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婚約破棄Ⅲ
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「さて、主役も揃ったことだし始めようか」
オリバーの言葉に私の体に震えが走る。もしかすると何か良くない雰囲気を無意識に感じ取ったのかもしれない。
そしてオリバーはぐるりと参列者を見渡してなぜか得意げに言う。
「皆様方、実は今日はただのパーティーではないのだ。俺、オリバー・クロームは一つの重大な宣言を行おうと思う」
彼の言葉に参列者たちも何だ何だ、とざわめき立つ。どうやら誰もオリバーの企みの詳細は知らないらしい。それはうちの父上と義母上も同じだったが、唯一マリーだけが気味の悪い笑みを浮かべていた。
オリバーは一つ溜めを作ると、高らかに宣言する。
「本日をもってオリバー・クロームはエレナ・エトワールとの婚約を破棄する!」
「何だと!?」「聞いてないぞ!?」
突然のオリバーの宣言に会場はざわめく。中には「あんなに仲睦まじげに」などと言う者もいた。
「何だ突然に! 聞いていないが!」
そんなオリバーに対してさすがに我が父上も抗議した。
が、オリバーは余裕の表情で答える。
「もちろん突然こんなことを言い出すからには理由があります。では皆様に理由をお話しましょう。実はエレナは俺に隠れて違う男との密会を繰り返していたのだ。もちろんこれには証人もいる!」
彼が言うと、隣の部屋から三人の町人がつれてこられる。
もしやルインとの密会を見られたのか。それを聞いて私は蒼白になる。これまでのただの嫌がらせとは違い、証拠を突き付けられての婚約破棄はしゃれにならない。
いっそマリーがオリバーと浮気していたという証拠を出した方がいいだろうか?
しかしこの場に味方が誰もいなければ力ずくで奪い取られて捨てられる可能性もある。
「証言を頼む」
「はい、確かにあの女の人が別の男の人と歩いているのを見ました」
「私も見ました。二人で仲睦まじげに語らっていました」
「二人で明らかに怪しい安宿に入っていくのを見ました」
証人が次々と証言していく。
それを聞いて参列者たちは次々と私に罵詈雑言を投げつけてくるが、ふと私は違和感に気づく。男と密会していると聞いて私はルインとの現場を見られたのかと思ったが、三人目の証言は大嘘だ。ということはこの証言は捏造なのだろうか?
そう考えた私は急に冷静になっていく。
一方のオリバーは得意げに言葉を続ける。
「とにかく、そういう訳で俺はエレナとの婚約を破棄する。しかし今後ともエトワール家との友好関係は続けたい。そこで代わりにマリーとの婚約を提案したい。いかがだろうか?」
「おいマリー、お前もしや知っていたのか!?」
父上が驚愕しながらマリーに問う。
「はい。お姉様が浮気したにも関わらず、寛大なオリバー様は我が家との関係を続けようとおっしゃってくださっているのです。いい話だと思いませんか?」
「知っていたならなぜ事前にそう言ってくれなかったんだ! こんな大事になって、わしは大恥じゃないか!」
「えぇ?」
父上の予期せぬ反応にマリーもたじろいでいる。てっきり虐められている姉からなら婚約者を奪い取っても怒られないものと思っていたらしいが、婚約者を奪い取るのは私を虐めるで済む話ではない。
一方、オリバーの父であるクローム公爵も血相を変えてオリバーに詰め寄っている。
「おい、こんなことを聞いてないぞ!」
「しかし父上、真実は今話した通りです。それに何もまずい話はないでしょう」
「だが、しかし……」
オリバーとマリーはうまくいっていると思い込んでいるようだが、さすがに両家の当主からするとこんな急な話をいきなりされてはいそうですかとなるはずがない。
雲行きが怪しくなったと感じたからか、オリバーは不意に大声をあげる。
「とにかく、俺は婚約破棄を宣言したんだ! そしてマリーも俺との婚約を受けてくれるよな!?」
「は、はい、もちろんです」
何か雲行きがおかしいと思いつつも頷くマリー。
が、そこへ不意に会場の中央に一人の人影が現れた。
「そうか、婚約が破棄されたということはエレン、いやエレナはこれでフリーということだな?」
私はその人物の姿を見て驚く。
「え、ルインさん!?」
「やあエレナ、迎えに来たよ」
これまでお忍びの恰好しか見たことがなかったので同じ会場にいても気づかなかったが、彼は紛れもなくルインであった。
オリバーの言葉に私の体に震えが走る。もしかすると何か良くない雰囲気を無意識に感じ取ったのかもしれない。
そしてオリバーはぐるりと参列者を見渡してなぜか得意げに言う。
「皆様方、実は今日はただのパーティーではないのだ。俺、オリバー・クロームは一つの重大な宣言を行おうと思う」
彼の言葉に参列者たちも何だ何だ、とざわめき立つ。どうやら誰もオリバーの企みの詳細は知らないらしい。それはうちの父上と義母上も同じだったが、唯一マリーだけが気味の悪い笑みを浮かべていた。
オリバーは一つ溜めを作ると、高らかに宣言する。
「本日をもってオリバー・クロームはエレナ・エトワールとの婚約を破棄する!」
「何だと!?」「聞いてないぞ!?」
突然のオリバーの宣言に会場はざわめく。中には「あんなに仲睦まじげに」などと言う者もいた。
「何だ突然に! 聞いていないが!」
そんなオリバーに対してさすがに我が父上も抗議した。
が、オリバーは余裕の表情で答える。
「もちろん突然こんなことを言い出すからには理由があります。では皆様に理由をお話しましょう。実はエレナは俺に隠れて違う男との密会を繰り返していたのだ。もちろんこれには証人もいる!」
彼が言うと、隣の部屋から三人の町人がつれてこられる。
もしやルインとの密会を見られたのか。それを聞いて私は蒼白になる。これまでのただの嫌がらせとは違い、証拠を突き付けられての婚約破棄はしゃれにならない。
いっそマリーがオリバーと浮気していたという証拠を出した方がいいだろうか?
しかしこの場に味方が誰もいなければ力ずくで奪い取られて捨てられる可能性もある。
「証言を頼む」
「はい、確かにあの女の人が別の男の人と歩いているのを見ました」
「私も見ました。二人で仲睦まじげに語らっていました」
「二人で明らかに怪しい安宿に入っていくのを見ました」
証人が次々と証言していく。
それを聞いて参列者たちは次々と私に罵詈雑言を投げつけてくるが、ふと私は違和感に気づく。男と密会していると聞いて私はルインとの現場を見られたのかと思ったが、三人目の証言は大嘘だ。ということはこの証言は捏造なのだろうか?
そう考えた私は急に冷静になっていく。
一方のオリバーは得意げに言葉を続ける。
「とにかく、そういう訳で俺はエレナとの婚約を破棄する。しかし今後ともエトワール家との友好関係は続けたい。そこで代わりにマリーとの婚約を提案したい。いかがだろうか?」
「おいマリー、お前もしや知っていたのか!?」
父上が驚愕しながらマリーに問う。
「はい。お姉様が浮気したにも関わらず、寛大なオリバー様は我が家との関係を続けようとおっしゃってくださっているのです。いい話だと思いませんか?」
「知っていたならなぜ事前にそう言ってくれなかったんだ! こんな大事になって、わしは大恥じゃないか!」
「えぇ?」
父上の予期せぬ反応にマリーもたじろいでいる。てっきり虐められている姉からなら婚約者を奪い取っても怒られないものと思っていたらしいが、婚約者を奪い取るのは私を虐めるで済む話ではない。
一方、オリバーの父であるクローム公爵も血相を変えてオリバーに詰め寄っている。
「おい、こんなことを聞いてないぞ!」
「しかし父上、真実は今話した通りです。それに何もまずい話はないでしょう」
「だが、しかし……」
オリバーとマリーはうまくいっていると思い込んでいるようだが、さすがに両家の当主からするとこんな急な話をいきなりされてはいそうですかとなるはずがない。
雲行きが怪しくなったと感じたからか、オリバーは不意に大声をあげる。
「とにかく、俺は婚約破棄を宣言したんだ! そしてマリーも俺との婚約を受けてくれるよな!?」
「は、はい、もちろんです」
何か雲行きがおかしいと思いつつも頷くマリー。
が、そこへ不意に会場の中央に一人の人影が現れた。
「そうか、婚約が破棄されたということはエレン、いやエレナはこれでフリーということだな?」
私はその人物の姿を見て驚く。
「え、ルインさん!?」
「やあエレナ、迎えに来たよ」
これまでお忍びの恰好しか見たことがなかったので同じ会場にいても気づかなかったが、彼は紛れもなくルインであった。
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