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ベンの陰謀
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それから私は屋敷内の一室に書類とともに連れていかれました。
恐らく空いた使用人の一室なのでしょう、古びた机とベッドがあります。
「と言う訳でそれが全部終わるまでこの部屋から出てはならない。食事だけはメイドに運ばせてやろう」
そう言ってベンはドアを閉めて出ていきます。
それからすぐに見張りなのかはよく分かりませんが、一人のメイドがやってきてドアの前に立ちます。
仕方なく私は大量の書類をめくります。
それらはアスカム家の領地から上がってきている書類で、例えばこの村ではどれだけの税収があり、役人の給料や道路の修繕でこれだけの出費があり、収支はこれだけ、というようなことが書かれています。
基本的な書類の見方は実家で教わったものと同じなのですが、中には私が聞いたことがない支出もあります。
例えばこの「接待費用」とは何なのでしょうか。領内の小さな村で一体誰を接待しているのでしょう。これが適切な支出なのか不適切な支出なのかは私にはよく分かりません。
せめて去年の支出があれば、それと同じなら恐らく大丈夫、という判断も出来るのですがそんなものは用意されていません。
「あの、すいません」
私は部屋の前で申し訳なさそうに立っているメイドに声をかけます。
「な、何でしょう」
「もっと他の資料が必要なので書庫か資料室のようなところに行きたいのですが」
「ではベン様にそううかがってきます」
そう言って彼女は部屋の外に出て、しばらくして戻ってきます。
「それが、仕事が終わるまでは部屋から一歩も出るなと」
「あの、資料がなければ出来ないこともあるのですが」
「それは……」
私の言葉を聞いてメイドはそっと目を伏せます。
恐らく彼女もそれは分かってはいるのですが、だからといってベンの命令を覆すことも出来ないということでしょう。
「……分かりました」
仕方なく、私は不明なところには付箋をつけ、先に進みます。
それから数時間ほど作業に没頭すると、大分多くの書類の確認が終わりました。もっとも、終わったとはいえよく分からないところを全部保留にしているので終わったはずの書類は付箋で分厚くなってしまっていますが。
そこへガチャリとドアが開いてベンが顔を出します。
自分に文句をいう者がいないせいか、彼は大層機嫌が良さそうです。そして私の前にまだ書類が積み上がっているのをニヤニヤと見つめながら問いかけます。
「調子はどうだ?」
「とりあえずこれだけ終わりました。あの……」
「ん、何だこの大量の付箋は」
「せめて去年の帳簿か何かをいただけなければ正しいのか判別出来ません」
私が言うと、ベンは面倒くさそうに頷きます。
「分かった分かった、そういうことなら後で持ってこさせよう。ゆっくりでいいからな」
最初は今日中にこれを終わらせろとか言っていたような気がしますが、私が部屋の中で大人しく閉じ込められているためか、それならそれでいいと思ったのでしょう。
きっと私が頼んだ帳簿も時間を置いてから持ってくるか、もしくは忘れた振りをするつもりではないでしょうか。
そんなベンの意図が分かってはいてもどうすることも出来ません。屋敷の中で問題が起こっていなければいいのですが、と思いつつ私は書類に戻るのでした。
恐らく空いた使用人の一室なのでしょう、古びた机とベッドがあります。
「と言う訳でそれが全部終わるまでこの部屋から出てはならない。食事だけはメイドに運ばせてやろう」
そう言ってベンはドアを閉めて出ていきます。
それからすぐに見張りなのかはよく分かりませんが、一人のメイドがやってきてドアの前に立ちます。
仕方なく私は大量の書類をめくります。
それらはアスカム家の領地から上がってきている書類で、例えばこの村ではどれだけの税収があり、役人の給料や道路の修繕でこれだけの出費があり、収支はこれだけ、というようなことが書かれています。
基本的な書類の見方は実家で教わったものと同じなのですが、中には私が聞いたことがない支出もあります。
例えばこの「接待費用」とは何なのでしょうか。領内の小さな村で一体誰を接待しているのでしょう。これが適切な支出なのか不適切な支出なのかは私にはよく分かりません。
せめて去年の支出があれば、それと同じなら恐らく大丈夫、という判断も出来るのですがそんなものは用意されていません。
「あの、すいません」
私は部屋の前で申し訳なさそうに立っているメイドに声をかけます。
「な、何でしょう」
「もっと他の資料が必要なので書庫か資料室のようなところに行きたいのですが」
「ではベン様にそううかがってきます」
そう言って彼女は部屋の外に出て、しばらくして戻ってきます。
「それが、仕事が終わるまでは部屋から一歩も出るなと」
「あの、資料がなければ出来ないこともあるのですが」
「それは……」
私の言葉を聞いてメイドはそっと目を伏せます。
恐らく彼女もそれは分かってはいるのですが、だからといってベンの命令を覆すことも出来ないということでしょう。
「……分かりました」
仕方なく、私は不明なところには付箋をつけ、先に進みます。
それから数時間ほど作業に没頭すると、大分多くの書類の確認が終わりました。もっとも、終わったとはいえよく分からないところを全部保留にしているので終わったはずの書類は付箋で分厚くなってしまっていますが。
そこへガチャリとドアが開いてベンが顔を出します。
自分に文句をいう者がいないせいか、彼は大層機嫌が良さそうです。そして私の前にまだ書類が積み上がっているのをニヤニヤと見つめながら問いかけます。
「調子はどうだ?」
「とりあえずこれだけ終わりました。あの……」
「ん、何だこの大量の付箋は」
「せめて去年の帳簿か何かをいただけなければ正しいのか判別出来ません」
私が言うと、ベンは面倒くさそうに頷きます。
「分かった分かった、そういうことなら後で持ってこさせよう。ゆっくりでいいからな」
最初は今日中にこれを終わらせろとか言っていたような気がしますが、私が部屋の中で大人しく閉じ込められているためか、それならそれでいいと思ったのでしょう。
きっと私が頼んだ帳簿も時間を置いてから持ってくるか、もしくは忘れた振りをするつもりではないでしょうか。
そんなベンの意図が分かってはいてもどうすることも出来ません。屋敷の中で問題が起こっていなければいいのですが、と思いつつ私は書類に戻るのでした。
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