違うわテッド、彼女が私の妹のレーナよ! 私が本物のシェリー!」
何とあろうことか、レーナは自分が本物であるという主張を始めたのだ。
さすがに私は唖然としてしまう。
テッドの方も思わぬ反論に口をパクパクさせていた。
だが、確かにそう開き直られてしまうと咄嗟に自分が本物であることを証明する手段はない。
が、私たちが話せないでいるのをいいことに、レーナは言葉を続ける。
「私がシェリー! 思い出して、さっきまで私と話していて楽しかったでしょう? これまでも何回か偽者が来たことがあったと思う! テッドも話していて違和感を覚えたことがあったと思う!」
「え、もしかしてこれまでも!?」
それを聞いてテッドはさらに頭を抱える。
確かにこれまで自分が婚約者と会っていたつもりが、そのうちの何回かは偽者だったと明かされたのだ。
「お願いテッド、私を信じて!」
私も動揺しつつもとりあえず叫ぶ。
困ったテッドは私を案内してきた執事を見たが、執事は申し訳なさそうに目を伏せるだけだ。
「でも確かにこれまで話していて違和感を覚えることはあった。でも一体どっちがどっちなんだ?」
「思い出して、どっちと話している時が楽しかったのか」
レーナが叫ぶ。
それを聞いてテッドははっとしたような顔になる。
「確かに今日はいつもより会話が弾んだ気がする。それに、これまで話していて楽しかった時はいつも今日と同じシェリーの時だったような気がする……」
「そんな……」
それを聞いて私は愕然とする。
まさかテッドは私と話していた時よりもレーナと話していた時の方が楽しいと思っていたなんて。
そんな私にレーナは勝ち誇ったような表情を向ける。
「ふう、いきなりレーナが乗り込んでくるから驚いたけど、私たちは本当の愛があるからどちらが本物か見分けられるの」
「嘘だ!」
私は叫ぶが本物の愛、というレーナの言葉が胸に刺さる。
それがレーナとテッドの間にあるとは思えないが、私とテッドの間にあったと言えるだろうか?
だが明らかにレーナは偽者だ。どうにかそれを示さないと。
そこでふと私は思い至る。
私とテッドが会っている日はちゃんと両家の間で前もって決められていた日だ。その日に会っている方が本物に決まっているはず。
おそらくレーナは適当に日を決めて会っているはず。そのことを示せばテッドも真相に気づくだろう。
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