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ベンの終わりⅡ

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「よ、良くも騙したな!?」
「騙したな、ではない、お前のせいで国は大騒ぎだ」
「な、何を。どうせ全て事実無根のでたらめだ!」

 僕はデニスに向かって言い返す。

「ならば本当に事実無根かどうか調べさせてもらおう」

 そう言ってデニスの後ろから王家の紋章をつけた兵士たちがぞろぞろと馬車から降りてくる。

「こ、こいつらは……」
「王家で本当に盗みがあったのかどうか、王都で起ったゆすりたかりの犯人が本当にこの家と関係ないのか、それは僕よりも衛兵の方が詳しいだろうからな」

 デニスが言うと、兵士たちは何枚かの人相書きを取り出す。そこには確かに我が家の家臣や使用人の顔が描かれている。

「だ、だが、彼らがやったという証拠はあるのか!? それは一方的な決めつけだ!」
「その裁判をするために出頭せよという話だったのに、そっちが無視したからこうなっているのだ!」

 デニスの言葉に僕は愕然とする。
 まるでうちの使用人がやったかのような言い方だったが、必ずしもそういう訳ではなかった。その呼び出しに素直に応じていれば冤罪は晴れていたかもしれない……まあ本当にやってなければ、だが。
 それなのに僕が早とちりで無視してしまったためこんな大変なことになってしまった。

「と言う訳で今から調査を開始するが、これ以上印象を悪くしたくなければ余計な邪魔はしないことだ」

 デニスはそう言うが、そんなことをされて大丈夫な訳がない。
 そもそもこのままではアンナを閉じ込めているということやクラリスを連れ込んでいることなど関係ないことまで露見してしまう。
 アンナのことはどうにか誤魔化しているが、父上やスペンサー公爵が今の扱いを知ってしまったら大変なことになる。
 王都で家臣がゆすりたかりをしたとか、王宮で些細なものを盗んだとかの比ではなくなってしまう。

「そ、そんな……せめて少し準備をさせてくれ!」
「そんなことが出来るか! どうせ証拠の隠蔽や口裏合わせを行うつもりだろう!」
「ぶ、無礼ではないか!? アスカム公爵家に対してそのようなこと!」

 そうだ、こんな強制的な調査など言語道断。絶対に問題になるに決まっている。
 が、デニスの返答は素っ気ないものだった。

「そうだな。これだけ大掛かりなことをしてこの家に何もやましいことがなければ、僕や王宮の兵士たちは全員首が飛ぶかもしれない。……ということは何もやましいことがなければ君としては調査を受け入れれば僕らを失脚させることが出来るということでもある。受け入れない理由はないはずだ。やましいことがなければ」

 デニスは僕が絶対に何か隠していると思っているのだろう、やけに強気だ。
 しかしそう言われてしまえば拒否することも出来ない。すでに家の者たちも騒ぎを聞きつけて集まってきてしまっているし、ここで追い返せば(そんなことが出来るのかも不明だが)、やましいことがあると認めるようなものだ。

「わ、分かった、勝手にするがいい」

 そう言って僕は屋敷の奥に戻ろうとする。調査をすると言っても順番にやっていくなら、その間にアンナやクラリスの件だけでも隠せるかもしれない。

「待て」 

 が、そんな僕を無情にもデニスが呼び止める。

「衛兵たちが屋敷を調べるのに立ち会わなくていいのか?」
「た、確かに……」

 確かに屋敷が調査を受けるというのに屋敷の主が立ち会わないというのは不自然すぎる。だが、恐らくデニスとしては僕の動きを封じるために言ったことなのだろう。僕は歯ぎしりして悔しがりながら頷くのだった。
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